猫にとって人間とは何か?
「やぁ、ニャンコちゃん、元気かい?」
いつも、どこからともなく入ってくるその野良猫は、この老人ホームの職員には嫌われていた。
この猫に懐かれた入居者は、まもなく死んでしまう、と云うジンクスが有るらしい。
だが、私は、もうすでに迫り来る死を受け入れていた。
私を見上げる野良猫の瞳は美しい青だったが、何の感情も読み取れない。
そう言えば、猫は……一体、我々、人間をどう思っているのだろうか?
猫は、自分の事を神だと思い、猫をかわいがる人間達を信者か何かだと考えている……などと云う説もどこかで聞いたが……。
あれ?
猫の鮮かな青い目が、段々と暗くくすんだ色に変ってゆき……。
どうやら、私は死んでしまったらしい。
中庭の椅子には、私と云うか……私の抜殻が座っている。
「やれやれ……しかし……これから……どうなるのやら……」
「にゃっ♥」
その時、例の野良猫が、うれしそうな声を上げた。
生きていた時は判らなかった猫の感情が理解出来た。
そうだ……野良猫は、私の死体ではなく、私を見ていた。
私は本能的に気付いた……。逃げねば……。しかし……。
私は……消滅する寸前に、ようやく理解した。「猫は人間をどう思っているのか?」を……。
ごちそうだ。
私は……私の魂は……猫の口にあっさりと吸い込まれ……そして……存在そのものが吸収されるような異様な感覚と共に……