【第19話:協力】
レミオロッコに案内されるままに、修理した場所の説明を受けて回りました。
今、心の中で「ドワーフこわい」「ドワーフ凄すぎ」「ドワーフ化物」と繰り返しています。
「ドワーフ化物」
たまに口に出ます。
「あなたに言われたくないわ!」
「いや、何をどうやったら、二時間で半壊していた家を全部修理できるのよ?」
ふと部屋の隅を見れば、コーギーモード専用のドッグベッドまで用意されていて、気持ちよさそうに寝ています。
他にも、元々の家に無かったものが色々と作られているのだから、修理どころの話ではありません。
「なんてことでしょう。匠はオリジナルの家具や小物まで用意しているではありませんか」
ありがとうございます。もう完全にリフォームです。
「あ、それは木材の余りとか使って作ったんだけど、いらなかったら捨てて良いわよ?」
「いらないなんてとんでもない。嬉しいのだけど、ただただ驚いているのよ」
「ふん。ずっと私が驚かされっぱなしだったから、これでおあいこね!」
たしかに街ではちょっと調子に乗って驚かせまくったけど、これはホントにやられたわね。
「まぁそう言う事なら仕方ないわね。それにしても、レミオロッコのスキル『創作』って、実は物凄いレアなスキルだったりする?」
私は他のスキルについては全然詳しくないのだけど、それでも全く聞いた事のないスキルだし、ここまで凄いことが出来るスキルとなると、普通なスキルとは思えません。
「ん~、英雄系のスキルを除けばかなり珍しいスキルかな? 十年に一度ぐらいの頻度でドワーフ族にだけ贈られるギフトだから」
「きた! 種族専用スキル! それで、どんな能力なの!?」
種族専用スキルな上に一〇年に一度のレア度とか、いったいどんな能力なのかしら?
「ん~、とりあえずイメージさえ固まれば、どんなものでもその創り方が即座に理解できて、それと同時にその技術も習得できるようになるって言うのが基本の能力ね。あとは、効率の良い作り方もわかるわ」
「と、とんでもない能力じゃない……」
創り方が理解できるっていう所までは、ぎりぎり想像の範囲内だったけれど、それと同時にその技術も習得できて、しかも効率の良い作り方までわかるって、もう完全にチートじゃない……。
あれ? でも、こんなとんでもないスキルを持っているのに、ちょっと人見知りで口や態度が悪いぐらいで奉公先から首にされたりするものかしら?
「えっと……その、でもこの能力、大きな制約があって……」
「そうなの? 大きな制約って……まさかっ!? 自分の命を削ってとか!?」
「削らないわよ!? じゃぁ、なに? 私は今、命を削って屋根を修理したってこと?」
それはそうよね。そんな大きな代償を支払って屋根の修理とか、全く割に合わないわよね……。
「それなら、いったいどんな制約なの?」
「実はその……私の気が乗らないと、全く能力が発動しないのよ。それどころか、スキルが邪魔までしてくるの。それに叔父さんが言ってたから聞いていたと思うけど、既存の物を真似して作ろうとすると、同じくスキルによる妨害が発生するから、お店とかで指定された物を作ったりすることが出来ないのよ……」
普通の店では、年季奉公で雇った者に、自由にモノ創りをしていいなんて言わないでしょう。
そしてレミオロッコは、これと同じ物を作れとか指示されても、制約のせいで上手く作る事が出来なかったというわけね。
「なるほどね~。確かにそんな制約があると、普通の店ではデメリットの方が上回りそうね」
「うぅ……幻滅したでしょ。その、この小物とか創ったのも、そういう制約を上手く回避するために生み出した裏技みたいなものなんだけど、普通の店でこんなことすると大目玉喰らっちゃうのよね……」
「ん? それは、修理はあまり気乗りしないけど、修理する事で材木の切れ端とか余るから、それを使って好きなモノが創れる! って感じで能力を上手く引き出したってことかしら?」
「よ、よくわかったわね……その通りよ……」
え? なんか縮こまって申し訳なさそうにしているけど……。
「それって、上手く自分の能力をコントロールしているって事だし、凄いじゃない!」
「へ?」
「へ? じゃないわよ! 自分のスキルを上手く使いこなしてるって事じゃない! もっと胸を張って自慢して良いと思うけど?」
「そ、そんな風に言われたことなんて……はじめて……」
ん? 急に顔を真っ赤っかにして、何かぼそぼそ言っているいるけど、どうしたのかしら?
「それに、新しく何か創り出すのには最高のスキルじゃない! 私には何かを創るのなんて無理だからと諦めてたんだけど、実は私、いろんな新しいモノのアイデアがいっぱいあるのよ。レミオロッコさえ良ければ協力してくれないかしら?」
前世にあった色々な物を再現できるんじゃないかと、何だかワクワクしてきたわ!
「えぇ! も、もちろん協力させて貰うわよ! 何かキュッテとなら、いろいろと面白いものが創り出せそうな気がするわ!」
「私もよ! 牧場運営だけじゃなくて、これから協力して色々創っていきましょう!」
こうして私とレミオロッコは、力を合わせて、色々なモノを創っていくことを約束したのでした。
「あ、そうだわ。今日ね。レミオロッコのぷち歓迎会にしようと思ってるのよ」
「え? そうなの? あ、ありがと……」
「それでね。私、料理についても凄い色々アイデアがあるのよ! まずは、二人ですっごい美味しいもの作ろうよ!」
今手元にある食材だと、あまり大したものは作れないと思うけど、いくつかの前世の料理を再現できないかしら?
そうだわ! まずはいつもの固いパンじゃなくて、ふわふわのパンとか良いわね!
「……無理……」
「え?」
「私の能力、料理には全く使えないのよ……」
わ、私のふわふわパン~~!!
全私が泣いた。
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ふわふわなパン美味しいよね
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