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【第38話:犯罪】

「そんな事があったのですね……」


「子供の行いを正すのは親の役目なのですが……そもそも本人が色々と問題ですからね。副ギルド長にも本当に困ったものです」


 えぇ、えぇ、すぐにアレン様とイーゴスさんにさっきの話をチクりましたとも!


 とりあえずトルテの話と私の感じたことを一通り伝えたのですが……。


 副ギルド長の息子、名前は覚えたくもないので忘れましたが、その太ったガキンチョは、自分の父親が羊のフェルトマスコットを持っているのを知ったのだけど、どうやら貴重な商品だからと、貰えなかったのを逆恨みしたのではないかという事でした。


 トルテの話だと、太ったガキンチョは俺も貰えなかったのにと激昂していたという話でしたが、アレン様が言うには、副ギルド長は私が最初に代理販売をしていた店から、羊のフェルトマスコットを買い占めていたそうです。

 それなのに自分の子供には一個もあげないとか……本当に何なのよ。


 その話を聞いて、太ったガキンチョには、一瞬、ミリレベル、いいえ、マイクロレベルの同情がわきましたが、アレン様たちの話では、太ったガキンチョは他にもいっぱい酷い事をしまくっているようなので、まったくもって同情の余地なしでした。

 私のマイクロレベルの同情を返せ!


 しかし、アレン様やイーゴスさんまで、太ったガキンチョの事を知っているとは思いませんでした。


 その事を口にしてみると……。


「いや、キュッテから副ギルド長の横暴の話を聞いて、下の者に色々と調べさせていたんですよ」


「わたくしもアレン様と一緒に報告を受けたのですが、息子のせいで職を失った者までいるという話までありましたから、相当我儘に育てられたのでしょう」


 え? もうそれ、我儘の域を超えてるんじゃないかしら……?


 しかし、店に圧力をかけた件や、羊毛を相場よりも安く買い叩いているという事実確認は出来たものの、それを行ったのが副ギルド長であるという明確な証拠までは掴めなかったようです。


 代わりと言っては何ですが、明確な証拠こそ掴めなかったものの、出るわ出るわ不正や横暴の数々。明らかに法的に違反しているものが多数あったため、アレン様も自分の領分を超えていると判断し、とうとうお父様に、つまりこのクーヘンの街の領主様に、ここまでの調査結果を報告したそうです。


「と言う訳で、父さんの方で改めて調査される事になったため、時間は少しかかるかもしれませんが、これで副ギルド長も終わりでしょう」


 おぉぉ~♪ 間接的にはなりますけど、これで副ギルド長(きゃつ)をぎゃふんと言わせることが出来そうですね! ついでに息子(太ったガキンチョ)の方も!


「いろいろと動いて頂き、本当にありがとうございます!」


「いや、本当ならキュッテから話を聞く前に、気付かなければいけなかったのに、本当に申し訳ない」


 私からしたら感謝しかないのに、アレン様はそう言って深々と頭をさげてきたので、驚いて止めに入りました。


「や、やめて下さい! 頭を上げて下さい! 本当にアレン様は……人が良すぎると商売に支障をきたしますよ?」


 これから商会をもっと大きくしていきたいと言っているのに、こんなお人好しで大丈夫なのでしょうか? いつか騙されないか心配になってきます。


「うっ、キュッテまでイーゴスと同じことを……」


 そりゃぁ、イーゴスさんは相談役なのですから、私より先に注意していますよね。

 まっすぐなのは良いことだと思いますが、イーゴスさんも苦労してそうです。

 今も若干苦笑いを浮かべていますし……。


「でも、まさか法を犯すほどのことをされているとは思いませんでした」


 副ギルド長とは少ししか話していませんが、まさか犯罪に手を染めるほどの悪人だとは思いませんでした。


 羊毛の取引で圧力をかけて安く買い叩くのも、立場上不味いのは不味いですが、それは商業ギルドとしての規約に違反するとかそういう話で、たしかこの世界の法にはふれていないはずです。

 だから、せいぜい副ギルド長の解任とか、商人ギルドの登録抹消とかが、一番重い罰だと思っていました。


 この世界の法律がゆるいというのもあると思うのですが、逆に言うと、つまり結構あくどい商売をしても法に触れないというわけです。


 それなのに、アレン様がお父様(領主様)に引き継ぐほどのことをしていたとなると、かなり凶悪な犯罪に手を染めていた、という事になるのではないでしょうか。


「そうですね。僕も報告を聞いた時は驚きました」


 う……気になりますね。

 副ギルド長はいったいどんな悪い事をしていたのでしょうか?

 こういうのって、どこまで聞いてよいものか悩みますね……。


 うん、気になって夜しか(・・・)眠れないと困るので聞いちゃましょう。


「アレン様。言えない場合はかまわないのですが、副ギルド長はどのような犯罪に手を染めていたのですか?」


 私がストレートにそう尋ねると、アレン様はイーゴスさんに視線を送りました。

 どこまで話して良いか判断が難しいから、イーゴスさんに任せるといった所でしょうか。


「そうですね……アレン様。副ギルド長が逮捕されるまでは、まだ時間がかかりそうなのですよね?」


「はい。こちらで掴んだ情報も裏取りをされると思いますので、まだ早くても一週間はかかるかと思います」


 一から調べ直すとなると、それぐらいはかかりますよね。

 そんな事を思いながら話を聞いていたのですが……。


「それならば、キュッテさんにもある程度のことは伝えておいた方が良いでしょう。特に彼女は街の外で暮らしており……」


 イーゴスさんは、何故か話の途中で、珍しく動揺した表情を浮かべました。

 まだ付き合いは本当に浅いですが、常に冷静沈着でいると思われたイーゴスさんのその姿に、私はちょっと不安な気持ちになりつつ、言葉の続きを待ちました。


「キュッテさん……もしかして、今日はお一人で街に来られたのですか?」


 そして、私の足元のコーギーモード(フィナンシェ)に視線を送ります。


「はい。フィナンシェとは一緒ですが、レミオロッコは牧場で留守番をお願いしてあります。えっと、それが何か……?」


 や、やめてよ……なんですか、その質問……。


「本当につい先ほど受けた報告でわかったのですが……」


「は、はい……」


「副ギルド長は、以前、街の外の農家が栽培に成功した、貴重な植物を根こそぎ奪った疑いがあるようなのです。しかもその際……家の者も行方不明に……」


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今日の更新はここまで☆

いよいよ第一章も終盤、ここからのお話の展開をお楽しみに!

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