【第30話:刺しまくるの】
レミオロッコのスキル『創作』は、新しいモノづくりのためなら、その作成のために必要な道具作りなどには、色々注文をつけても能力を発動させてサクッと作ることが出来ます。
今回お願いした針などは、そもそもそんな能力を発動させなくても作れるのでしょうが、やはり能力を使って作って貰うとその質が段違いですね。
「わぁ~♪ あっという間に、やっぱり凄いわね!」
「そ、そんな大した物作って無いわ。そ、それより、早く始めようよ」
褒めるとすぐ照れるレミオロッコはカワイイですね~♪
ただ、レミオロッコの希望通り、すぐに始めたい所ですが……、
「ちょっと待って。もう日も暮れたし、先に晩御飯にしましょ」
まずは腹ごしらえです。
レミオロッコが返しの付いた針、フェルティングニードルだったかしら?
それを作ってくれている間に、野菜スープとパンを焼いて用意しておいたので、まずは晩御飯です。
「あ、今日は私の当番だったのに、ありがと!」
「道具を作って貰ってたんだから、気にしないで良いわよ。さっ、冷めないうちに食べちゃいましょ♪」
今日作った野菜スープは、コンソメスープもどき。
入れた具材は、どれも前世には存在していなかったものばかりだけど、ジャガイモっぽい何かや、人参っぽい何か、玉ねぎっぽい何かに、干し肉っぽい何か……じゃなくて、干し肉は干し肉だったわね。
まぁそれらを入れて、この世界のブイヨンに似た調味料で味を調えて作ったスープです。
「このスープ美味しい♪ これっておかわりある?」
「えぇ、まだもう一杯ずつぐらいは残ってるわ」
料理は嫌いってわけでもないのだけど、そこまで得意でもない。
だから私の作る料理は、味も見た目もそこそこって感じなのだけど、レミオロッコはいつも本当に美味しそうに食べてくれるから、ちょっと嬉しい。
まぁ調子に乗るから言わないけどね!
「「ご馳走様でした」」
二人ともお腹も膨れたし、食後にハーブティーでゆっくりもしたので、そろそろフェルトマスコット作り開始です♪
「それで、どんな人形を作るの? やっぱり動物のお人形にするの?」
食事中、レミオロッコに聞いた所、この世界では動物をモチーフにしたカワイイ人形を見た事がないと言っていたので、それで「やっぱり動物」と言ったのでしょう。
そして、私は晩御飯を食べながらも、もう作る物は決めてあります。
「そうよ! モチーフは羊! カワイイ羊のマスコットよ!」
ほんと言うと、ちょっとピンクのひよこも捨てがたかったのだけど、普通の羊毛でも作るつもりだからね。そうなると当然色も白くなるし、白いひよこって、もうそれひよこじゃないし。
「うん。まぁ予想通りね。キュッテなら絶対最初は羊だと思った」
くっ、何か考えを読まれたみたいでくやしい……レミオロッコのくせに!
「レミオロッコのくせに!」
「だから、心の声が漏れてるわよ!!」
あら、ワタクシトシタコトガハシタナイ。
「じゃぁ、まずはフェルト羊毛を握りこぶし一個ぶんぐらい手に取って」
「あなたのそのスルー力って凄いわよね……」
でも、文句を言いながらも指示通りにふわふわの羊毛を手に取るレミオロッコ。
ちなみにこのフェルト羊毛は、さっきハーブティーを飲みながら、レミオロッコが失敗した毛糸を櫛で梳いてほぐして作ったものです。
「うん。だいたいそれくらいでいいわ。それを数本の束にわけて、そのうちの一つをまずくるくる巻いて……」
「こうかしら?」
「そうね。そんな感じ。それを軽く針で何度かさすとほどけなくなるから、刺してみて」
「へぇ~、不思議なものね。こうやって刺すだけで……」
それから、残りの束を巻いては何度か刺し、丸い塊になるまで繰り返しました。
「こんな感じかな? 大きな塊にはなったけど、この後は?」
「うん。良い感じよ。その後は……ひたすら刺します! サシテ、さして、刺しまくるの! ふははは」
「う、うん。わかったけど、キュッテ、ちょっとそれ怖いから……」
失礼ね。こうやって作るんだから仕方ないじゃない。
まぁ、ちょっと調子乗ったけど。
「わ。だんだん固くなってきたわ!」
「でしょ? それをたまに羊っぽく楕円形に手で整えてみて」
久しぶりにやるフェルトマスコット作りはとても楽しくて、そこから暫く、二人で夢中で作りました。
「で、できた……す、すっごく可愛いわね!!」
レミオロッコが完成した小さな羊を見て喜んでいます。
「いい感じで出来たわね♪」
今回作ったのは、手のひらサイズの羊のフェルトマスコット。
白い普通の羊毛だけで作ったのですが、目に小さなボタンを使い、レミオロッコに木を削って作って貰った小さな巻角を付けてあり、かなり良い感じの仕上がりになっています。
「たしかにこれは、普通の人形とは違うわね」
「でしょ!! これよ! これがカワイイってやつなのよ!! この世界にはこういうカワイイが不足しているのよ!!」
「う、うん……わかったわ。わかったから、机からおりましょうか……?」
あら? いつの間にか机の上で、拳を天に突き上げてしまっていたわ。
「えっと、それでどうかしら? これなら結構簡単に作れるし、手頃な値段で売ったら皆欲しがらない? レミオロッコはどう思う?」
私は前世の記憶が蘇ったことで、純粋にこの世界の一般的な人の感覚がわからなくなってしまっています。
だから、レミオロッコに恐る恐る聞いてみました。
「えぇ、安心して! これ、ぜったい女の子なら皆欲しがるわ!!」
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