表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/59

さりげなくチェックしなくちゃ

ブクマ&評価ありがとうございます!


某有名な懐メロの歌詞からタイトルつけてみました、筆が乗ったので本日2話目の投稿です。

よろしくお願いします。

「お待たせ、マックス」



「こんにちは、マクシミリアン様」



「こんにちは、アレク…シア嬢…。オーギュ、すまないな、俺の分まで」



 最初マクシミリアンは自分が食堂に行くと皆が嫌な思いをすると言って購買に行こうとしていたが、オーギュストがついでに持ってくるからと待っていてもらったのだ。



「ついでだからいいよ、アレクのお勧めで平民用の薄味を持って来たよ」



 オーギュストはそう言って四阿のテーブルにトレイを置いた。



「平民用?」



「はい、貴族用のスパイスを大量に使ったものより食べやすくて、比べるとこちらの方が多く食べられるという事で平民用を食べる人が凄く増えていました。お気に召さなければ明日からまた貴族用を持って参りますので」



「そうなのか…、知らなかった…。ありがとう、アレク…シア嬢」



 オーギュストの代わりにアレクシアが答えるとマクシミリアンはぎこちなく微笑みを浮かべた。

 アレクと呼びたいがもうひと息なのだが愛称でなかなか呼べない。



「うふふ、持って来ているのはオーギュ兄様ですけれど。それよりオーギュ兄様と同じ様にアレクと呼んで下さいませ」



「え、あ、その…アレク…と、呼んでいいの…か?」



「はい! 言葉遣いも普段通りでお願いします」



 マクシミリアンはアレクシアにどういうスタンスで対応すれば良いかわからず時々敬語が混ざる話し方をしていたので、少しでも親しくしたいアレクシアはチャンスとばかりにタメ口で話してもらう事をお願いした。



 昨日と違い頬張らずとも食べられる食事の為、食事をしつつ会話が出来る。

 アレクシアは昨夜寝る前に考えていた質問を少しずつ投げかけた。



「そういえばマクシミリアン様はご兄弟はいらっしゃるのですか?」



「え? ああ…、母親は違うが弟が2人いる…」



 マクシミリアンの母親はマクシミリアンが5歳の時に「いくら我が子とはいえ、こんな醜悪な容姿の子供を可愛いとは思えないし連れて歩きたく無い」と出て行ってしまったのだ。

 もとより適齢期に結婚ができなくて渋々嫁いできたせいですぐに離婚が成立し、そしてその1年後に父親が再婚した。



「まぁ、弟でしたら一緒に剣術の練習も出来ていいですね」



 順調に家族構成から聞き出してニコニコしながら言うが、マクシミリアンの顔色は良くなかった。



「そうだな…、上の弟は今8歳だが既に剣の才能は俺を上回っている本物の天才だ」



「なるほど、だからマクシミリアン様は弟さんに負けない様に努力して剣術の授業で常に1位なんですね。きっと弟さんもそんなマクシミリアン様の姿を尊敬していると思います。私達の弟のエミールもオーギュ兄様みたいに強くなって私を護ってくれるそうですよ?」



 チラリとオーギュストに視線を向けて微笑むとオーギュストは一瞬瞠目してから照れ臭そうに笑った。



「そんな風に言ってくれているのなら益々努力しないとな、そしてエミールと一緒にアレクを護るよ」



「まぁ、ありがとうオーギュ兄様! オーギュ兄様がそうやって自然に努力する姿を見せるからこそ尊敬されるのよ。きっとマクシミリアン様の弟さんも同じではないでしょうか? もし弟の方が才能があるからと言って努力する事をやめてしまっていたら今のマクシミリアン様はなかったと思います。続ける努力が出来る人には私も尊敬の念を抱きますもの、いつも刺繍を途中で投げ出したくなってしまいますから、うふふふ」



 実際アレクシアの刺繍の腕は上位貴族の令嬢としては普通だが、決して好きでは無い。

 スケジュールとして決められているから渋々こなしているだけなので、止めて良いと言われたらとっくに投げ出していただろう。



「あ…「お食事中失礼致します。アレク、午後から馬術だから早く寮に戻って着替えて来ないと間に合わなくなるわよ?」



 マクシミリアンが何か言おうとした時、レティシアがアレクシアを呼びに来た。



「あ、そういえばそうだったわね。呼びに来てくれてありがとう、レティ。それではマクシミリアン様、お兄様、申し訳ありませんがこれで失礼しますね」



 そう言ってレティシアとアレクシアは食器を片付ける為に食堂へ向かった。

 残されたのはガックリと項垂れるマクシミリアンと、それを呆れた目で見るオーギュストだった。



「で? 何を言おうとしてたんだ?」



「できるなら…マックスと呼んで貰おうと思って…、あと、お前と話す時と同じ話し方で話して欲しくて…。ケーキのお礼も言い損ねたし、それとこの平民用の味付けだと多めに食べられそうだから教えてくれたお礼も言いたかった…、はぁぁ…」



(何より弟と比べたり下手な慰めの言葉を口にせず、俺の努力する姿勢を褒めてくれたお礼を言いたかったな)



 大きなため息を吐いてモソモソと食事を続けるマクシミリアン、アレクシアが居る間は緊張で食が進まずまだ半分程残っている。

 一方で容姿以外は隙が無いと思っていた親友が次々に見せる新たな面に苦笑いしながらオーギュストは最後のひと口を口に入れた。



「もぐもぐ…ごくん。私の予想ではそれらを言い終えるのに1週間は掛かるとみた。普段人と関わらない様にしているツケが回って来たと思う事だね」



 オーギュストは恨めしげな親友の視線を受け止めながら笑って肩を竦めた。

お読み頂きありがとうございます。


亀の歩みで仲を深める人達。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ