第四の事件 『中堅アバター連続引退事件』 その2
こんにちは。いや、こんばんはかな?
まずは自己紹介といこう。
私の名前は迷路真酔と書いて『めいろ まよい』だ。
職業は一応探偵をしているのだが、名前の通りヘボ探偵でね。
ナロウチューブというバーチャルな空間に事務所を構えてこうして駄弁っているという訳だ。
一応、このチャンネルではバーチャル探偵よろしく華麗に事件を解決……と行きたい所なのだが、こんなヘボ探偵の所に来る依頼を察してくれるとありがたいのだが。
それでも事件らしいものは起こり、それを解決した話を忘備録代わりに語っていこうかなと思っている。
見ている皆様は紅茶とお菓子でも持って気楽にくつろいでくれるとありがたい。
まぁ、所詮ヘボ探偵の事件簿だ。
山もなく、谷もない、ごく普通の人間らしい物語でしかないから、つまらないと思ったら遠慮なくブラウザを落としてくれるとありがたい。
それでも見てもらって、続きをという奇特な方は評価の方をよろしく頼む。
あ、一番大事なことを言い忘れていたな。
この物語はフィクションです。
さてと、それでは第四回の事件の続きを語るとしようか。
私の依頼が大手事務所の中堅の失踪。
そしてその後に起こったのが、別の大手事務所の中堅が長期休養と更に別の大手事務所の中堅も体調不良を理由とした休養。
引退、長期休養、体調不良と言葉は違うが、詰まる所この三人はバーチャルの世界から消えたのだ。
失踪事件としてもいいし、このまま出て来れないのならばバーチャルなだけに誘拐事件というより殺人事件と言ってもいいだろう。
第一の事件と第二の事件が同じならば偶然かもしれない。
第二の事件と第三の事件が同じなら怪しいけど偶然の可能性もない訳ではない。
だが、第一の事件と第二の事件と第三の事件が同じというのならば、それで偶然を疑わなければ探偵ではない。
という訳で、依頼の調査を行いつつ、それとなく二つの事件の聞き込みを始める。
第二の事件である長期休養だが、事務所側は情報をシャットアウトしており、表向きは情報を得る事ができなかった。
とはいえ今のご時世はネットと言う噂がある訳で。
調べてみるとなんとなくだが、長期休養の理由が見えてきた。
どうやら、この第二の事件の中堅は再生回数や登録者数で伸び悩んでいたらしい。
この業界は生まれてまだまだなのだが、とにかく流行り廃りが早すぎる。
中堅というのはそういう波に乗り遅れた、もしくは乗らなかった結果であり、結果として人気が伸び悩む時期が来たと見る事もできるが、事務所としては焦ったのだろう。
事務所側は彼らの動画によって飯を食べているからだ。
第三の事件の体調不良だが、こっちはニュースになった事で原因が特定できた。
一部のファンがストーカーと化して、そのストレスから来る体調不良だったようだ。
問題はここからで、それに心身ともに疲弊した第三の事務所の中堅は「辞めたい」みたいな愚痴をメンバー限定の配信で愚痴っていたという。
事務所側が彼女の休養に踏み切ったのはある意味当然と言えるが、事件発生後すぐにSNS等で被害者を心配する声があったのだが、それに対して事務所からの返答は「問題ない」の一点張りだったという。
現場百遍ではないが、とにかく彼女たちの動画を見続ける。
三人とも中堅なだけあって、数は多く見るのは結構苦労したが、気づいたのは三日ぐらい経ってからだろうか。
「……ん?
声が似ていないか?」
そう思ったのは最初の違和感だ。
一人目の中堅の声を聞いている時に感じたそれは、二人目を聞いた後にどんどん確信へと変わり、三人目を聞いた時にははっきりと確信した。
似ているのだ。
念のため、二人目と三人目の個人情報を調査して別人である事を確認するが、そうなるとこんな推理ができる。
「もしかして、一人目の中堅は、この二人目と三人目の中堅がやっているのではないか?」
と。
私たちの体は見ての通りバーチャルだ。
結果、この手の判別をする際には声でするしかないのだが、それ専用の調査というものも今の技術ではできていたりする。
三人の動画データを用意してその手の研究所に行くと、対応してくれた職員の人は三人が別人であると断言してくれた。
「アニメとかで途中で声優が変わるケースがあるじゃないですか。
あれと同じで、用意されたキャラクターと声が先にあって、それに似せて声を当てていくんですよ。
だから、違和感はあるかなとファンは思っても、キャラクターという強固な体があるのでその違和感を消化してしまうんですよね。
このあたりは、ボイスチェンジャーとかを使えばもっと似せる事ができますよ」
なるほどなぁと思いつつ、私はさらに質問をしてみる。
ありがたかったのが、この職員さんが私たちバーチャルの世界のファンだった事だろう。
「じゃあ、この三人の声が似ているのは偶然なんですか?」
「いや、違いますよ。
声の出し方を教えて、それを再現できるように訓練しているんです。
あとは単純にキャラの性格を一致させるように演技指導をしていますから、こういうのは一種の職業病ですよ。
多分あの人の影響を受けたんでしょうなぁ……」
「あの人?」
ここに来たのは本当に事件解決において大きなヒントになった。
そんな事を私が思っていると知らず、その職員は第四の人物をあげたのである。
「ほら。
去年引退したバーチャルの世界の超大物。
デビュー時期も近かったし、たしかそれぞれがコラボとかして絡んでいた事もあったでしょう?」
という所で、今回は話をここまでにさせてもらおう。
次で事件解決と行きたい所だな。
推理小説みたいだろう?
そんなに見る人も居ないだろうが、ここまで見てくれた人で面白いと思ったならば、評価とブックマークをよろしく頼むよ。
では諸君。
次があるかわからないけど、この電脳空間のどこかで会えたならまた面白くもない事件を語るとしよう。