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【第70話:わくわく】

「何を言っているのですか、キュッテ。アレン商会にとっても凄く美味しい話なのですよ」


「美味しい話、ですか?」


「キュッテさん。さすがに新たに作る商品まで赤字の安値で売る事は難しいので、あくまでも普通に商品として販売させて頂く事になるとは思います。ですので、その点が問題なければ、という話にはなりますでしょう」


 もう……アレン様もイーゴスさんも、どこまで人が良いのでしょうか。

 さすがに私も、カワイイをこの世界に普及させたいからと、全ての商品を安い値段で売りに出したいわけではありません。


 安い物から高い物まで選択肢があった方が、購買意欲も刺激しますしね。

 ブランドものは安値にするとブランド価値が下がって、逆に人気がなくなったりしますし。


「それはもちろん問題ありません! と言うか、もう十分すぎるほどお世話になっているので、そうしてくれないなら、逆にこのお話は無しです! ちゃんとアレン商会でも利益を出してください!」


「はははは。いかにもキュッテらしいね。では、しっかりうちでも儲けさせて貰おうかな?」


 アレン様が笑うと糸目がさらに細くなりますね。

 そのうちメガネの奥で目が消えてなくなりそうとか思ってませんよ?


 でも、それでもイケメンなのだから困ったものです。笑顔が眩しいという意味で。


「ふふふ。はい。是非そうしてください。あと、さっきの馬車や従業員の話にも関係する事で、私の方からも提案……というか、相談があります」


「ん? 相談ですか?」


「はい。一つ目は羊さん(・・・)作りを、孤児院と契約して孤児院の年少組の子たちに任せられないかということ。それから、工房の従業員だけでなく、牧場の従業員を、あと一名か二名募集したいことです」


 実は、商品開発をうちにという話を持ち掛けて貰う前から考えていた事なのですが、まずは羊さん作りを孤児院の小さな子たちにやって貰って、うちの今の従業員たちは商品開発に回したいなぁと思っていたのです。


 そして昨日、売り子をしてくれた子たちを孤児院に羊馬車で送っていった時のこと。

 各孤児院の院長と少しお話をする機会があったのですが、その時、なにか簡単な仕事があれば、またお願いしますと頼まれたのです。


 元々考えていた事だったことでもあり、それならば実際に行動に移してみようかと。


 うちはあくまでも羊毛の提供と牧場運営、それからカワイイ商品の開発と、その原材料になる毛糸や糸の作成までにし、羊のフェルトマスコット作りは、指導と品質チェックなどの管理だけにしたいと考えていることをアレン様たちに伝えてみました。


 なんでも自分たちだけでやろうと思うと、商売一筋の人生になっちゃいそうですしね。そんな人生、私は望んでいませんから。


「なるほど……うん。良いのではないでしょうか。工房の方では羊さんの作り方を指導し、品質を管理する。なかなか面白い考えですね!」


 少し話をしてみると、どうやらこういう仕事の分業の仕方はこの世界ではないようで、何度も面白いと感心していました。


 たしかにこの世界では、何かの商品の作り方、特にそれが珍しいモノ、作り方が知れ渡っていないモノなどは、他の店や職人に真似をされないように隠す傾向にあります。


 でも、前世では凄く当たり前に行われていた事なので、この発想が珍しいということ自体に、私は気付いていませんでした。


「それではさっそく話を進めてみましょうか。錬金術ギルドの件ではご迷惑をおかけしましたので、どうお詫びしようかと思っていたところです。ここでしっかりと挽回させて頂きましょう」


 たしかにイーゴス商会に卸した羊毛から錬金術ギルドにうちの羊毛が特殊なことがバレてしまいましたが、それは本当に偶然そうなってしまっただけです。

 イーゴスさんは、うちが売り先に困っていた羊毛を、好意で買い取ってくれただけなので何の非もありません。


「そんな! イーゴスさんには本当にお世話になっていますし、何の責任もありません!」


 だから、慌てて否定したのですが……。


「はははは。キュッテ。イーゴスは面白そうな話だから、口実を付けて自分も手伝いたいだけです。今もわくわくしていますよ」


 え? そうなの? わくわく? 


「はは。参りましたな。やはりアレン様には隠し事はできないようです。最近、キュッテさんと共同で色々と仕事をするようになってから、年甲斐もなく元商人の血が騒いで困っているのですよ」


 あ、そうか。アレン様は『診断』のスキルがあるから、イーゴスさんがいくらクールフェイスでいても、内心でどんな感情を抱いているかが何となくわかるのね。


 と、思ったのですけど。


「能力は使ってないですよ。イーゴスとも長いですから、何となくそうだろうということがわかるだけです」


「そうでしたか。このイーゴスも感情を見抜かれるとは老いたものです」


「そこは、僕が成長したってことで良いんじゃないかな?」


「なるほど。では、そう言う事で」


 なんだかこの二人の関係って良いですね。

 お互いに信頼し合っているのがよくわかりますし、傍から見ていても、とても心地の良い関係にあるのがわかります。


 私もレミオロッコや他のみんなと、こんな関係を築いていけたら良いな。

 思わずそう思った瞬間でした。


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