表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/100

【第53話:はじめました】

 以前、アレン様の御者をしていたおじさんはゴメスと名乗ると、ニカっと人の良さそうな笑みを浮かべてくれました。


「ゴメスさんですね。あの時は、ちゃんと自己紹介もせずにすみませんでした」


「いえいえ。気にしないでください。あの時は私もびっくりして、話しかける事も出来ませんでしたからねぇ。いや、それにしてもしっかりしたお嬢さんだ」


 はい。元、仕事のできるOLでしたからね。


「あ、ちなみに、こっちで緊張でガチガチになっているのはレミオロッコです。ほら、あなたからもちゃんと自己紹介しなさい」


「ははは、はじめまし()! ……ぅぅ」


 なに? なにか季節ものの料理でも始めるの?


 まぁでも、いきなり「あぁん!」とか「シメるぞ!」とか言わなくなっただけでも、進歩してるわね。退化したと言った方がぴったりこないこともないけど。


「はぁ……すみません。この子、本当に人見知りで、今日はいつも以上に緊張してるみたいで……」


「はははは。おじさんみたいなのに、緊張する必要はないよ。これから気軽に話しかけてくれればいいから」


「ぁ、ぁ、ありがとうございます!!」


 しかし、レミオロッコ工房とアレン商会との橋渡し役と言うのは、いったいどういう事なのでしょうか?

 前回の話し合いでは、最初は大変だろうからお手伝いに人を派遣するという話だけだったのですが。


「キュッテさん。後で今後の事について、それからゴメスの役割についてなどは話す事になると思いますので、まずは集まっている者たちのところへ参りましょう」


「あ、そうですね。あまり待たせるのも悪いですし」


 少し気になりますが、あとで話を聞けるようですし、今はイーゴスさんの言葉に従い、私たちはそのまま二階へと上がりました。


「皆さま、お待たせしました」


 二階のとある一室の扉を開けて先に入ったイーゴスさんが、そこに集まった皆に向けて、言葉を発しました。


「事前の面接でお話は聞いているかと思いますが、こちらがこの工房を取りまとめる事になるレミオロッコさんと、この工房のオーナーとなるキュッテさんです。お二人とも大変お若いですが、とてもしっかりしたお方です。あなた達の雇い主となりますので失礼のないように」


「「「「「はい!!」」」」」


 元気よく返事をしたのは、私より少し年上に見える女の子が三人と、同じか少し年下に見える男の子が二人の合計五人の少年少女。


 その中には、孤児院で人を雇う(この話)のきっかけにもなったトルテもいました。


 でも部屋にいたのは、少年少女(その子たち)だけではありませんでした。


「「はい。よろしくねぇ」」


 ハマるように挨拶を返してくれたのは、そっくりな見た目の年配の二人の女性でした。


 双子のおばさん? てっきり声をかけたのは孤児院の子供たちだけかと思っていたのだけれど、どういう人なのかしら?


 おっと……その前に、次はこちらの番のようです。


「えっと、ただいま紹介にあずかりました。一応、オーナーとなるキュッテと言います。私は基本的に牧場の方にいる事になると思いますが、皆さん、どうぞ宜しくお願いします」


 私がさらりとそつなく挨拶をこなすと、隣にいたレミオロッコも慌てて話し出しました。


「あ、あ、あ、あの! ここ、この工房を任される事になた。レミオロコです! よろしくでひゅ!」


「えっと、レミオロコ(・・)は人見知りのあがり症なので、今はこんなですけど、レミオロコ(・・)はモノづくりに関しては間違いなく優秀なので、多めに見てあげてくださいね。ね? レミオロコ(・・)?」


「ちょ、ちょっと噛んだだけじゃない! 私はレミオロコ(・・)じゃなくて、レミオロッコ(・・・)!!」


 レミオロッコがあまりにも緊張しているので、少し揶揄ってあげたら、私たちのやりとりを見ていた女の子三人が必死に笑いを我慢していました。


「「「……ぷ、ふふふ……」」」


 きっと羊が転んでもおかしい年頃なのでしょう。


「ふふふ。遠慮しないで笑っても大丈夫よ。レミオロッコはこんなだけど、この子、本当にモノづくりの才能は凄いので、しっかりと指示に従って頑張ってね」


「え? あの? それって……雇ってもらえるという事ですか?」


 一応、最後に私たちが確認して、雇うかどうか決めてくれれば良いとは言われていますが、アレン商会の方で事前に書類審査と面接をしてくれているので、一目でわかるような変な人でなければ、そのまま雇うつもりでした。


「はい。レミオロッコもいいわよね?」


 元々レミオロッコは、その人が良いかどうかなどわからないと言うので、それなら一緒に働く事をイメージし、怖そうな感じの人や変な感じの人、自分とはあわなそうな人がいないかだけ見れば良いという事を伝えてあります。


「え? う、うん。怖そうな人も、変な感じの人もいないし……」


 だから一応、その事を確認したわけですが、大丈夫そうですね。


「キュッテさん、まだ挨拶を交わしただけですが、よろしいのですか?」


「えぇ。イーゴスさんたちが問題ないと判断したのです。もし、その中に問題のある人がいたとしても、私たちが見抜けるとも思えませんしね」


「ははは。随分と信用して頂いているようで。それでは、皆、これからはキュッテさんとレミオロッコさんのことをしっかりと支えてやって欲しい」


 私に続いて、イーゴスさんがそう言った事で、ようやくホッとしたのでしょう。

 皆が嬉しそうに「宜しくお願いします」と、返事を返してくれました。


 私はともかく、この世界の子供たちは、レミオロッコも含めてしっかりしているわよね。


「キュッテ! 雇ってくれるんだな! さんきゅな!」


 うん。でも、まずはトルテ(この子)の呼び捨てから直していきましょうかね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
作品の評価は、上の『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』から★★★★★と表示されている所をクリックする事で簡単に出来ます!
応援にもなりますので、この作品を読んで妥当と思われる★を選び、評価頂けると嬉しいです!

また、面白いと思って頂けましたら、ぜひブックマークもお願いします!


新連載!
『オレだけクォータービューで戦場を支配する
~あらゆるユニットを召喚して異世界を救うキャンペーンのクリアを目指します~』


異世界にふりかかる理不尽をチートで蹴散らす本格バトルファンタジー! 今ここに始動する!


ドラゴンノベルス様より、書籍版 第一巻 2/4(金)発売!
322110000539.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第一巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFブックス様より、書籍版 第二巻 好評発売中!
b75shabp9u5nbfoz3gyd7egp52f_fdr_ci_hs_92
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第一巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

MFコミックス様より、コミック第二巻 好評発売中!
322007000171.jpg
※画像をクリックで詳細ページが開きます

『呪いの魔剣で高負荷トレーニング!? ~知られちゃいけない仮面の冒険者~』
8o9b581i4b7hm42ph5wph6qohlqu_xql_tg_15o_
※画像クリックでなろう内の目次ページが開きます
『突然、カバディカバディと言いながら近づいてくる彼女が、いつも僕の平穏な高校生活を脅かしてくる』
平穏を求める高校生と、とある事情を持つ美少女クラスメイトの恋物語(ラブコメ)

『槍使いのドラゴンテイマー シリーズ』
少年漫画のようなバトルファンタジー!



ツギクルバナー  cont_access.php?citi_cont_id=427461852&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ