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タイム・トラベル・パラドックス  作者: 岡田 希望
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タイムトラベラー、チャンスを掴む

2018年 12月10日 東京


 「お疲れ様でしたー」

 正治、祥子、関、吉岡の四人は舞台袖で手を叩いた。

 正治のタイムトラベル・インターンが始まってから二週間が経ち、初めて手掛けたコンサートイベントが、無事終了した。二千人のホールは満員御礼、グッズも完売した。クライアントから受けた厚い感謝の言葉に、正治は仕事のやりがいを見出した気分だった。

 「初めてにしては大きな案件だったが本当によく頑張った」と関が労う。

 「営業スキルの後藤君と頭脳明晰の祥子ちゃん、いいコンビじゃない」と吉岡。

 「そんなことないですよ」二人で同時に言い、かぶりをふる。あまりのシンクロに顔を合わせて笑った。

 実際、今回の仕事をきっかけに、正治は祥子との距離を大きく縮めることに成功していた。

 祥子が人前で話すのが苦手な部分を正治がカバーし、正治の要領がよくない部分を祥子がカバーしてくれた。そして、祥子が見せる優しさや、時々うっかりミスをしてしまう天然さに、正治はますます惹かれていった。

 「あらあら息ピッタリじゃない。もしかしてコンビじゃなくてカップルだった?」吉岡がからかう。

 「ち、違いますよ」正治が慌てて否定する。祥子の方を見ると、顔を赤くしていた。

 「そんなことより、どうですか。今日は打ち上げに一杯」その場の流れを変えるべく、正治はグラスを傾ける仕草をして提案した。

 「いいけど」と関は言いかけて「いや、悪い。俺はここんところ残業続きだったから、家族サービスしてやんないとな」そう言って吉岡の方を見る。

 「私は今日旦那が遅くなるから、翔ちゃんの面倒を見る日なのよね」と吉岡。

 「ここは、若いお二人で行ってきたらどうだい」関は二人を見て言う。

 流れを変えるつもりがむしろ本流の勢いを増してしまった。

 「俺はいいけど…」そう言って祥子の方を見る。ええい、ここは流れに乗ってみよう。

 祥子は照れくさそうにはにかんで頷いた。

 天は正治に味方したようだ。内心でガッツポーズをする。

 関のお節介もたまには役に立つようだ。「まあ明日も朝から仕事だから、何とは言わんがほどほどに、な」という余計な一言を除けば、だが。

 吉岡はやれやれといった表情で苦笑していた。


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