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試作ケーキ

ブクマ&評価ありがとうございます!


読むとケーキが食べたくなるかもしれません、書きながら食べたくなったけど今の私はダイエッター…!

よろしくお願いします。

「おかえりなさいませ、お嬢様」



 アレクシアが授業を終えて寮の部屋に戻るとニコルがお菓子作りの道具を揃えて待っていてくれた。



「ただいま、準備してくれたのね、ありがとう!」



(ふっふっふ、やったるでぇ~!)



 そんな風に気合を入れた20分程後の事、自室の厨房にて腕をプルプルさせたアレクシアが居た。



(魔道具! 誰かハンドミキサー魔道具を発明して下さい! 何とかツノ立つまで泡立てれたけど、メレンゲでここまで大変やったらホールケーキのトッピング用生クリームらぁ作ったら腕死ぬわ!)



 だがしかし料理人や菓子職人は平民がなるものの為、平民向けに魔道具などという高価な物を発明しようとする職人も研究者もいないのでアレクシアの望みは叶えられそうにない。



 ニコルはやる気満々のアレクシアにお手伝いを申し出たが、材料を測ったり魔道具のオーブンの予熱設定以外は自分でやると言われて心配そうに厨房の入り口から見守っている。



「いや、ちょっと待て、確か裏技でクリップを泡立て器に連結させるってやつが…。でもクリップが無い…、いや、私が知らんだけであるかも…、最悪針金を手に入れて適当にグルグルにしたやつを中に仕込めば…」



 アレクシアがブツブツと思考を口から漏らしつつも手際良くメレンゲの半量を他の材料と混ぜ、後から残りのメレンゲの泡を潰さない様にヘラで混ぜていく様子にニコルは信じられないものを見たとばかりにポカンと口を開けて眺めていた。



(お嬢様が厨房に立たれるのは初めてのはずなのに…、この手際の良さ…まさか天才!? 流石お嬢様だわ!)



 仕えるメイドの欲目で貴族の令嬢ではあり得ない手際の良さをおかしいとは思わず、称賛の眼差しを向けていた。



「さぁ、後は焼くだけよ!」



「いけません! それは私がやります、お嬢様の美しい手が万が一にでも火傷されたら私だけじゃなく屋敷の者は泣きますよ!」



「……わかったわ、では45分焼いてね」



「はい!」



 オーブンに生地を流し込んだ型を入れようとしたら必死の形相をしたニコルに止められてしまったので、アレクシアは型を乗せた天板を大人しく渡した。



 焼いている間に入浴を済ませ、アレクシアが入浴している間にニコルが使った道具を洗浄してくれていた。

 浴室から出るとふわりと甘い香りが漂っており、夕食前という時間帯に苦行の時間を強いられた。



「良い匂いですねぇ、お嬢様…」



 ニコルは涎を垂らさんばかりに胸いっぱいに鼻から息を吸っている、換気口はあっても換気扇が無いので窓を開けても美味しい香りが部屋の中からあまり出て行かない。

 ドアを開けて廊下の窓を開ければすぐに換気出来るが、ドアを開けっ放しには出来ないので諦めた。



 粗熱がとれて型から外した時点で夕食の時間になり、リリアンが迎えに来たらしくノックが聞こえる。

 ニコルがドアを開けるとそこには少し不機嫌そうなリリアンが立っていた。



「リリアンどうしたの? 何かあった?」



 コテリと首を傾げて聞くと、リリアンの細い目がカッと見開く。



「何かあった? じゃないわ、夕食前にこんな良い匂いを漂わせるなんて酷いじゃない! 我慢出来なくてお菓子を食べようとしてもミラが夕食前だからって許してくれないし!」



 どうやらドアの隙間から廊下へ、廊下からリリアンの部屋までガトーショコラの香りが届いていたらしい。



「ごめんなさい、そんなに匂いが広がるとは思っていなくて…。代わりに食後のデザートとして一緒に食べましょうか、試作品だから味見をしてほしいの」



「まぁ! わたくしも食べられるのね、それなら許してあげるわ、早く食事に行きましょう」



 コロッと機嫌を直して食堂へ向かい、食後にレティシアも共にアレクシアの部屋に来た。

 ニコルがガトーショコラを切り分けて紅茶を淹れると3人で試食会が始まる、メイドの3人はその間に分けて貰ったガトーショコラを持って夕食を食べに食堂へ行った。



「美味しく出来てるかしら…、はむ。もぐもぐ…んん! もぐもぐ、ごくん。大成功だわ、材料が良いせいかしら、濃厚なのにくどくないわ…。試作のつもりだったけど、これならオーギュ兄様に渡しても問題無いわね」



 最初にアレクシアが食べるのを見守っていた2人も口へと運ぶ。



「これは…! 王都の人気店で買ったと言っても信じるわ」



「すごい、とても素人のアレクが作ったとは思えない出来だわ! 私も頑張ったらこんなに美味しく作れるかしら、そうすれば少しでも2人の体型に近付けるかも…」



「あ、体型の為にケーキを作るならチーズケーキをお勧めするわ」



「チーズケーキ…、わかったわ」



(前世でチーズケーキにハマった時は1週間で2キロ太ったしな…、ショートケーキも太りやすいけど作るには生クリームがネックやろ。みたらし団子があれば1番やけど見た事ないで無いんやろなぁ。く…っ、ダイエットの為に調べた事が逆に太る為の知識として役に立つとは…)



「チーズケーキを作るならクリームチーズが必要なのよね、手に入る様なら今度挑戦してみるわね」



「「楽しみにしてるわ」」



 ハモった2人の返事を聞いて頷きながらもアレクシアは残った2切れを明日どうやってオーギュストに渡してマクシミリアンの口に入る様にするか考えていた。

お読み頂きありがとうございます。


ワンホールを8等分でカットしてます、オーギュストにあげる発言で残りの2切れを守ったアレクシア。

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