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【第56話:ギルド?】

 工房が動き始め、私の生活も大きく変わってきました。


 一番大きな変化は、今、私の隣にはレミオロッコはおらず、代わりと言っては失礼ですが、リイネと一緒に生活していることでしょうか?


 リイネは色んな面でレミオロッコとは対照的で、弱気だけど人見知りはせず、見た目はボーイッシュだけど、凄く可愛らしい性格をしています。


 なので、揶揄う相……モノづくりをする相手がいない点はちょっと寂しいですけど、愛でる相手が出来たのでこれはこれで悪くないですね。


 ちなみに彼女、ドジっ子属性持ちのようで、


「きゃっ!?」


 よく転び……、


「ふぎゅっ!?」


 よく足をぶつけたりしています。


「リイネ、大丈夫~?」


「は、はい! キュッテちゃん、大丈夫です!」


 私の方が年下だし、「さん」付けいらないから、好きに呼んで良いよって言ったら、まさかの「ちゃん」付けになってしまいました。


 まぁ今の私の容姿を考えると、妥当な呼び方かもしれないですけど。


「じゃぁ、今日は私は工房に行くから、こっちをお願いね」


 この数日一緒に暮らしてわかったのは、彼女は動物が大好きだという事です。

 まぁ羊は魔物なので、厳密にいうと動物じゃないんですけど、ピンクやイエローの羊を見た時なんて、それはもう大興奮で、あの工房での内気具合はなんだったの? と思うぐらい毎日楽しそうです。


 だから羊や山羊のお世話をすることにとてもやりがいを感じているみたいで、今は本当に生き生きとしていて、なんだかこちらまで楽しい気分にして貰えます。


「はい! あとは任せて! あっ!? 白山羊(カシワ)ちゃん! 勝手に家の中に入っちゃダメ~!」


 ……任せて大丈夫かしら?


 カシワを追いかけ、走り去っていくリイネの後ろ姿を見ながら、若干不安になったのでした。


 ◆


 今日は一人でフィナンシェに乗ったので、タイムアタックするつもりで街道まで駆け抜けました。


 正確な時間が測れないのが残念だけど、たぶん今までで最短なはずです。

 うん。人馬一体ならぬ、人犬一体になってきたわね。


 街の門が見えてきたところだったのですが、レミオロッコらしき女の子が、門の外に立っているのを見つけました。


「あれ? フィナンシェ、あれってレミオロッコかしら?」


 でも、まだ遠くて確信が持てなかったので、目の良いフィナンシェに聞いてみました。


「「がぅ? ……がぅ!」」


「やっぱりそうよね? どうしたのかしら? 何かあったとか?」


 ちょっと心配になってきたので、急ぐことにしましょう。

 コーギーモード(フィナンシェ)と共に走る姿は、きっとお散歩中に犬と一緒に遊んでいる女の子って感じなんでしょうけど、運動神経最低だった前世の私と比べたら、これでもかなり良い感じに走れているはずです……。


「あっ!? キュッテ~!!」


 ぶんぶんと手を振るあのちっこい姿は、やはり間違いなくレミオロッコです。


「どうしたの? レミオロッコ? 何か問題でもあった?」


「う、うん。ちょっと、いえ、かなり? とにかく問題なの! ギルドが視察をさせてくれって、凄いしつこくて!」


 え? 今、商業ギルドって領主様に目を付けられているのに、そんな事をしてきたの?


 副ギルド長は捕まって一生牢屋暮らしだと聞いていますし、取り仕切っていた商いや財産も全て接収され、関わった者もほとんどが捕まったはずです。


 その上、たしか副ギルド長の数々の悪事が明るみに出た事で、商業ギルドにも監査が入り、今身動きが取れない状況だと思うのですが、どういう事でしょう?


「本当なの? 今、商業ギルドって、いろいろと大変だと聞いているのに……」


 と思ったのですが……話を聞くと、どうやらギルド違いのようです。


「違うの! しつこいのは錬金術ギルドなの!」


 なんだかまた、厄介ごとの匂いがぷんぷんとしてきましたね……。


 ◆


 どうやらレミオロッコは、私が錬金術ギルドの人たちに捕まらないように、門の外まで迎えに来てくれたようです。

 しかも、よほど警戒しているのか、レミオロッコは詳しくは後で話すからとコーギーモード(フィナンシェ)をローブでくるんで抱っこすると、工房ではなく、アレン商会へと向かうと言い出しました。


「え? え? そこまで厄介なことになってるの? さすがに日中の街中で暴力とか振るってこないわよね?」


 一瞬、強面顔のお兄さん方が「嬢ちゃん、ちょっとツラ貸せや~」とすごんでくる姿を想像してしまい、ぶるっと肩が震えてしまいました。


 まぁ、そんな事されたらこっちも黙っていませんけどね! 主にうちの牧羊犬が。


「暴力? そんなの振るってくるわけないよ? あんな爺さん連中なら私の方が腕っぷし強いと思うし?」


 え? 爺さん連中? どういう事なのかしら?


「とにかく見つかると厄介なの! 早く行くよ!」


「わ、わかったわよ。わかったから、ちょっと待っ……」


 ちょっと一度落ち着きたくて、急な展開にちょっと待ってと待ったをかけようとしたところ、私の言葉は誰かの大きな声で遮られてしまいました。


「見つけたぞぃ!! あの幼い子に間違いないぞぃ!!」


 ぞ、ぞぃ? その特徴的な言い回しに思わず振り返ったのですが……。


「ぉぉぉ!? あの子に違いないっす! 捕まえるっす!」


 っす? いったい何? この、この変な集団は!?


 私の目に飛び込んできたのは、数人のお爺さんたち。

 そう。パッと見は、本当によぼよぼのお爺さんなのだけれど、言葉遣いだけでなく、雰囲気……特に目がやヴぁいです!! なんか血走ってます!?


「キュッテ! 強行突破するよ!!」


 レミオロッコは素早くフィナンシェを地面に降ろすと、私の左手をがっしと掴み、


「へ? ひゃぁ!? ちょ、ちょっと待って!? は、走るから! 走るから引っ張らないで~!?」


 ぐいぐいと強引に手をひき、全速力で走り出したのでした。


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