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【第48話:ポケットマネー】

「街に工房を……ですか? た、確かにそれなら……」


 なぜ、そんな簡単なことが思いつかなかったのでしょう。


 街から離れている牧場で人を雇おうとするから難しいのだから、街に工房を作り、そこで人を雇ってフェルトマスコット作りをして貰えば良いじゃないですか!


 一定の水準になるまで暫くかかるかもしれませんが、フェルトマスコットを作るのは、そこまで難しくありません。

 生まれ持って授かったギフトが、モノを作るのに適したものでなくとも、少し教えれば何とかなるでしょう。


 現に私は、フェルトマスコットを作るのにスキルの能力は全く影響していないですからね。


「それは良い考えかもしれないですね!」


「良いですね! 工房を作りましょう! アレン商会も協力します!」


「あ……でも……」


 人を雇うぐらいの蓄えは出来ましたが、まだ建物を借りたり、工房を起こすとなると、今の蓄えではとてもではないですが、全く足りません。


 この世界でもお金を借りる事は出来るはずですが、たしか闇金もびっくりな金利だったはずです。


「キュッテさん、資金のことなら御心配には及びません。アレン商会で全面的に援助させて頂きますよ。ねぇ、アレン様?」


「あぁ、もちろんです! そもそもうちがフェルトマスコットの増産をお願いしたのですから、資金面だけじゃなく、工房起ち上げに関しては全面的に支援させてください!」


 願ってもない申し出だけど……こんなに甘えてしまって良いのかしら?

 今さらと言えば今さらなのだけれど、やっぱり今までとは支援の桁が違う事になると思いますし……。


「キュッテさん。これはアレン商会にとっては投資のようなものです。もし許されるのなら、私がポケットマネーで支援させて頂きたいぐらいの優良な投資ですよ。それに……」


 ポケットマネーで工房起ち上げられるんだ……。


 いつになくイーゴスさんが色々と熱く語り始めました。

 自分がもう少し若ければ、私と手を組んで熱い商売が出来たのにと、普段クールな元イケオジのイーゴスさんらしからぬ興奮した様子に、私もレミオロッコも驚きです。


「い、イーゴス……? ちょっと落ち着いて。イーゴスがそんなに商売に熱くなるところを見るのは久しぶりで嬉しいですが、キュッテたちが困っています」


 人って、周りの人が熱くなっていると、たまに自分は冷静になっちゃう事ってありますよね。前世だと、泣ける映画で隣でわんわん泣かれると、もう泣けないというか。


「あ……こ、これは失礼いたしました。ですが、キュッテさん。今お話したように、このお話はアレン商会にとっても大きな魅力のある話なのです。ですから、もし工房に興味があるのなら、遠慮なさらずに前向きに検討してみてはいかがでしょうか?」


 興味があるかないかで言えば、おおありです!


「本当によろしいのでしょうか?」


「はい! キュッテのところの羊毛は素晴らしい品質ですし、フェルトマスコットに関しては、唯一無二です。それに……キュッテは、まだまだ何かしてくれそうな、そんな予感がするのです」


 アレン様に真剣にそんな事を言われると、ちょっと恥ずかしいですけど、そこまで言われて嬉しくないわけがないです。


 私も覚悟を決めましょうか。


「ありがとうございます。わかりました。ぜひ、工房の件(このお話)、進めさせてください!」


「ありがとう! キュッテ、こちらこそ宜しくお願いしますね!」


 でも、工房を作るなら……。


「ただ……工房に関して、一つお願いがあります」


「はい? なんでしょうか? 出来るだけのことはさせて頂きますよ」


 私はもう一度「ありがとうございます」と頭を下げてから、今度は、隣でずっと黙っているモノづくり最強女子に視線を向けます。


「ねぇ、レミオロッコ?」


「え? え? な、なに? キュッテが黒い笑み(その笑み)を浮かべている時って、大概ろくでもないことな気がするんだけど!?」


 失礼ね。こんなカワイイ黒い笑み(・・・・)をつかまえて。


「頬を指でクイってあげても、笑みの種類は変わらないわよ!?」


 せっかく両手の人差し指で頬をクイっとあげて、可愛らしい笑顔にしてあげたのに。


レミオロッコ(従業員第一号)、あなたを工房長に任命します!」


「やっぱり!? そんなの私に無理だから!?」


「やっぱりって、わかってたんじゃない」


「そりゃぁ、この話の流れとタイミングだもの! キュッテが黒い笑みを浮かべたら、想像もつくわよ!」


「普通、工房を持つのなんて、モノづくりしてる人たちからしたら夢のはずでしょ? レミオロッコは何が嫌なのよ?」


「そ、それは……工房をやりくりしたり、だ、誰かに指示を出すのなんて絶対無理よ……」


 あぁ……これは、主に後者の方の理由ですね。

 でも、私とはこれだけ普通に話せるようになったし、自分を出せているのに、どうして直らないのかしら?


「まぁ牧場で雇うのと違って、街にある工房で雇うのなら、それなりの人の中から選べるはずだから、レミオロッコと相性の良い人も見つかるわよ。知らないけど」


「知らないけどって言った! 今、一瞬期待させておいて、知らないけどって!」


 うるさいわね……。

 だって、本当に募集かけてみないとわからないじゃない。


 結局この日は、いつもの取引と、いつものアレン様の奢り(食事)を済ませたあと、大まかにどのような工房にするのか意見を出し合い、詳細は後日詰める事にして、私たちは牧場へと帰ったのでした。


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