【第14話:レミオロッコ】
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ブックマークしないとシ……いいえ、なんでもありません(;´∀`)
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気まずそうにしている顔見知りのおじさんから買取に関する書類を受け取った私は、とりあえず今回の分だけは副ギルド長の言い値で売る事にしました。
心情的には一切売りたくないのですが、家の修理代が……。
結局、持っていた羊毛だけだと家の修理代には程遠いので、コーギーモードの送還&召喚コンボでいくらか纏まった量の羊毛を持ってきてもらい売り払いました。
「見てなさいよ。絶対に目にもの見せてあげるんだから!」
商業ギルドを後にした私は、元来た道を戻りながら、これからどうするのかを考えます。
「「がぅ!」」
コーギーモードも応援してくれているようね。たぶん。
普通に考えれば、商業ギルド以外に売ればいいのですが、副ギルド長が言ったように、この街で羊毛を買い取ってくれるところはきっとないはずです。
だって、勝手に素材を買い取るという事は、商業ギルドの意向を無視することになるから。
だから、商業ギルド以外で売ろうと思うと、それは他の街に行くしかありません。
でも私の牧場からは、この街以外だとケルベロスモードに乗って走ったとしても、数日はかかるはずです。
でも、牧場は私一人でやっているので、何日も空ける事はできません。
「あ……しまったわ。あんまり腹立たしいから、人を雇うこと相談するの、すっかり忘れていたわ」
でも、そうだわ。人さえ雇ってしまえば、隣街に売りに行く事も……あれ? 私が牧場を何日も離れて『牧羊』スキルの能力って効果を継続して発揮してくれるのかしら?
「駄目な気がするわね……かと言って、裏技なしで隣町に羊毛を売ろうと思ったら、この街で卸すのと儲けがあまり変わらない気が……」
私がケルベロスモードに乗って移動し、荷物も送還、召喚コンボで運べば、往復でも数日で帰ってこれますし、かなり儲けも出ると思います。
ですが、これを普通に人を雇って行えば、馬車を使って荷物を運ばなければいけないですし、片道だけで数日はかかるはずです。
道中も一人では危険なので、護衛を雇うとかしないといけないでしょうし、そう考えると儲けがあまり期待できません。
そもそも人を雇うにしても、あの副ギルド長の事だから、なにか邪魔をしてきそうな気がするわね……。
「ぐぬぬぬ。おのれ、副ギルド長め……」
そう呟きながら歩いていると、何だか聞き覚えのある声に気付きました。
「あ、さっきのドワーフたちだわ」
商業ギルドに向かう途中で出会ったドワーフたちです。
「レミオロッコ、どうするのだ? もう儂から紹介できる奉公先は無いぞ?」
「うぅ……ごめんなさい」
何となく気になり、少し離れたところから様子を見ていると、ドワーフの女の子……たしかレミオロッコと言ったかしら? その子が、叔父さんに何か怒られているようです。
「お前が本当は心根の優しい子だというのは儂は良く知っておる」
え? あの柄の悪い子が優しいの?
いいえ、見た目で判断するのは良くないとは思うのだけれど、初対面のあの感じを経験している私からすると、本当は優しい子だと言われても、にわかには信じられないわね。
「ぅぅ……どうしても人見知りなので、怖くてつい恫喝してしまうの」
「なんでやねん! なんで、怖くてつい『恫喝』するねん!」
あっ……思わず、ツッコミを入れてしまったわ……。
「なななな!? なんだ! お前は! シメるぞ!?」
おうふ。さっそく恫喝頂きました~。
「ん? お主は先ほどの嬢ちゃんか?」
「あ、はい。すみません。つい……」
「ついで何ツッコミいれてるんだ! あぁん!?」
いや、ついで『恫喝』してしまう、あなたにだけには言われてくないです。
「こらっ! それがいかんと言うておるのじゃ!!」
「ぎゃぁぁ!?」
あ、痛そう……。
ドワーフの叔父さんから頭にゲンコツを喰らって撃沈した。南無~。
「嬢ちゃん、ほんとにすまんな。こいつは亡くなった兄の娘なのじゃが、人見知りが激しい上に、このようにすぐ人に食って掛かる癖があってな」
「うぅぅ……」
「ドワーフ族の慣習で、一二歳になったら奉公に出して職人としての技術を磨くというものがあるのじゃが、もうさっきの店で儂の頼めるところは全滅してしまってのぉ」
「あぅぅぅ……」
なんか、レミオロッコがどんどん小さくなっていくわね……。
「しかし、どうしたものかのぉ……」
あれ? これってもしかして、副ギルド長の妨害なしで人を雇えるチャンスじゃないかしら?
ちょっと、いや、かなり口が悪い所はあるけど、叔父さんドワーフとの会話を聞く限りだと、結構普通だよね?
私とも慣れれば普通に話せるようになるのなら、意外とありなのでは?
「あの……その奉公先って、仕事の種類とか何か条件はあるのですか?」
「ん? とりあえず何かモノづくりに関する仕事で、あと、出来れば商売のイロハが学べるところと言った感じじゃのう? もしや知り合いで人を探しておる者でもおるのか!?」
何かモノづくり……家の修理に、新しく小屋の建築をお願いしたいし、それに羊毛はたっぷりあるから、服を作って貰うとかも良さそうよね。
まぁ服でなくても、何かを作るのなら素材じゃないから、直接他の商人と取引することもできるし、レミオロッコも商売のイロハが学べて一石二鳥じゃないかしら?
「知り合いと言うか、ちょうど私が牧場で人を雇いたいなぁと思っている所なのですが、建物の増改築や服作りとか興味ないですか?」
「なんと!? このレミオロッコは『創作』というスキルを持っておるので、何でも作れるぞ!」
「ちょ、ちょっと叔父さん!? 確かになんでも作れるんだけど、既に存在するモノを作るのには能力の効果が乗らないから、あまり商売の役に立たないわよ! なんか文句ある! 文句あるならシメるわよ!」
え? 文句なんてとんでもない。
もしかしてこの子、物凄い拾い物なんじゃ?