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【第10話:DIY】

 さて……私は今何をしているでしょう?


 はい。私は泣きながらDIYに精を出しています。


「わ~ん! 美味しそうなお肉に目が眩んで、馬鹿なことしちゃったよ~!」


 原因はさっき倒したビッグホーンをケルベロスモード(フィナンシェ)に咥えさせて送還したからです。


 はい。私馬鹿です。大馬鹿です。


 今回は、大きなビッグホーンを丸ごと六頭分も家の中に送還してしまったので、屋根が吹き飛んだ上に部屋の中が無茶苦茶です。

 ビッグホーンみたいな大物を運ぶ予定なんて無かったですし、何か荷物を取りにいくにしても、小さなコーギーモード(フィナンシェ)を送還するつもりだったから、つい便利な自宅の方にホームの設定を戻しちゃったのよね……。


「はぁ~……これ、修理頼んだら、今までの蓄えかなり無くなっちゃいそうね……」


 唯一の救いは、フィナンシェが気を使ってくれて、送還されるときに小さく身を丸めてくれていたのと、厩舎にビッグホーンを置きに行かずに、その場に積み上げてくれていたことかな。


 もし私の指示通りにフィナンシェが厩舎まで向かっていたら、家が完全に破壊されているとこだったわ……。


 ちなみにフィナンシェは、通常の魔物の使役じゃなくて、牧羊犬として従えているせいか、私の命令に愚直に従うのではなく、ちゃんと自分で考えて行動するみたい。


「でも……全壊が半壊になった所で、一〇歳のか弱い少女に直せるわけないじゃない!! もう、やめよ! やめやめ!」


 今日から暫く厩舎で眠る事にするわ!


 そもそも、自分で直した所で応急処置にしかならないのだから、この質の上がった羊毛を売ってお金を稼いで、大工さんにちゃんと修理して貰った方が良いわよね。


「そうと決まれば、()は急げよ! 明日、売りに行く羊毛を今日のうちにもっと刈り取って、ちょっとでも沢山お金を稼ぐのよ!」


 私は、家を修理する道具を羊毛を刈り取る魔道具に持ち替え、そのまま牧場へと向かいます。


 まぁ牧場と言っても、単に草原が広がっているところを勝手に使っているだけで柵すらないのだけど、うちは代々こんな感じみたいなので、この世界はこういうものなのじゃないかと思っています。


「良し! じゃぁ、みんな~! ご飯食べ終わった子から適当に並んで~!」


 私の呼びかけに「もう~、お腹いっぱいで気持ち良かったのに~」と若干眠そうな顔をされますが、特に文句を言う事無く、順番に並んでくれました。


 羊の行列。なんかちょっと面白い。そしてカワイイ。動画撮りたい。


 ちなみに、何故このような細かい指示が出来るのかと言うと……。


 一つ、羊とある程度の意思疎通ができるようになる能力。


 このような能力のお陰です。

 ランクアップ前までは、ただ場所を指定して、その通りに移動させることしか出来ませんでした。

 だから、細かい指示は出せませんでしたし、羊たちが何を考えているのかなども全くわかりませんでした。

 もちろん、それなりに長い間飼っているので、一般的なレベルでならわかっていましたよ?


「めぇ~」


 眠いから早く終わらせろ~とか、いらない意思疎通も出来るようになってしまいましたが……かまわず抱きつきます♪


「ふふふ♪ もふもふだ~♪ 羊カワイイよ羊♪」


 うん。羊がどう思っているかわかったからと言って、私がその通りにしてあげるとは限りませんよ?

 だってもふもふのふわっふわですよ?

 抱きつかないという選択肢はないです。


「あれ? 昨日よりさらに羊毛の質上ってない?」


 一つ、大幅に(・・・)羊毛の質が良くなる能力。

 一つ、大幅に(・・・)羊乳の質が良くなる能力。


「え? 『僅かに』から『大幅に』になってる!」


 どうりでもふもふ度とふわふわ度が大幅にパワーアップしているわけね!


 もふもふ度とふわふわ度の違い?

 もふもふはもふもふ。ふわふわはふわふわ。

 まったくの別物じゃないですか? 何を言っているのですか?


「はっ!? あまりの気持ち良さに、刈り取るのを忘れるところだったわ!?」


 それから抱きつきたい(誘惑)と戦いながら……いいえ、誘惑に何度か負けながらも頑張ったのですが、羊二〇匹分の羊毛を刈り取った所で力尽きてしまいました。


 この身体は、前世の私よりもずっと体力はあるのですが、それでも所詮一〇歳のか弱い女の子。十分頑張った方でしょう。


「つ、疲れたわ……。でも、今から食事の準備もしないといけないのよね……」


 この世界にはもちろん出前とかありません。


 スキルによる能力や、その能力により創り出された魔道具により、中世ヨーロッパっぽい世界観のわりには、生活はかなりしやすいのですが、前世のように仕事さえしていれば後は好きな事だけして過ごせるような、そんな生活を送る事はできません。


 私って、前世では仕事はかなり出来る方だったと思うのだけど、私生活はだらだらと過ごす事が至高だったからな~。


「ふぃなんしぇ~?」


「「が、がぅ?」」


「ご飯作って~!」


「「・・・・・・」」


 ちっ、使えない子ね! カワイイけど! 牧羊犬とは?


「なら、せめてこの刈り取った羊毛を厩舎の隣の小屋に運んでおいて~」


「「がぅ!」」


 今度は嬉しそうに返事をすると、ケルベロスモードになって、刈り取った羊毛を入れた籠を咥え、そのまま走っていきました。牧羊犬とは?


「あれ? そう言えば、私、変身解くように指示したっけ?」


 う~ん。思い出せないし、疲れてるから、まぁいいや。


「とりあえず私もご飯作りに家に戻ろうっと」


 家の中はあちこち壊れまくっていますが、一応、調理器具とかは無事だったので、私は一旦家に戻って晩御飯を作る事にします。


「でも、今日は疲れたし、パンと干し肉と野菜スープだけでいいや」


 その後、私は簡単な食事を済ますと、厩舎に行き、もふもふとふわふわに囲まれて、その日はすぐに眠りについたのでした。


 いつか、だらだらとした生活を手に入れてあげるんだから……。


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