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【第44話:天才】

 ひと段落ついた所で、檻からピンクの羊たちを出してあげたのですが、みんな大喜びし、強制もふもふの刑にあってちょっと幸せ(大変)でした。


「「「めぇ~♪ めぇ~♪」」」


「本当に、みんなキュッテの事が大好きよね」


「ふっふっふ。この至高のもふもふ、レミオロッコになら、少し体験させてあげても良いわよ?」


「うん。いらないわ」


「そ、即答……」


 そんな馬鹿なやり取りをしつつも、副ギルド長ほか三人の男を、フィナンシェに秘密基地から持ってきてもらったロープで拘束して家畜用の檻に放り込み、ようやく一息つく事ができました。


 さて……面倒ですが、このぐうすか寝ている男どもを街まで運びますか。

 まぁ私が寝かせたんですけどね。


 ちなみに、フィナンシェに叩き伏せられて(お手されて)苦悶の声をあげていた二人には、無理やり声に出して羊を数えて貰って仲良くおねんねして貰っています。


「でもまずは、この人たち邪魔だし、人体実……送還して、一気に牧場まで戻りましょうか」


「キュッテ……なにか、不穏な言葉が聞こえた気がするんだけど……?」


 え? 気のせいじゃないかしら?


「送還!」


 レミオロッコからの疑いの眼差しを華麗にスルーして送還すると、檻の中の男たちと一緒に、馬車丸ごと問題なく転移させることに成功しました。


 あ、もちろん馬は可哀そうなので、ちゃんと外していますよ?


「じゃぁ、捕らえた男たち(荷物)も無くなった事だし、帰ろっか?」


 意外にもレミオロッコが馬の扱いは得意だと言うので、私がケルベロスモード(フィナンシェ)に乗り、馬車を牽いていた馬をあわせて五頭の馬を、レミオロッコが一人で連れて行くことになりました。


 ちなみにピンクの羊たちは、私の事が大好きなので、勝手についてきます。えへん。


「そうね。その……キュッテ……、あのさ……」


 さっき十分お礼を言われたのに、また改まってお礼を言おうとしていますね。


「ん? どうしたのよ? あぁん?」


「もぅ! 茶化さないでよ! ほんとにシメるわよ!!」


「ふふふ。そんな改まらなくたっていいの! 行くわよ! ちゃんと馬お願いね!」


 私は何だか照れくさくなって、そのままフィナンシェを走らせたのですが、


「もぅ……それでも! ありがとう!! キュッテ!!」


 私の背中に向かって、レミオロッコは大声で叫んだのでした。

 だから、恥ずかしいっていうの!


 こうして私たちは、まずは牧場へと向けて移動したのでした。


 ◆


 牧場に着くと、羊たちが皆で出迎えてくれました。


「「「「「めぇ~♪ めぇ~♪ めぇ~♪」」」」」


「みんな、ただいま!」


 きっとケルベロスモード(フィナンシェ)に乗っていなかったら、もふもふまみれになっていたことでしょう。

 本当はすぐにでも降りて、もふもふまみれになりたい所ですが、今はちょっと急いでいるので、そのまま家などが建つ丘の方へと向かいました。


「キュッテ! とりあえず、五頭の馬(この子たち)は厩舎にいれておくわよ?」


「うん! お願~い!」


 私はレミオロッコと別れると、秘密基地の方へと向かいます。

 先に送還で転移させた副ギルド長たちを、もっとガチガチに拘束しなおしておかないと不安ですからね。


 私は、隠し扉を開けて階段を降りると、転移先にも使っている大きな作業部屋へと向かいます。


「ん? なんだか凄いイビキが聞こえてくるわね……」


 作業部屋の扉って結構分厚くしているのに、どれだけですか……。

 この分だと、起きてるって事は無さそうかな?


 私はそのまま扉を開けて部屋に入ると、一応慎重に檻へと近づきます。

 牧羊杖バロメッツでつついても起きないので、やはり大丈夫そうです。


「全員爆睡しているわね」


 もしかして進化したピンクの羊を数えると、効果が高くなるとかあるのかしら?


「まぁ今考えても仕方ないですし、それは良いとして……」


 本当は、寝てる間にレミオロッコに檻を補強して貰おうかとも思ったのですが、この分だと、私たちが街に着くまでに起きる事はなさそうです。


「あ、でも、念のために……」


 私は近くにあった紙に、この世界の言葉でとある一文(・・・・・)を書いていきます。


「良し。出来たわ。四方向に張ればいいから、四枚で良いわね」


 すると、ちょうどその時、レミオロッコが作業部屋へと入ってきました。


「キュッテ~? ん? 何書いてるの? なになに……『ピンクの羊が何匹いたか、良い子は絶対数えちゃダメだぞ? はーと』なにそれ?」


「副ギルド長たちが起きた時のための保険よ。これを目に入る所に貼っておくの」


 そうすれば、思わず数えちゃうでしょ? 人間だもの。


「キュッテって、ほんとにそう言う事を考えさせたら天才だよね……」


「そんな褒めても、何も出てこないわよ?」


「褒めたつもりはこれっぽっちも無かったんだけど、もう、いいわ……」


 うん。なんか勝った気がする。


「それより、ここの準備がもういいなら、羊たちもみんな厩舎に入れて、早く街に向かいましょ。じゃないと、今日中に帰ってこれなくなるわよ?」


「うん。もうここはこれで良いよ。念のためにレミオロッコの工具箱だけ部屋の外に出しておいて、あとは扉に鍵をかけてしまえば、最悪起きて羊トラップを回避したとしても、ここから簡単には出られないでしょうし」


 眠らされ、縛られた上で家畜用の檻に入れられ、さらに羊を思わず数えちゃうトラップ、略して羊トラップもあるのだから、あとは頑丈な扉に鍵をかけておけば、もう十分でしょう。


 ◆


 レミオロッコを残していくのはもう嫌だったので、今度は二人で一緒にケルベロスモード(フィナンシェ)に乗って街へと向かいました。


 途中、レミオロッコが、「うそ? フィナンシェちゃんて、これでもまだ本気じゃないの?」なんて言うので、親切な私はフィナンシェの本気走りを体験させてあげました。


 その後、なんか叫んでたみたいだけど、出来るだけ早く街に行きたかったので、もうそのまま街道までフィナンシェの本気走りで向かう事にしました。


 たぶんストップウォッチで測れば、今までの最高記録を更新していたのは間違いないでしょう。


「はぁ、はぁ、はぁ……し、死ぬかと思った……。きゅ、キュッテ……あなた、本当に私のこと好きなのよね?」


「当たり前でしょ? 今日の出来事もう忘れちゃったの?」


「今のフィナンシェちゃんの走りで、危うく色んな記憶ごと忘れそうになったわよ!?」


 そんな話をしながら街道を歩いていると、前方に馬に乗った兵士らしき人たちの姿が見えたのでした。


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