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【第20話:カワイイ不足】

「ま、待って~! 行かないで~! 私のふわふわパ~ン!!」


「なに寝ぼけてるのよ……」


 あれ? ぷち歓迎会も終わり、いつの間にかうとうと寝てしまっていたようね……。

 でも、ふわふわパンは、そのうち絶対自力で作ってみせるんだから!


 それにしても、この数日、色々な事が立て続けに起きて疲れているとは言え、いつの間にか寝てしまっている事が多い気がするわね?


 さっきも、何かレミオロッコと話していた最中だったような……。


「急にうとうとしだして寝てしまったから驚いたわよ。キュッテ、ちゃんと寝てるの? ……でも、お肌つるっつるのすべっすべみたいだし、とても寝不足には見えないわね……」


 そして、うらやましいと私の頬っぺたを指でつついてきた。


「ちょっと~、指で頬っぺたつつかないでよ。でも、疲れてはいると思うんだけど、そんな眠かったわけでもないし、おかしいわね? さっき何の話してたかしら?」


「ん~? さっきはふわもこ希少種の羊が何匹いるのかって私が聞いて、そしたらあなたがちょっと待ってって言ったと思ったら、暫くしたらいきなり寝息が聞こえてきた感じかな?」


「え? そんな会話の途中で急に? ……あ……」


 ちょっと待って……何だか凄く馬鹿々々しい事に思い当たったのだけれど……。


「はは、はははは。ま、まさかね~」


 苦笑を浮かべつつ、私は内面に意識を向ける。


 一つ、羊の数を数える相手を任意に眠らせる能力。


 えぇぇぇぇ!? なんなのよ!? その能力!!

 まったく……この世界は、なんてくだらない能力用意してくれてるのよ……。


「どうしたの? 何かわかったの?」


「う、うん。どうやら私の能力のせいだったみたい……」


 あ、でもこの能力、対象になる人を絞ったり、自由にオンオフ出来るわね。

 オンオフ出来るなら、私ちょっと寝つきが悪い方だから、それなりに使えるかも?


「へ? 能力? 能力で寝ちゃってたの? 自分の能力で?」


「そうみたい。ねぇ、レミオロッコ。ちょっと思い出しながら、希少種(ふわもこ)が何匹いたか、数えてみてよ。あっ、出来れば声に出して数えてみて」


 私がそう言うと、レミオロッコは若干訝し気な目を私に向けながらも、羊の数を数え始めました。


「羊が一匹、羊が二匹、羊が三び……き……」


「え!? もう寝た!?」


 レミオロッコはたった三匹数えただけで、突然すぴーすぴーと寝息を立てて、気持ちよさそうに寝てしまいました。


「まさか、ここまで効果が高いとは思わなかったわ……これ、気を付けないと、外でうっかり数えてしまうと、凄い危ないんじゃ……」


 今まで私が寝てしまった時は、希少種(ふわもこ)に抱きついていたり、椅子に座っていたりと、運良く危なくない状況だったから良かったけど、本当に危険ね。


「レミオロッコ、ちょっと起きて。ねぇ、ちょっと? ねぇ! 起きてって!」


 え? なにこれ? 不味くない? 全然起きないんですけど……。

 私は普通に起きれてた気がするのだけど、もしかして他の人だと効果が高いのかも?


 その後、レミオロッコに近づき、身体を揺すってみたのだけど、それでも全く起きる気配がありませんでした。


 こわっ!? なによこれ!?

 ここまで効果が高かったら、もう睡眠魔法じゃない!


「あ、そうだわ! 能力の対象にレミオロッコを指定して、効果をオフにすればもしかして……」


 そして、もう一度レミオロッコの身体を揺すってみると、今度はあっさりと目を覚ましました。


「ん、んん~……あれ? 私、いったい……?」


「オフにしたら、凄く簡単に起きたわね」


 ちょっと寝ぼけているレミオロッコに状況を説明してあげました。


「あなたの能力、一度、詳しく調べた方が良いかもね……。とりあえずその能力、私はずっとオフにしておいて! 数えたらダメって言われると、ついいつの間にか数えてしまっている自信があるわ……」


 実際に見て数えるだけでなく、思い出しながら数えるだけでも効果を発揮するので、能力でオフにしておかないと、私もいつの間にか数えてしまって寝てしまいそうです。


「わかってるわよ。もうオフにしてあるから安心して。それにしても、何かちょっと疲れちゃったわね……。本当は軽く明日の計画を立ててから寝ようと思ってたんだけど、明日でも良いかしら?」


「かまわないわよ。一度しっかり寝て、頭の中も整理した方が良さそうだし」


 その後、レミオロッコに部屋を割り当て、この日は少し早めに就寝したのでした。


 ◆


 翌朝、まだ薄暗いうちに目が覚めてしまった私は、まどろみの中、さっきまで見ていた前世の夢を思い出していました。


「カワイイものに囲まれて過ごすの……幸せだったな~」


 私は周りから、何故かクールビューティ、出来る女、キャリアウーマンといったイメージを持たれており、実はカワイイものが大好きないわゆる乙女趣味だとは、誰にも言い出せませんでした。


 部屋はピンクで統一していたし、とある羊のキャラが大好きだったので、部屋の中はそのグッズで溢れていましたが、部屋には誰も招待したことがないので、知っているのは動画を見てくれていたフォロワーさんだけです。


 ちなみに、顔出しはしていませんよ?


「あと、ずっと犬を飼うのが夢だったわね」


 実家も一人暮らしの家も、どちらもペット禁止のマンション暮らしだったので、子供の頃からずっと犬を飼うのが夢でした。


「そう考えると、今世は、たくさんのもふもふもこもこな羊に囲まれて、犬も飼えて……」


 うん。フィナンシェは誰が何と言おうと犬よ。立派な牧羊犬よ!


「だけど……カワイイもの……少ないわね」


 ようやくハッキリした意識で、あらためて部屋の中を見渡します。

 うちが貧乏だったのもあると思うけど、でも、街に行ってもカワイイものをあまり見かけた記憶がありません。


 やっぱり、そうだわ……。


「この世界にはカワイイが不足しているわ!」


******************

羊飼い転生ももう20話になりました♪

お話の区切りがつくところまでは

毎日更新を続けて行くつもりですので、

どうぞ応援よろしくお願いします!

******************

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