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【第29話:恐るるに足らず】

 五匹の羊がピンク色の毛を持つ羊へと進化してから数日。


 私たちは朝の牧場の仕事を終えると、秘密基地へと移動し、ようやくぬいぐるみ作成(商品開発)を開始しました。


 せっかくピンクの羊毛を手に入れたので、元々の白の羊毛と合わせて何かカワイイものを作りたいですね。


「キュッテ~、干してた毛糸取って来たわよ~」


「ありがとう! うん! 良い感じね!!」


 羊毛を毛糸にする作業は、以前祖父が生きていた時に、何度かやって習いました。

 しかし、毛糸に加工してから売った方が儲かるのですが、なにせ幼い私と祖父の二人だけだったので、普段は羊毛をそのまま売っていました。

 私一人になってからは尚更です。


 でも、今は違います!


 まぁ、今も二人には違いないのですが、私が『牧羊』のランクアップにより多くの能力を得たことや、ケルベロス(優秀な牧羊犬)のお陰で、通常の牧場の仕事は随分と余裕が出来ました。


 そして、この羊毛を毛糸に加工する上で大活躍したのがレミオロッコです。

 なにせレミオロッコは、私がちょっとアイデアを出すだけで、様々な物をポンポンと作ってくれます。


 本当にもうポンポンと……ドワーフ怖い。


 今まで羊毛を毛糸にするには、毛質を見て大まかに選別し、お湯と米ぬか……はないので、この世界特有の植物の粉末で丁寧に洗い、めぼしいごみを一つずつ取って、手で絞って脱水。数日天日干しにしたのち、櫛でほぐし、使い勝手の悪い大きな紡ぎ車で毛糸を作っていました。そして、最後にもう一度、洗って干します。


 しかし、この面倒な作業をレミオロッコと色々と試行錯誤し……かなりの自動化に成功したのです!!


 まず前段階として、羊毛の質が私の能力によってほぼ一定となったことで、選別作業がいらなくなりました。


 そして、手洗いしていた作業は、羊毛を放り込むと自動でかき回して洗ってくれる大きな桶を作りました。ゴミ取りネット付で、しかも、そのまま脱水までしてくれます!


 まぁ要は洗濯機ですね。

 ちなみに、羊毛向けに調整しており、動力は街で買った魔石を使ったモーターもどきを使っています。


 次の天日干しの行程は……なんと、羊たちに手伝って貰っています!


 私、ある程度羊と意思疎通できるようになったじゃないですか~?

 レミオロッコと二人でゴザに洗った羊毛を並べている時に羊たちが珍しそうに寄ってきてたんですよ~。

 だから、冗談で「暇なら手伝って~」て言ったら本当に手伝ってくれて……。


 いや~、なんでも言ってみるものですね!


 そして次の毛糸をほぐす作業、カーディングって言うんですけど、カーディングブラシ……まぁ櫛ですね。その代わりに、表面に針金を植えた大小のローラーを組み合わせて手で回すだけで毛の向きを整えられる、前世でドラムカーダーとか言われていた機械を作って貰いました。


 羊毛をセットする際に、多少櫛で整えてあげる必要はありますが、この機械により作業がかなり楽になりました。


 本当は、質をあげるには前世では確かコーダ機とかいうのもあったと記憶しているのですが、羊毛の質の違いか、このドラムカーダーだけで十分綺麗に整うようなので、今回コーダ機を作るのは見送りました。


 ちなみに、このドラムカーダーを使えば、白い普通の羊毛とピンクの羊毛を混ぜて色を調整することも出来るので、淡いピンクの毛糸なども作れそうです♪


 そして最後の行程で使う、紡ぎ車も魔道具化しました。


 大きな糸車ではなく、小さな巻き取り用の芯の周りに、羽のような板を取り付けたフライヤーと呼ばれる部品を、モーターもどきの魔道具で回るように作って貰いました。

 ちゃんと足踏みペダルの踏み加減で回る速度が変わります!


「じゃぁ、まずは普通に白い毛糸から作るわよ!」


 ◆


 うん。レミオロッコがモノづくり以外ではポンコツ気味だというのがわかりました。ドワーフ恐るるに足らず。


「む、難しい……何度やっても凸凹な糸になる……」


「どうして、道具作るのはあんなに器用にこなすのに、毛糸づくりはそんなに下手なのよ……」


 まぁレミオロッコが作ってくれた道具のお陰で、私一人でも十分な量の毛糸は出来たから、今はこれで良しとしておきましょう。


「まぁいいわ。とりあえず、これだけ作れば色々試せるでしょ」


 私の作った毛糸だけでも、二、三日は色々試す分はあるでしょう。


「ねぇ、この失敗した毛糸……どうすればいい?」


 練習も兼ねてと思って結構な量を作らせたので、失敗した毛糸もかなりの量があります。

 ちょっと捨てるのは勿体ないですね。


「あっ! そうだわ! 櫛で梳いてフェルトに戻して、フェルトマスコットを作りましょうか♪」


 本格的な『ぬいぐるみ』を作るとなると、やはり一個作るだけでもかなりの手間暇がかかり、そのため、値段も高めに設定しなければいけません。


 でも小さなフェルトマスコットなら、材料代も安く済みますし、簡単に作れるので安く販売する事が出来ます。


 つまり……この世界にカワイイを普及させるのにはピッタリな商品じゃないですか!


「ふぇるとますこっと?」


 首を傾げて興味津々と言った感じのレミオロッコはやっぱりカワイイわね。

 人見知りから来るとは言え、あの初対面の時の口の悪さが嘘のようです。


「ねぇ? ふぇるとますこっとって何なのよ? 気になるじゃない!」


「えっと、フェルトマスコットは……どう説明すればいいのかしら? 布とか使わずにフェルト羊毛を使って作る小さなお人形?」


「へぇ~? でも、前に私に教えてくれた『ぬいぐるみ』とは違うの?」


「『ぬいぐるみ』っぽいけど、厳密には違うのよね。作り方が全然違うの。フェルトを反しの付いた針でぷすぷす刺しまくって形を整えて作るのよ」


「え? 針で刺すだけで人形ができる? どういうこと?」


「ん~? 簡単だし、一緒にやってみましょうか?」


 実は前世でまだ高校生の頃、毎週送られてくる某学習本で作った事があるのよね。

 お小遣い少なくて、途中でやめちゃったけど……あれ、案外高くて……。


「へぇ~♪ 面白そう! やってみましょうよ!」


 レミオロッコも乗り気ですね♪


「じゃぁ、さっそく作ってね♪ 返し付きの針♪」


「そ、そうね……そうなるわよね」


 レミオロッコは上がったテンションの行き場に困りながらも、私の話から、返し付きの針を何本か作ってくれたのでした。


************************

え?作り方の描写があまい?(;・∀・)

そ、それは……そう!異世界だから簡単なのですよ!

だいたいなんでも異世界のせいなんです!!(暴論)

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