【第23話:白い何か】
商業ギルドに着いた私たちは、商談用の個室を借りに、まずは私一人で申請窓口に向かいます。
今回はコーギーモードもギルドの中に連れてきていますが、今はレミオロッコに抱っこして貰って入口付近で一緒に待ってもらっているので、向かうのは私一人というわけです。
「む……ちょっと待たないといけないかもしれないわね」
申請窓口に二人ほど並んでいる様子なので、利用状況次第では、結構待たないといけないかもしれません。
商談用の個室の数は結構多いので、そんなに待つこともないと思っていたのですが、少し時間を取られそうですね。
個室の利用なんて初めてなので、ちょっと考えが甘かったと反省です。
そして、列に並ぶこと一〇分ほど。
ようやく私の番が回ってきました。
「こんにちは。まずはギルドカードの提示をお願いね」
「あ、はい。ちょっと待ってください」
そうよね。初めて利用する窓口なんだから、当然ギルドカードの提示が必要よね。
並んでいる間に用意しておけば良かったのですが、すっかり忘れていました。
「すみません。どうぞ」
対応してくれたのは、ほんわかした雰囲気のお姉さん。
優しそうな人で良かったと内心ちょっとホッとしつつ、話を進めます。
「確認しました。キュッテさんですね。今日は商談スペースの利用申請で間違いありませんか?」
「はい。個室の方をお借りしたいのですが、今って待ち時間はどれぐらいでしょうか?」
私がそう尋ねると、お姉さんは慣れた手つきで手元の書類をパラパラとめくり、暫くしてから答えてくれました。
「普通の個室は三〇分以上は待たないといけないかな。二人用の部屋ならちょうど運良く空いた所なので、すぐに手続き出来るけど、どうする?」
既に一〇分ほどかかっているのに、さらに三〇分以上待っていては、もうそれは電撃でもなんでもありません。
私は迷うことなく二人用の部屋でと即答したのでした。
◆
うぅん……どうしてこうなったのかしら……。
「ねぇ、キュッテ……ここ、ちょっと狭すぎない?」
「狭い、わね……でも、他は三〇分以上待たないといけないって言われたから、仕方ないじゃない」
「それにしても、限度ってものがない?」
今、私とレミオロッコ、フィナンシェのいる部屋は、体の大きな人なら一人でも窮屈そうな、二階へと続く階段の下に設けられた物置です。
たぶん私たちじゃなかったら、天井や壁に頭をぶつけてるわね……。
受付のお姉さん、優しそうな顔してやってくれたわ。
これ、絶対誰も使ってなかったでしょ? 何が「ちょうど運良く」よ!
しかも、他の部屋と値段変わらないみたいだし……。
もう優しそうな見た目に騙されたりしないんだから!
「ちょっとハメられたのよ……。それより、素材買い取りの手続き頼むわよ?」
「へ、へ~? し、しっかり者のキュッテが珍しいわね? うん。珍しい!」
「……レミオロッコ? 私との話を長引かせて、手続き行くのを先延ばしにしようとしてない?」
昨日も一人でって説得するの大変だったのだけど、直前でまたごねるとか、本当に人見知りよね。
「わ、わかってるわよ……そ、それじゃぁ行ってくるから!」
「頑張ってね」
本当に応援してるんだから、頑張って。
私も前世では、プライベートではかなりの人見知りだったから、少し気持ちがわかるのよね……。
まぁ私の場合は、お仕事モードに切り替えると全然平気だったりしたんだけど。
「さて。それじゃぁ私たちも頑張ろうか?」
私は足元のフィナンシェに目を向けてそう語り掛けると、
「「がぅ!」」
と嬉しそうに一吠えして、こちらを見上げてくれた。
やっぱりフィナンシェカワイイヨフィナンシェ……。
ちなみに、この姿でもブレス一吹きでビッグホーンの群れを全滅させたことには全力で目を背けます。
「じゃぁ、さっそく送還するけど、準備はいい?」
「「がぅ!」」
そして、今回は私の方もぬかりはありません。
フィナンシェのホーム設定は、新しく建てた秘密基地になっていますから、家を破壊される心配も誰かに見られる心配もありませんし、今日売る分の羊毛も既に袋詰めして用意してあるので、それほど時間はかからないでしょう。
「それじゃぁ……送還!」
強く心の中で意識すれば「送還」と口に出す必要はないのだけれど、逆に言えばかなり強く意識しないといけないので、言葉を発して能力を使用した方がずっと楽で簡単です。
淡い光が一瞬でフィナンシェの全身を包み込んだかと思うと、次の瞬間にはその姿はこの部屋から消えていました。
「袋詰めしてまとめて置いてあるし、一分ほどで呼び戻せば良いかしら?」
こちらへ召喚する際、いつ荷物を咥えたのかなど、フィナンシェの状況がわからないため、その点はちょっと注意しないといけません。
それから体感で一分ほど、今日ギルドを出た後の予定を思い返すなどして時間を潰します。
「そろそろね……召喚!」
はい~! ここで、またヤツがやってくれました~!!
召喚による淡い光が収まったその時でした。
何か白い、コーギーモードよりも明らかに大きな白い何かが、空中に現れたかと思うと、私の上に降ってきたのです。
カシワが!
「ぶぇぇぇ!?」
コレ、ワタシ、潰サレル。
「ひぃっ!?」
狭い部屋で逃げる事も出来ず、目を瞑ることしか出来なかったのですが……。
「……あれ? カシワ、降ってこないわね?」
おそるおそる目を開けてみると、
「「がぅ?」」
「ぶぇっ!?」
うちの優秀な牧羊犬が、魔力の膜のようなもので、カシワを空中で受け止めてくれていました。
「……フィナンシェ、白い何か、牧場にポイしてきなさい!!」










