とある公国のゴブリンの話
ぶっちゃけ弱者が困ってても、強者は自分に関係なかったら中々対応してくんないよね、みたいな事を書いております。
うーん、クリスマスイブの夜からクリスマスにかけて、非リア充がなにしてんだろ…
(あ、これ冷静になったら気づきたくないこと気づく駄目なやつだ…)
R15はあくまで保険です。
私が事故でおそらく意識不明になってみている夢であろう、この異世界。
ばっさりはしょるけど色々あって、今は冒険者ギルドに所属して、偏執狂のとある第4王子から逃れるためにパーティーを組み旅行がてら各国を旅している。この世界を色々見てみたいという私の希望を、優しいメンバーは叶えるために一緒に居てくれる。
私はこの世界の創造神が偏執狂の第4王子のいる国に遣わせた「神の愛し子」というものらしいが、自覚はない。魔物を遠ざけ国を繁栄に導く象徴なんだそうだ。ただ国内にいるだけでその効果はあるらしい。代々の愛し子が自主的に国を出た例がない今、あの国がどうなってるのかは知らない。
「この辺りはうちの国でいう地方貴族…つまりそこの領主ね。それが各々国を名乗っているのよ」
「へぇ、公国ってやつ?」
「そ、昔はうちの国となにかと衝突する帝国があったんだけど、そこが滅びて現在の国の形になったのよ」
「あー…それって、何代目かの愛し子を攫ったって国じゃないの?」
「そうです、愛し子様良くご存知ですね」
「はい、ヴィクトル愛し子様呼びアウト。今日の夕食当番ね」
「私の作ったものをナツ様がお召し上がりになるのですから喜んで」
「駄目よ~ヴィクトルにはそれご褒美になっちゃうから」
「なんで私の周りは変わった人ばっかり…」
クッションを敷き詰めてかなり快適に魔改造した馬車に揺られながら話をしている。
私に体力とかが無さ過ぎて、現在の旅のスタイルになったのだ。普通の冒険者は自分達で馬車など持たない。
「ギルマスはなんでも良く知ってるよね」
「ナツ様はいつまでアタシをギルマスって呼ぶのよ、もう辞めたんだからやめてよね」
「なんか口に馴染んじゃってるからなぁ…」
ギルマスは第4王子のいた王都の冒険者ギルドのギルマスだった人だ。
色々と巻き込んで、今一緒にいるけど迷惑かけっぱなしなのに側に居てくれる。
ちなみに心は女性だが見た目はエロさしたたる男性である。ビジュアルとのギャップが凄い。
「この国すっとばした方がいいわ、多分ナツには不愉快なところだと思うから街で補給だけしましょ」
そして公国の一番大きな街に入って、現金を引き出しにギルドへ向かった。
ギルドの受付で女の人が大声で何かを訴えていた。
「どうしたのかな…」
「…ナツ様、もういきましょう。ヴィクトル、ナツ様を連れて外にいってて」
「え、なんで?」
「行きましょう、ナツ様」
腕をとられ細身なのに力の強いヴィクトルに引っ張られる。引きずられながら女性の話に耳を傾けているとどうやら村にゴブリンが襲ってきて、若い娘さんが数人攫われたらしい。
救い出して、ゴブリンを退治して欲しいと訴えているようだ。
本当に魔物っているんだ…。私がいると魔物が寄ってこないし、今まで遭遇したことも無かった。
私がいたあの国は本当に平和な国だったのだと思い知る。
ギルマスと合流して街の商店で必要な買い物をする。
食料品などの管理は二人にお任せである。情けない話だが私は今はまだ何の役にも立たない。
お金の事に関しては道すがら見つける魔石をギルドで換金して、足しにしてもらっている。
普通なんとなく見つかったりしないのが魔石らしいが、なんとなく見つかるんだもん。これぞ愛し子効果という奴だと思う。
歩きながら取りとめもない会話をしてて、魔物の話になった。私は魔物に詳しくないからゴブリンっているんだねと聞いてみた。
「元帝国の領土にはゴブリンがよく湧くのよ。他国には湧かないのに」
「それって過去の愛し子を攫った計画を立てた者たちが魔物に落とされた姿の末裔だったりして」
なんとなく思いつきで言ったんだけど、ギルマスの表情がかなり怖い。
「だからなのかしらねぇ…あいつら愛し子様に近い容姿の女性を好んで襲うのよ…」
この世界に黒髪黒目は居ない。黒っぽい髪だけとか、黒に近い瞳だけという人は存在する。
白人ベースの人達なので皆体も大きい、という事はそういう色を持つ小柄な女性を好んで襲うということか。小柄な人自体が少ないから子供が襲われてるという事になる。
「え…じゃあさっきの若い娘さんってまだ子供っていう年齢の子が攫われたって事?私の知ってるゴブリンは女性に性的に酷い事するんだけど…ここでは違うよね?」
「残念ながら…ナツ様の考えてる通りだとおもうわ」
それを知って知らん顔するのは…でも私には戦闘力がない。私のわがままで二人を危険に晒すのもいやだ。うつむき黙ってしまった私をヴィクトルが心配そうに覗き込む。
「ナツ様…私はナツ様のご希望をかなえるために存在しているのです、よいようにお使いください」
「絶対そういう顔すると思ったから遠ざけたかったのに…もう変なところで聡い子ねぇ」
「なんでさっきの人は国の騎士団?とかに通報しないの?なんでギルドにきてたの?」
「…ちょっと話せるところに場所を移しましょうか」
二人の話をまとめると、町外れの村がゴブリンに襲われても、この国の騎士団は動かないのだそうだ。
理由はラノベにもよくある、一匹一匹は弱い魔物だから国が軍事力を動かしてまで対処することではないとの判断によるもので、村は自衛するか、もしくはお金を出し合って冒険者を雇うためにギルドに依頼する。しかし、村人は現金収入が少ないという事情もあり、報酬もそう多くは出せない。いくら弱い魔物であるとはいえ冒険者も命がけ、そんな依頼を受けてくれる人はいない。襲われた村は経済的にも人的にもダメージを受け、幼い少女達は魂までも殺されてしまう。そんな悪循環がずっと続いている。被害にあった少女達のケアは公的には一切されず、どんなその後を送るかは容易に察する事ができる。
公国としてはゴブリンという自然災害には一切対策をしていないのだ。
「なんだろう、すごくもやもやする。これは私が女だからかな…」
「ナツ様…言いたいことは分かるわ。男性が中心で成り立っている社会だからね」
「貴族とかここの領主の親族の女性はそんな目にあうことがないから…それ以外ならどうでもいいのね。
ふーん、そう。自分達が性的に搾取されなかったら対策も取らない?国民が辛い目にあってるのに?力もあるのに?男だから大丈夫?へー、そう」
「ナツ様?」
「ゴブリンがケツ穴専門だったら…大変な事になるわよねぇ?腐女子の妄想力思い知らせてやろうかしら」
ヴィクトルとギルマスが青い顔をしてお尻に手をやるのが見えた。
かくして、とある公国に湧いていたゴブリンという魔物は、あるときを境に男性を対象として慰み者とするようになった。口にするのもおぞましい程の行為に心を壊す者もいたが、中には助け出されて尚、自らゴブリンの巣に戻ってしまうものもあった。
何より恐ろしいのはどういう進化を遂げたのか分からないが、ゴブリンは人間の男としか子を作ることが出来なくなってしまったのだ。ゴブリンに襲われた者は男性でもゴブリンの子供を妊娠&出産できるようになっていた。この事は世の男性陣を震え上がらせた。
特にその公国出身の身分の高いものが良く襲われるようになり、国を挙げての対策が取られるようになったが、不思議な事に平民や冒険者達を襲う事は少なくなった。
「アタシは今後ナツ様を本気で怒らせない事を誓うわぁ~…」
「失礼ね!ギルマス!私が怖い人みたいじゃないですか!」
「ナツ様…充分私は怖いです…」
「なによ、私達女が小さい頃から日常的に感じているものを今まさにあなたたちが感じているだけじゃない。合意のない性行為も、合意のない妊娠も、一度相手の立場になってみればよーく分かるかと思って」
にっこりといい笑顔で笑うナツを二人はお尻を気にしながら見る。
「大丈夫よ、公国の領主や貴族筋の人間を主に繁殖の対象とするようにしといたから、平民とか冒険者とか私に縁の人ある人には触れる事もしないから」
「しかしエグイ事を考え出すものねぇ」
「ん?私の世界にはオメガバースという概念があってね…」
オメガバースを簡単に説明すると二人はなんとも表現しがたい表情をしていた。
「高度に洗練された神の世というのは本当になんでもありなのだとわかりました。ナツ様を理解するためにも、私もその概念を受け入れないと」
「いやいや、ナツ様も言ってたでしょ、神の世界でも特殊な概念だって。ヴィクトル無理しすぎよ!」
神妙な顔で自分を全力で納得させようとする真面目なヴィクトルと、それをなだめるギルマス。
「それでもこれまで被害にあった子供たちが救われる事はないんだよね…」
襲われた村には白い花が咲き乱れ、攫われた子供らは一応村に帰ってきた。
愛し様の治療を受けた村人は皆、愛し子様との縁ができ、二度とゴブリンに襲われる事はないだろう。
「愛し子様を象徴する白い花を乾燥させてポプリ?というものにしたものを、各村に配るようにお願いしてあるし今後は大丈夫でしょ」
「そうだといいな」
「そうですよ、愛し子様」
「はい!ヴィクトル罰ゲームの夕食当番ね!」
「ええ、お任せください!」
「ナツ様~、だからそれこの子には罰ゲームでもなんでもないからね!?」
そうして私達の旅はまだまだ続く。
くだらない思いつきを適当にちょいちょいと。
いつも読んでくださる皆様へのクリスマスプレゼントです~。
しっかし、ネタがひどいwww
下品でごめん…