【第22話:電撃作戦】
「さぁ、次はモノづくりよ!」
私はそう言って拳を握り締めたのだけど……。
「モノづくりはいいんだけど、お金がもう無いって言ってなかった?」
「う……忘れていたわ……」
現実逃避とも言います。
「そんな大切なこと忘れないでよ!?」
あれから秘密基地用に資材を買い足したり、レミオロッコに給金を払ったりしたので、もうちょっとで貯めていたお金が底をつきそうなのよね。
本当はお金になる羊毛はいくらでもとれるのだけれど、副ギルド長に買い叩かれるのが悔しくて、取り引きしてないのよね……。
「背に腹は代えられないわね……」
「なにそれ?」
「……目的のためにちょっとぐらいの嫌な事は我慢するしかないとか、なんか、そんな感じよ。たぶん」
「たぶんって何よ……。まぁどの道、その副ギルド長の邪魔が入るのなら選択肢はないわけだし、それにその人、ずっと羊毛を売らないでいると、更に嫌がらせをしてくるんじゃない?」
え? それは考えていなかったわ……。
確かに言われてみれば、お金になる羊がすぐ手の届くところにあるのに、放っておいてくれるほど、お人好しじゃなさそうよね。
「そうなると、ぬいぐるみなどが出来るまでは、ちょっとぐらい羊毛を売って甘い汁を吸わせておいた方が良いのかもね。でも……見てなさいよ。絶対にぎゃふんって言わせてあげるんだから。ふふふ、ふふふふふふ……」
「きゅ、キュッテ? なんか目が怖いわよ……」
「目が怖いとか失礼ですね。怖いのは目だけでは無いですよ?」
この世界にカワイイを布教する邪魔をするようなら、容赦しないですからね!
「ぇぇぇ……」
レミオロッコが若干ひいてる気がするけど、この方針は変えるつもりはないわ!
「でもまぁ、実際に何かされたわけじゃないんですし、まずは街に行って羊毛を売って、商品開発の軍資金を手に入れてくるわ」
「そうね。今から邪魔が入るかもとか気にしていても始まらないわね」
用心は怠らないようにしておいた方が良いでしょうけど、今はまず商品を作る事が先決だわ。
「そうだ。街には一緒に行くわよね? 何が必要か相談しつつ買い物しなきゃいけないし」
「そのつもりよ。必要そうな物をここでリストアップしても良いけど、物の良し悪しは私じゃないとわからないでしょ?」
「じゃぁ、昼食をとったらすぐに出るから、そのつもりでお願いね」
その後、私たちは昼食を済ませると、そのままケルベロスモードに乗って街へと向かったのでした。
◆
クーヘンの街まで一時間足らずで到着した私たちは、コーギーモードと一緒に大通りをのんびりと歩いていました。
今日は午後から出掛けたのであまり時間がないですし、本当なら私が商業ギルドに羊毛を売りに行って、レミオロッコに買い出しに行ってもらうのが効率が良いのですが、手元にお金が無いのでそういう事もできません。
「まぁお金があっても、私一人で買い物なんて出来ないけどね!」
そうでした……。
レミオロッコは極度の人見知りで、つい恫喝しちゃうんだったわね……。
「なんで自慢げなのよ……。最近、私とも普通に話せるようになったから、すっかり忘れていたわ」
「し、仕方ないじゃない! 直したくても直せないんだから!」
でも、ここで甘やかして私が全部やっていたら、レミオロッコも成長しないわよね。
ちょっとずつでも、何か任せてみましょうか。ふっふっふ。
「と、とりあえずキュッテが、何か悪だくみしてそうなのはわかったわ……」
最近レミオロッコに考えを見抜かれることが増えてきた気がします……。
まぁ見抜かれようが文句言われようが、雇い主の強権発動させてでも、人見知りを克服させる練習はさせますけど。
「まぁ今は特訓の話は置いておいて、今日は先に商業ギルドで羊毛を売らないとお金もないわけだし、さっさと嫌な事は終わらせてしまいましょ」
かなり安く買いたたかれるので、本当は売りたくないのだけど仕方ないわ。
「え? 今、特訓の話なんてしてた? な、何を企んでいるのよ……」
頬を引き攣らせているレミオロッコはカワイイわね。なにかに目覚めそうだわ。
「ちょっと、何!? その微笑みはなんなのよぉ!!」
「気にしないで。それより、早く商業ギルドに行くわよ」
後ろでレミオロッコが何かわめいていますが、そろそろふざけるのはこの辺にして、取り引きをする段取りを確認しておきましょう。
「とりあえず、商業ギルドでの段取りを確認するわよ」
「え? う、うん。わかったわ。まず商談用の個室を借りるのよね?」
「そう。そこでコーギーモードを使って羊毛を運搬するわ」
まだ送還と召喚コンボによる荷運びをあまり知られたくないので、部屋を借りて、そこで羊毛を運びこむことにしました。
商談用の個室なら、防音の加工がされているみたいだし、コーギーモードでも、回数をこなせば今日売るための十分な羊毛を運び込めます。
いきなり大荷物になるので、若干怪しまれるかもしれないけど、魔道具の中には、魔法鞄と呼ばれる異世界定番の収納容量を拡張した鞄が存在するらしいので、それを使ったと言い張るつもりです。
まぁ商人なら容量の大小はあれど、魔法鞄はそれなりに持っている人がいるようなので、それ以前に怪しまれないと踏んでいますが。
そして、私とコーギーモードで羊毛を運んでいる間に、レミオロッコには窓口で買い取りの書類を貰って来てもらいます。
先日は待つことなく窓口で手続き出来ましたが、普通は順番が回ってくるまで二、三〇分かかかる事が多いからです。
最後に、レミオロッコが書類を貰ったらすぐに個室に来てもらい、そのまま裏の買い取り施設に羊毛を運び、買い取って貰えばミッション終了です。
レミオロッコがちゃんと買い取り書類をスムーズに貰ってこれるかってことがちょっと心配ですが、これは昨日のうちに「頑張ってみる」との言葉を聞いているので、私は個室で信じて待つだけです。
「とりあえず一番優先することは、副ギルド長に見つからないことだからね」
ここまで警戒する必要はないのかもしれませんが、こっちは一〇歳と一二歳の女の子二人だけなので、用心するに越したことはありません。
暗い噂のある副ギルド長に気付かれる前に、羊毛を速攻で売って商業ギルドを退散する電撃作戦です!
って、そんな大袈裟なものではないですけど。
その辺りの手順の確認を終えた所で、ちょうど商業ギルドに着いたのでした。
********************************
今日も複数回更新しますので、次の更新をお楽しみにお待ち下さい☆
あと、知っていますか?
小説家になろう様の「レビュー」の名称が「イチオシレビュー」に
変更になったそうですよ。
いや~、イチオシレビューですか。そうですか。へぇ~(´ー`)
という事で、レビューによる応援もお待ちしておりまーす!(*ノωノ)
********************************