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【第83話:ちょっとした問題】

 レミオロッコ工房に着くと、なんだかうちの従業員以外にも人がいっぱいです。


 ゴメスさんにお礼を言って

 何事かと思って暫く見守っていると、今度は足元から声が聞こえてきました。


「キュッテ~、レミオロッコさんが呼んでる、よ?」


 影があるだけで何も見えませんが、恐らくヨセミテがいるのでしょう。

 そして、レミオロッコが「さん」付けで私が呼び捨てなのは、やっぱりトルテの影響ね……。


 一度、トルテとヨセミテにはしっかりお話する必要があるけど、わざわざヨセミテが迎えにくるなんてどうしたのかしら?


 何故かずっと消えているヨセミテの後を追いかけると、食堂に着きました。


「あ! キュッテ、ようやく帰って来てくれたのね!」


 食堂にはレミオロッコの他にも何人かの人がいますが、私の知っている人が誰もいません。


「えっと、それはいいんだけど、……何だか知らない人がいっぱいいるけど、どうなっているの?」


 ちょっと見た目がいかつい感じのおじさんたちが沢山います。


「領主様の指示で、大工系のスキルを持っている人とか、鍛冶系のスキルを持っている人が派遣されてきたのよ」


 アレン様かギルド長かが派遣してくれた職人さんかと思ったら、領主様から直々に派遣されてきた人たちのようです。


「へぇ~、さすがアレン様のお父様。行動が早いわね。でも、ちょっと悪い知らせよ。魔物の群れがこの街に進路を取ったらしくて、早ければ明日の午前中には街に達するかもしれないって……」


「えぇぇ!? 作業が遅れて困ってるのに!?」


 え? お手伝いにこれだけ沢山の人が集まっているのに、作業が遅れているの?


「どういうこと? レミオロッコが能力発揮しているのに、作業が遅れたのなんて初めてじゃない?」


「それが、ちょっと問題があって……」


 レミオロッコが言いにくそうにしていると、食堂にいる知らない人の中から、一人が近づいてきて、突然話に割って入ってきました。


「おい! いつまで待たせるつもりだ! 俺の改良案はどうなったんだ? もう勝手にこっちで進めるぞ!」


 なんですか。この偉そうな禿げ頭のおじ様は?


 でも……読めてきたわ。

 職人には頭の固い人がうじゃうじゃいるってことのようね。


 まぁ私の偏見な訳だけれど、この世界で一般的にそうじゃなかったとしても、今、この話しかけてきている人は間違いなく頭の固い人だと思うわ。


「まず名前ぐらい名乗ったらどうかしら? 一応、この作戦を任せられているのは私なのだけれど?」


 見るからに頭の固そうな偏屈おじさんって感じです。

 私がそう言っても、なんだか訝し気な視線をこちらに向けて、不機嫌そうに凄んできました。


「あん? お前みたいなチビがそんな権限……けんげん……」


「あん? どうかしたのかしら? 禿げ頭のおじ様? あぁん?」


 時間ないから、今は手段を選んでいる暇はないのよね~。


「キュッテは偉い、よ?」


「「がぅ!」」


 テーブルの上に突然現れたヨセミテから首にフォークを突きつけられ、コーギーモード(フィナンシェ)からは至近距離から殺気をぶつけられて、完全に硬直してしまいました。


「他の皆さんにも一言。もしレミオロッコに対して反抗的な態度をとるなら、帰って頂きます。建設的な意見なら歓迎しますが、もしただの文句なら痛い目にあって頂きます」


「そそ、そんな脅し……」


 フィナンシェに殺気をぶつけられていながら、反抗的な言葉を話せるなんて意外と度胸あるのね。


「そうだ! お頭は元冒険者でもあるんだぞ!」


 お頭? という事はこの禿げ頭のおじ様が悪の元凶という訳ね。


 それに外野が調子づいているので、ちょっと黙らせておきましょうか。

 今は時間との戦いなのよ。


「あら? 脅しだと思ってるのね。フィナンシェ、牢にぶち込んであげなさい」


 私がそう言った瞬間、文句を言っていた禿げ頭のおじ様の姿が掻き消え、外野は一瞬で黙り込みました。


 副ギルド長の一件があってから、秘密基地のホーム設定している部屋の隣に、本格的な牢屋を作っておいたのよね。

 フィナンシェには牢屋に放り込む練習もさせたので、上手い事やってくれるでしょう。


 なにせうちの牧羊犬は優秀ですから!


 おっと、そろそろ大丈夫ね。

 数秒待ってから召喚してフィナンシェを呼び戻しておきます。


「で? 何か言ったかしら?」


 禿げ頭のおじ様が目の前から消え去った事で、外野もすっかり大人しくなりました。


「……ん? 何その布切れ?」


 さっき禿げ頭のおじ様が着ていた服に似ている気がしますが、きっと気のせいでしょう。

 うん。そういう事にしておきましょう。


「もう一度言うわ! もしレミオロッコに対して反抗的な態度をとるなら、帰って頂きます。建設的な意見なら良いけど、もしただの文句なら痛い目にあって頂きます!」


 私が今度はちょっと大きな声で伝えると、その場にいた人たちは、慌ててぶんぶんと何度も頷いてくれました。


「あら~? 返事が聞こえないわね?」


「「「「わ、わかりやした!」」」」


 うん。良い返事です。


「それでレミオロッコ、問題って何かしら?」


「……はぁ~、キュッテわかってて聞いてるでしょ?」


「え~? なんのことかしら~?」


「もう解決したわよ! でも……ありがと。助かったわ」


 おぉ~。久しぶりのレミオロッコのデレだわ!


「もうっ! なにニヤニヤしているのよ! キュッテにもいっぱい手伝って貰うからね!」


「はいはい。わかっているわよ。そのためにこれでも急いで戻ってきたんですから」


 さて……余計な事で時間をロスしてしまいましたが、これから頑張って後れを取り戻していきましょう!


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