サイレンスにようこそ・・・。
佐藤は何もかもが厭だった。
受験、人間関係、親、将来、あらゆるものが坩堝の如く彼を攻め立て、迷走させていた。
だが彼は自分からは歩めない。自らでは何も決断してこなかったからだ。
今も言われるがまま通っていた塾からの帰り道、佐藤は毒づいた。
なにか凄惨な事件でも身近におきればいいのに、と・・・。
(彼がこのようなことを考えるのはしょっちゅうだ)
時刻は22時半。
こんな時間まで未成年に勉強させるなんて日本は狂っている!
佐藤は満員の電車の中、酔っぱらったサラリーマンが大人しそうな女子高校生に
絡んでいるところを助ける自分を想像しながら、ギャーギャー騒いでいるであろう
女子高生(佐藤が嫌いなタイプだ)を横目にそんなことを考えていた。
ガツン、また誰かの膝が当たる。佐藤はこの時間が一番イヤかもしれない。
電車はホームにつき佐藤は人込みを避けるようにギリギリに電車から降りた。
彼の家は駅から徒歩20分ほどだ。
時刻は23時3分、さすがに駅前には人がいるものの、少し路地に入ると人気がなく、
彼はこの世界に自分しかいないのでは、という気持ちになった。
そうなればどんなにいいだろう。うるさい親も、受動的な教師も、馬鹿なクラスメイトも
いないのだ。なんて羨ましいのだろうか。(彼はいつもこんなことばかり考えている)
路地を数分歩いた時、彼は、おかしなことに気付いた。
・・・音がしないのだ。
彼はパニックに陥りそうになった。そんな筈は無い!だって・・・
焦りが体に反応する。嫌な汗が伝わる。自然と早足になる。
やばい、やばい、このサイレンス(沈黙)はやばい!
彼はものすごく嫌な気分になった。
くそっ!何でだよっ!何でこんな直ぐに・・・・。
・・・・ガチャッと音がした・・・・。
玄関をくぐる。照明の下、ポケットを探ってみた。
「買ったばっかりだったのに・・・くそっ!」
彼の手の中には壊れたMDプレーヤーが握られていた。
初めて書いた小説ですね。
今読むとひどいんですが、若さゆえの・・・ですかね。