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【第32話:診断】

「……え?」


 アレン様は人の機微には疎いのかと思ったのだけれど、上手く隠していたつもりだったのに、私がちょっと沈んでいたのがわかったの?


「あれ? 違いましたか? 少し落ち込んでいるように見えたのですが?」


「えっと……はい。嫌な事があってちょっと気分が沈んでいたのですが、アレン様と会えてだいぶん気持ちが晴れました。だから大丈夫ですよ」


 と、答え、「ありがとうございます」と礼を言っておきます。


「ん~? やっぱりキュッテから、何かもやもやしたものを感じます」


 もやもやしたものを感じる? どういう事かしら?

 頭の中で疑問に思っていると、アレン様は話を続けました。


「ははは。ちょっと不思議そうですね。実は、僕のスキルは『診断』というものなのですが、その中の能力の一つに、相手の感情がなんとなくわかるというものがあるんです」


 凄い能力ね。それに『診断』なんて初めて聞くスキルだわ。

 ただ、私はこの世界のスキルについてはあまり詳しくないので、意外と珍しくないのかもしれないけれど。


「『診断』ですか? それはお医者様か何かの?」


 ギフトで授かるスキルは、だいたいが何らかの職業が有利になるものが多いので、そう聞いてみたのですが……。


「ん~そうですね。両親は医者になることを望んでいるようですが、実はこのスキルは人だけでなく、いろいろなものを対象としているのです」


「えっと、それではアレン様は別のお仕事を? 獣医とかでしょうか?」


「いいえ。動物や魔物を診断することも出来るのですが、実はいろいろな()を診断することもできるので、商会を立ち上げて商売を始めた所なのですよ」


 なるほど。物を診断して良し悪しを見抜け、今私に使ったように感情を読めるのなら、商談なども有利に運べるかもしれませんね。

 商売をする上でもかなり役立ちそうなスキルです。


 しかし、さすが領主様のご子息。

 たしか一五歳と言っていたし、その歳で商会を立ち上げるというのは凄いですね……と、一〇歳の牧場主が言ってみる。えへん。


「へ~、その若さで商会を。それは凄いですね」


「いや、それが……中々最初から上手くはいかなくてね。なんとか赤字にならずに済んでいる感じなんですよ。あ、僕のことは良いのですが、それでキュッテは何かあったのですか?」


 メガネをクイっと直しながら、私のことを心配そうに尋ねてきたので、もう話しちゃおうかしら?


「ん~、実は……」


 私は、愚痴でも聞いて貰う感じで、今日あったことを話してみたのですが……、


「ギルドで役職を持つ者が、なんと情けない!!」


 と、なぜかアレン様が、私以上に激怒してしまいました。

 アレン様、曲がったこと大嫌いっぽいですいし、変に共感してくれたようです。


「あははは。私たちの代わりに怒ってくださってありがとうございます。お陰でちょっと前向きな気持ちになれました」


 話を聞いて貰って本当に少し気が晴れたので、私はそのままこの話は終わろうと思ったのですが……そこで突然お付きの人が話しかけてきました。


「キュッテさん。もし宜しければ、その羊のマスコットなるものを見せて頂くことは出来ませんか?」


「え? あ、はい。それは別に構いませんが……」


 お付きの人だと思っていましたが、違うのでしょうか?

 ふとそう思い、周りをよく見てみると、先日御者をされていた方は更に後ろで控えていますし、従者の方っぽい若い人も同じ場所に並んでおり、この人はちょっと立ち位置が違いますね。


 そんな考えが顔に出ていたのでしょうか。

 その人は「これは失礼しました」と言って、自己紹介を始めました。


「わたくしは、この街にある『イーゴス商会』の元商会長で、今はアレン様の商会の相談役をさせて頂いておりますイーゴスと申します」


 そして「以後お見知りおきを」と言って笑みを浮かべるその姿は、只者ではないオーラが凄いです……。

 イケオジと言うにはちょっと歳を取り過ぎていますが、きっと、おそらく、ぜったい若い時は、モテたに違いありませんね。


 などと思って感心していると、レミオロッコが突然大きな声を出したので、びっくりしました。


「えぇっ!? イーゴス商会って、この国で五本の指に入る大きさの!? あの!?」


 おぉぉ……思った以上に凄い人でした。

 私は知りませんでしたが、レミオロッコが嘘をつくとは思えませんしね。


「あの、こちらこそ挨拶が遅れてすみません! 私はこの街から少し離れた所で牧場をやっている羊飼いのキュッテと申します!」


 すっかりお付きの人だと思い込んで、アレン様と話し込んでしまっていました。


「わわ、わた、私は、レミオロッコです! あぁ……ふごっ!?」


 あぶない……私だけなら面白いで済みますが、つい恫喝しちゃう癖を忘れていました。こんな人たちに向かって「あぁん?」とか「シメるぞ!」とか言わせてはいけない……。


「わたくしは、もう隠居した身。そもそも貴族でもありませんし、普通に話して下さって結構ですよ。それより、見せて頂けますかな?」


「あ、はい! フェルトマスコットと言うのですが……どうぞ」


 私はポケットに見本として入れてあった、羊のフェルトマスコットを取り出してイーゴスさんに手渡しました。


「ほぅ……これは……可愛いらしいお人形ですな」


 カワイイと褒めてくれる声がイケボすぎます……この声を録音して宣伝に使いたいぐらいですね。


「ありがとうございます。そう言って頂けると、頑張って作った甲斐がありました」


 お世辞かもしれないですが、大きな商会の元商会長に褒めて貰えると、素直に嬉しいです。

 今日は嫌なことがありましたが、これだけでもだいぶん救われました。


 と、そう思っていたのですが……イーゴスさんは、思ってもみなかった事を言い出したのでした。


「ところでアレン様。この羊の人形……アレン商会で取り扱ってみてはいかがでしょうか? この商品、絶対に大きな話題になりますぞ」


********************

今日の更新はここまで。


うまくいけば今週末から来週前半ぐらいに、

第一章が完結出来る予定です。

話が色々と動き出すのでお楽しみに☆

********************


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