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【第71話:ロシナン亭】

 アレン商会で今後についての打ち合わせを終えてから、また少し慌ただしい日々を過ごしています。


 今私はレミオロッコ工房に来ているのですが、ちびっ子たちに羊のフェルトマスコット『羊さん』の作り方を教えるのに、みんな四苦八苦しているようです。


「あぁ!? そこはもっと丁寧にしないとほつれちゃうよ~!」


「こら! 楽しいからって、そんな大きな塊つくっちゃダメですわ!」


 メインで教えているのは、アンジュとセイナ。

 隣で一緒に作りながら、トルテとヨセミテがサポートでついています。


 教える方は大変そうですが、こんな幼い子たちが頑張っている姿は、眺めているだけで癒されますし、とても微笑ましいです。他人事ですがなにか?


 でも、他の工房のメンバーと比べるとまだまだ未熟ですが、最後の仕上げでレミオロッコが少し整えてあげるだけで商品として問題ないレベルにはなっています。

 幼い上に、まだ習い始めて数日しか経っていない事を考えると、みんなかなり優秀じゃないかしら。


 ずっと見ていたいところだけれど、そろそろ時間のようね。


「レミオロッコ。それじゃぁ、羊毛は全部倉庫にしている部屋に運んでおいたから、後でギルダさんに言って確認して貰って」


 ちなみに今ギルダさんとギルナさんの二人は、みんなのために食事を準備中です。


「うん。わかったわ。後でお願いしておく……って、あれ? キュッテ、今日は食べていかないの?」


 いつもはここでみんなと一緒にお昼を食べていくのだけれど、今日はちょっと予定が入っているのよね。ふふふふふ♪


「ふふふ♪ 実はこの後、アレン商会で牧場勤務希望の人を紹介して貰う事になってるのよ♪」


 そして……久しぶりに『ロシナン亭(あの店)』でお昼をご馳走になるのです!


「うわっ!? まさかロシナン亭に⁉ ずるい! 私も行きたい!」


「連れて行きたい所だけど、今日は仕事だから駄目よ。そもそも初対面の人が二人くるし、そしたらあなた話せないでしょ?」


「うぅ……仕方ないな。今日は諦めるけど、次は誘ってよ?」


 うちもだいぶん儲かってきたけど、レミオロッコだけでなく、私の収入でもあそこの店に食べに行くのは躊躇するレベルの料金なのよね。

 仕方ないから次に奢って貰えそう(・・・・・・・)な時にはレミオロッコも誘ってあげようかしらね。


 だって、奢ってあげたい気持ちはあっても、お金がついてこないのよ!


「じゃぁ、私はもう行くね。みんなも頑張ってね~!!」


「「「は~い! もふもふキュッテちゃん、いってらっしゃーい!」」」


 くっ……ちびっ子たちには、すっかり二つ名が定着してしまったわね……。


 私は苦笑いを浮かべつつも手を振り、コーギーモード(フィナンシェ)を連れてアレン商会に向かったのでした。


 ◆


 アレン商会でアレン様たちと合流したのち、商会の所有する馬車で『ロシナン亭』にやってきました。


 今日、紹介してくれる二人は、直接ここにやってくるそうなのですが、それにしても『ロシナン亭(ここ)』って、庶民が利用できるようなお店じゃないのだけれど、どういうことなのかしら?


 最近になって、私もお金をそれなりに稼ぐようになったからわかりますが、この店を利用できるのは、かなり裕福な人だけです。

 そもそも一見さんお断りらしいので、一生に一度の思い出に! という利用の仕方もできません。


 それを考えると、私の牧場で働きたいというような人が、ここを利用した事があるとは思えないのですが……たとえ場所がわかっても、入りずらくないかしら?


 馬車の中でも、それとなく疑問をぶつけてみたのですが、とりあえず会ってみて下さいと、理由を教えてくれませんでした。


 そして、個室に通されてから一〇分ほど経った頃でしょうか。

 前世で飲んだアッサムティーのような、なんだかとても高級そうな紅茶を飲んでいると、部屋の扉をノックして、この店の従業員さんが入ってきました。


 何の紅茶かですって? こんなのここでしか飲んだことも見かけたこともないし、いちいち聞くのも恥ずかしいから、わからないのよ……。

 だって、ここの料理ってほとんど何なのかわからないから、全部聞く事になるんだもの!


「失礼します。アレン様、イーゴス様。ソーサさんたち三人(・・)がおいでになられました」


 あれ? 三人? 紹介してくれるのは二人と聞いていたのだけれど、希望する人が増えたのかしら?


「ありがとう。では、ここへ通してください」


 アレン様が了承の言葉を返すと、一分もしないうちにまた扉がノックされ、先ほどの従業員さんが戻ってきました。


「ソーサさん、こちらでございます。それでは、アレン様、イーゴス様。合図を頂けましたら料理をご用意致しますので、一度失礼致します」


 そう言って従業員さんは、後ろに控えていた人を部屋に通して去って行きました。


「失礼します」


 従業員さんと入れ違いで入ってきたのは、二人の男女と一人の女の子でした。


 二人は私よりずっと上の大人で、見た感じだと30歳前後かしら?

 その後ろで控えている女の子は、リイネたちと同じぐらいに見えます。


 ただ私たちと違って、とても上品な感じの育ちの良さが伺えるような佇まいです。


「ソーサさん、久しぶりですね。副ギルド長の件、気付く事が出来ず、本当に申し訳ない」


 え? 副ギルド長の件!? いったいどういう事なのかしら?


 本当に申し訳なさそうに頭を下げるアレン様を見て、なんだか理由がありそうだと、ちょっと気を引き締めることにしたのでした。


***********************

みんな憧れロシナン亭で食べてみたい(●´ω`●)

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