表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第十話 ゴクラク学園での日常



転落死から突然異世界に転生してしまったというあの衝撃の日から一週間以上が過ぎました。

今日も快晴という良き天気の中、お茶を片手にのんびりと過ごしております。

うむ、今日もソプラの入れてくれたお茶が美味い。


なんて現実逃避はやめよう。


あの実地試験からの帰り、どう考えても山道には不向きだろうと言わんばかりのキラキラ連中のキンキラ馬車のせいで何度足止めをくらいそうになったことか。どうして街中のきちんと整備された道路に適している乗り物で来るんだよ、来るときもこれに乗ってきたとか寧ろすごいわ。

もしかして外見は派手だけど中は全くの別空間なのかと思ってテノールにこっそり見てきてもらったが衝撃吸収用(ただし、見た目重視)のクッションが大量にあるだけの普通の馬車とのことであった。

うん、期待外れもいいところだわ。いや、この場合は期待した俺が悪かったんだな。

しかも教師連中は馬か荷馬車に乗り、生徒の方は上級貴族は荷馬車、下級貴族と平民は徒歩なんだとか。おかしくない?普通は全員が乗れるように手配するよな?

これが貴族階級というやつなのだろうか…え、シュガルとレイフォン?

勿論俺の背中に乗せましたがなにか?

ソプラとテノールもいたから魔獣とも遭遇せずに済んだし、水分補給もしっかり取れてた。尚、水分補給の入れ物は水筒似の魔道具、始めはティーカップを使おうとしていたので慌てて止めたよ。そんなわけで移動中にもなにかしらやらかして騒いでたアホ連中はほっといて、二人の案内+従魔の広範囲詮索スキルにてさっさと学園とやらに帰ってきたらなんと正門前にて学園長が直々に出迎えてくれた。


え、なんで?

またいきなり攻撃してくるのかと身構えたけどそこは流石の学園長、大人な対応をしてくれましたとも。


邪魔者はいないし丁度いいので拘束していたクソ教師を説明付きで引き渡し、ついでにダメもとで学園長にシュガルとレイフォンの教育係を任せてほしいとお願いしたところなんと快く承諾してもらえたのだが、その代わりに来月に行われる闘技大会に参加することが条件といわれそれくらいなら別にいいかとこちらも承諾した。


そんなわけで現在、俺がいるのはキャラベル王国の名門校ゴクラク学園。そこの敷地内にある一画を借りて拠点である《ウッドハウス》を作らせてもらいそこで生活している。

始めは街の方で宿でもと思ったのだが今の体だと普通の宿には泊まれないので断念。

どうしようかと思っていたら学園長が使用してない場所があるからそこを使ってもいいとのお許しがでたのでありがたく使わせてもらうことにしたというわけだ。


住居となる《ウッドハウス》は見た目は木製で出来ているログハウスのような感じだが、内装が異空間使用になっているのでかなり広い。例えるなら《ツリーハウス》が一軒家、《ウッドハウス》が施設といった感じで構造は二階が自室・憩い場があり、一階に食堂・図書館・浴場・トレーニングルーム、地下に倉庫といった感じになっている。

なのでシュガルとレイフォンには現在の寮からこちらに移動するよう伝え育成には抜かりなし。それぞれにいくつか課題を出して、それをこなすよう指示してある。

トレーニングルームの機材の使い方もしっかり教えてあるので、自己報告がきたらきちんと出来ているかを確認して、問題なければ次の課題を出す。今はこれの繰り返し。

あとは実戦経験が少なすぎるからそこは定期的に狩りもかねて森へと赴き、対人については学園側の訓練施設である闘技場にて《ニャモン》と《粉雪のレイピア》を使用禁止にし支給品の武器でテノールを相手にさせて経験を積ませている。俺が与えた武器の使用禁止は簡単に相手を殺してしまう可能性があるのでそれを阻止するためと、うざい輩の妨害による対策のためだ。

こういう展開だと王族や貴族側が勝たせないために妨害をしてくるのがお約束だからな。迷惑この上ないが逆に考えれば、いざという時に武器が使えない状態でも素手で戦えるようにしておけばこの先十分役に立つ、備えあれば憂いなしってやつかな。

おかげであんなに痩せすぎていたのがたったの一週間弱でだいぶマシになったのはさすが獣人というべきか、毎日体を鍛えて十分な睡眠をとり、栄養満点のご飯に三時のおやつも食べてるもんな。校舎の方でも二人の変化が話題となり、女子生徒たちにも人気が出てきているらしくなにかと声をかけてくる生徒も増えたらしい。

中には放課後の茶会の誘いも出てきてるらしいがうまい具合に断っているとか。そりゃあ、今まで散々馬鹿にしてきた連中からの急な撫で声に手のひら返しだもんな、気持ち悪くも感じるだろう。気を付けなければならないのは上級貴族相手からのお誘いなんだが、これに関してはまず俺の許可を得るよう相手に伝えるよう言ってある。二人では断れる立場じゃないから従うしかないが、ここに俺が加われば話が変わる。俺は学園長の許可を得て、二人の育成を担当しているので勝手なことをされると困るのだと、だからまずは俺の許可を得ろということだ。

そのかいあってか今のところ誰からも来ていないので当分は大丈夫だろう。

あ、もちろんあんまり鍛えすぎるのもよくないからきちんとお休みの日も取ってケアもしっかりとしてますよ。適度な息抜きは必要だからな。


俺はその間にシュガル達の持っていた教科書を見せてもらって、魔法について勉強しているのだがごちゃごちゃと難しそうな文章にされてるが、簡単に言ってしまえば大気中に存在する魔法の源になる魔素を体内に取り込み、それを魔法陣に通して技を発動させる。そんなところか。

属性については個人の遺伝子からなるので、魔素を取り込むと体内にて勝手に適性へと変換されるみたいだ。自分が何の属性になるかは調べてからのお楽しみってことか。

それを調べるための魔道具もあるらしいし、どんなものなのか一回くらいは見ておきたいところだな。


気になったのは、教科書にスキルについて何も書かれていないこと。この世界ではスキルについて学ばないのか?

先日、廊下で近くを通りかかったらしいエレガント教師にスキルについて聞いてみたのだが…。



「スキル…ですか。なんですか、それは?」


「…確か、この世界には冒険者がいたな?その中で職業に【テイマー】がいたはずだが」


「貴方は先程からおかしなことばかり聞きますね。魔獣などという討伐対象である凶暴な生物を誰が好き好んで命懸けで手懐けようとするのですか。それに魔獣を仲間にしたところで何かとお金も掛かりますから【テイマー】なんて誰もやりたがりませんよ」



そう言ってさっさと歩いていってしまった。

だが、これではっきりした。


乙女ゲームの主人公は光属性の持ち主に加え【テイマー】の素質を持った子で、どんな魔獣や幻獣とも仲良くなってしまう。

共に戦い日常を過ごすことで絆を結んだ従魔から個々の持つ固有スキルを一つだけ宝珠として受け取ることが出来て、それを別の従魔に覚えさせることが可能となる。

そうして従魔達を自分好みに強化していくわけだが…。


この世界の人たちは魔法をメインにしているため、ほとんどが自身が持つ固有スキルを知らないのだ。

冒険者あたりはおそらく無意識に使っているだろうが、それをスキルとは認識せず補助魔法によるものだと思い込んでいるか、協会にてこれはまさしく神による特別な加護とでも言われているのかもしれない。ゲームの世界とはやっぱり少し違うんだな。

そう考えるとあの時、平凡女の手から湧き出てきた黒い泥。

あれはおそらく俺と同じように転生者ボーナスとして手に入れたであろう洗脳による強制従属。今の俺の体は従魔、つまり魔獣だから本能的に嫌悪感が半端なかったのか、もしくは【状態異常無効】の効果による危機管理能力か。

本来なら光属性にふさわしい優しく慈愛に満ちた光の手だったのだろうが、あの女、魔獣は使い捨ての道具にして乙女要素に突っ走っているからそうなったのかもしれない。

そうなると本気で対策を練らないとやばいかもしれん。従魔達に装備させているモノやスキルによる対策が効くのかどうか、もし俺の大切な従魔達が洗脳でもされたら…恐ろしすぎて考えたくもない。


まぁ、ゲームではレベル差がありすぎると流石に従属すら不可能だが。

いくら強制とはいっても自身よりも弱い魔法をかけられても解除できるなら意味をなさない。

あの様子じゃレベル上げもしてるかどうかもわからんし、あんまり深く考えすぎずにその辺りは気を付けつつでいいか。


そういえば、あの実地試験での出来事で負傷者の怪我を直したのはあの平凡女で、その場ですぐに対応指示したのは王太子だと言い回っているらしい。

実際に負傷した生徒や真実を知っている生徒たちは流石に王族相手に下手なことは言えないので黙っているが、キラキラ連中を嫌悪感たっぷりに見ているか白い目で見ている。

さらにそれを見た常識人と頭のいい連中は同じように白い目で見るか距離を取るようになり、何もわかっていない同族連中はおべっかとわっしょいとで持ち上げているらしい。

それに気分を良くしたキラキラ連中は調子に乗って来月の闘技大会でも優勝は自分たちで間違いなしと勝手にハードルをあげているそうだ。

…ってお前らも出るんかい。一応、王太子と側近だから初めから席は用意されてたんだろうな。噂では特に訓練もせず、王宮や街中で遊び惚けているようだが…もはや救いようのない大馬鹿だわ。


後日、改めてお礼に言いに来た生徒達は皆、礼儀正しくいい子だったので手ぶらで返すのもと思いプリンをお土産に渡したんだが、それが大好評で噂になり生徒たちが押し掛けてきて騒ぎになってしまった。

このキャラベル王国はお菓子が発達しているのだから、プリンくらい普通に売ってるだろうに。

流石に毎日押しかけられても困るので、対処として学園の食堂にレシピを提供してそっちで作れと丸投げした。あとは頑張ってくれたまえよ。

プリンでこれだと、他のお菓子も気軽に渡せないかもな。もしくはどこかの店にレシピを売るか、逆に店を立ち上げて商売にしてみてもいいかもしれんな。


前世の時とは違い、今は時間ならたっぷりあることだし、焦らずゆっくりやっていくか。





********************





レイフォンとシュガルが学園で授業を受けている間はやることがないので、散歩がてら校内を見て回ることにしたのだが…。



「シナモン!貴様はどうしてディップに陰湿なイジメを繰り返すのだ!」


「僕達が何度注意してもやめないとは、貴方の本質を本気で疑いますね」


「お前はやってないとしらを切るつもりだろうが、陰で取り巻きにやらせていることはわかっているんだぞ!あの心優しいディップを泣かせるなど…お前には心がないのか?!」



なぜか、人気のない場所で馬鹿王子とその側近たちが死んだ目の令嬢を取り囲んで虐めているところに遭遇してしまった。

傍から見れば、どう見てもか弱そうな令嬢を男が三人掛かりで囲ってるお前らの方がイジメになってるのがわからんのかね?わからんか、馬鹿だもんな。

それにしても、あの死んだ目の令嬢…所見の時もそうだったがなんか違和感があるんだよな。



「何度も申しますが、私はイジメなどしていませんしなによりそのようなことに費やす時間はございませんわ」


「嘘をつくな!」


「ディップが泣きながら私たちのもとに来たんだぞ。彼女の涙がなによりの証拠だ!!」


「嘘ではありませんし、そのようなものはまず証拠にはなりませんわ。それが通用するのであれば世の中の女性が泣けば全てが証拠になってしまいますもの。それに、私は一昨日から生徒会室にてずっと仕事をしておりましたので彼女とは一度も会っておりません。王家の影に確認していただければそれがなによりの証拠になりますわ」


「黙れ、この悪女が!」


「なるほど、シナモン。そうやってあくまでも自分の罪を認めないつもりならばこちらにも考えがある!」



なんか険悪なムードになってきたな。流石に令嬢に暴力を振るって流血沙汰とかしゃれにならんし止めた方がいいかもしれんな。

ただ、姿を見られたら絶対に面倒になる予感しかしないので馬鹿王子たちの背後に【植物作成】にて《棘仙人》を一つ咲かせる。これは人間の小指ほどの大きさしかない小さなサボテンなのだが、わずかな刺激を与えるだけでその周囲、半径15メートル以内にいる対象に眠り付与の棘針を完全必中させる。今回は一つだが、集団の中にでも群生地帯を作ってやれば一つの刺激で連鎖的に発動し周囲にいるモノ全てに当たるまで止まらなくなるで注意が必要。

何気にこの世界の植物って物騒なものが多いよな。

なので、令嬢には当たらないよう範囲外に設定して咲かせ、それに加え普通の薬草を下から当てるように作成すれば…わずかに葉が当たった刺激でサボテンが周囲の対象に棘針を見事に命中。

馬鹿王子たちは眠り効果によりその場に倒れてスヤスヤとおやすみタイム。ちなみに体内に入った棘針は溶けて消えるので、いくら調べても証拠は出てこないという。恐ろしや。

令嬢も何が起きたのかと目を白黒させている間に《棘仙人》を解除し、見つからないようにこっそりとその場から離れることにする。

馬鹿王子たちは令嬢が教師にでも伝えて回収するだろう。流血沙汰にならなくてよかったよかった。




良い事をしたと満足げに歩いていたその後ろを、令嬢が見ていたなどと気が付かぬままにその場を後にしたのだった。






********************






「御主人様。アプタルト公爵家のご令嬢よりお茶会の招待状が届いております」



清々しい朝に恵まれ、三人で朝食を摂っているときにテノールがそう言って招待状の封筒を渡してきた。

なんで貴族からお茶会なんかの招待状がくんの?そもそもアプタルト家なんて知らないんだが?



「ぶふっ!?」


「ゲホッ、げほッ…あ、アプタルト公爵家の、っごほ、招待状…!?」



招待状が送られてくる理由がわからずに困っていたら、シュガルとレイフォンが盛大に吹き出して噎せた。ソプラがすぐさま汚れた場所を綺麗にしてくれたが、何をそんなに慌ててるんだ?



「そんなに有名なのか?」


「有名もなにもっ、アプタルト公爵家は四大公爵家の中で最も王家に近い権力を持っている貴族ですよ!?」


「しかもアプタルト公爵家のご令嬢といったら、第一王子の婚約者であるシナモン・アプタルト様だよ!?」



第一王子…婚約者…シナモン?



……………あの死んだ目をした令嬢か!




え、なんで?

わざわざ地雷がありそうな場所なんかに行きたくないんだけど?






仕事が多忙につき投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ