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一期一会

連続投稿もう一発

 

 調べ物が終わり、保証金を返してもらって図書館を出る。


 残金は金貨4枚と銀貨99枚になるんだけど、図書館に行くまでに両替代わりに串肉を買ったから銀貨の量は少し減っている。

 1本銅貨10枚な串肉だけど、5本買うと1本おまけになるシステムのようで、今の手持ちは金貨4枚、銀貨98枚、銅貨50枚になっている。

 この貨幣も不便で仕方が無いけど、この改革もそのうち進言しても良いかも知れない。

 本当は補助通貨ってものは、通貨と通貨の間にあってしかるべきものであり、最下級の通貨を拵える事では決してあるまい。


 だからもし、僕がこの件に関われるなら、大銅貨や大銀貨って補助通貨を進言したいと思っている。

 大銅貨が銅貨10枚の価値を持ち、大銀貨が銀貨10枚の価値を持つ。

 後は小金貨を金貨半分の価値ぐらいして、大金貨を金貨2枚ぐらいの価値にすれば、金貨10枚は小金貨20枚であり、大金貨5枚って事になる。


 でもさ、本当はこういう後出しな方法は望ましくない。


 だから通貨改革を本当にするのなら、全てを改める必要がある。

 それこそ、銅貨10枚で銀貨1枚にし、銀貨10枚で金貨1枚にし、金貨10枚で新たな通貨、新たな通貨10枚で更なる通貨って具合に。

 大体、金属通貨のみでの経済活動が不便なので、紙幣が本当は望ましい。

 だけどそこまで経済が発達していないので、国でやるのは難しいだろう。

 となると昔の藩札のように、あの街だけで流通する補助的な紙幣を作っても構わないかも知れない。


 領主の許可があればそれは可能そうだし。


 まあそういうのはやれる権限を得るまで寝かせておくのが望ましいか。

 今の僕ではそんな事には到底携われず、ナイスアイディアって褒められて終わるだけだ。

 そうしてそいつを聞いた奴が発案者って事になり、富も名誉も独り占めって事になるだろう。

 実際、貨幣は経済の命綱のようなものだから、そいつの改革ともなれば全てに影響のあるでかい仕事になる。

 特に領主の独占商売があり、それの支払いに必要があるとなれば、領主紙幣は嫌でも流通する事になる。

 しかもそれが国中でもその街でしか手に入らないとなれば、国内でも流通する紙幣になる可能性もある。

 もちろん、技術が拙いと偽札の危険もあるけど、その取締りを徹底すれば何とかならない事もあるまい。


 高度な技術に支えられた領主発行の紙幣が流通するなら、領主の懐はひたすら豊かになるだろう。

 そしてその金を街に投資すれば、街も豊かになって領主は更なる豊かさを手に入れられる。

 好景気や不景気のコントロールがやれるようになればもう、国の政策ひとつで街の経済が揺れ動く事もなくなるだろう。

 いわば一種の独立経済に近い事になりはするが、そいつは自己防衛の範疇に収まるとは思うけど、国は恐らく認めないだろうな。

 だから街では大っぴらにやるにしても、領主同士の取引ではこっそりとやるしかあるまい。


 まあそんな危険な事はやらないけどね。


 ~☆~★~☆


 図書館での収穫は他にもあった。

 それは魔法の事。

 魔法の基礎って本があったので、そいつを今日からやってみようと思っている。

 魔法はイメージが大事であり、それがしっかりと確立しているならば詠唱は恐らく不要だろうって結論だ。

 魔道具屋で指輪型の魔法発動体を何とか手に入れようと、店で色々と相談してみる。


「予算は金貨4枚なんですけど」

「それじゃ話になんないよ。少なくとも白金貨1枚は無いとね」


 白金貨……確か金貨100枚だったな。

 今の僕じゃ到底無理な額だけど、何とか発動体は欲しいんだ。


「杖の安いのは? 」

「そうさね、杖なら金貨数枚で買える品もあるけど、それでも4枚だときついさね」

「中古とか無いですか」

「中古かい。そうだねぇ……おお、ちょっと待ってなさい」


 何かあるようだ。

 それが例え壊れかけの杖だろうと、無いよりはましだろう。

 でもさ、魔法が本当にイメージで発動するなら、発動体は単なるその補助って事にはならないか?


「これなんだけどさ」


 見れば中程からポッキリ折れた杖だ。


「それってゴミじゃないの? 」

「あはは、まあ、そうとも言うけどさ、これでも使えない事も無いんだよ」

「銀貨1枚」

「途端に足元を見る子だねぇ。もう少し何とかならないかい」

「でもゴミだよね」

「そりゃ杖本体はそうだけどさ、先の魔石は価値が高いんだ。だからさ、本体を交換すればそれなりで売れる品さね」

「銀貨10枚」

「魔石自体の価格が金貨1枚ぐらいだからさ、せめて金貨2枚は欲しいさね」

「金貨1枚。お願いだよ、このお金、借りているんだ。僕は小遣いももらえない貧乏な家の子でさ、父親が王都に居るから会いに行く途中なんだけどさ、その旅費も借りているんだ。だから魔法を何とかしないと死ぬまでタダ働きで返していかないといけなくなるんだ」

「何だい、金持ちのご子息かと思えば、そんな事になっていたのかい」

「そんなの僕の服を見れば分かるよね」

「まあねぇ、金持ちのご子息にしては質素な服だとは思っていたけど、お忍びってのは大抵そんな服を着るもんだしさ」

「僕はさ、家の仕事を必死でやってもさ、銅貨2枚しかくれない家の子なんだ」

「そりゃそんだけ仕事が出来ないって事じゃないのかい」

「隣町までの買出し、薪割り、部屋の掃除、洗濯、料理の下拵えってさ、一度大人の人が僕の仕事してさ、ふらふらになっていたよ」

「それで銅貨2枚はあり得ないさね。どんな親だい」

「旦那が3年前に失踪してさ、僕じゃその代わりにならないぐらいに依存しててさ、だからいくら働いても生活を豊かにしたくない親なのさ」

「それが本当ならそんな親、捨てちまいなよ、バカらしい」

「でもさ、それ以外は本当に優しいお母さんなんだ。だから楽をさせたいと思って頑張っていたんだけど、そんな裏を知っちゃうともうやる気も何も尽きちゃってさ、だから手に技術が欲しいんだ。だからこの杖、安く売ってください。お願いします」


 かなり同情してくれたようで、魔石代のみの金貨1枚での取引にしてくれた。

 後は添え木を当てれば杖として使えない事も無いと言われ、簡素な修理までしてくれた。


「こいつはおまけだ」


 見れば図書館で見た魔法の基礎の本。


「え、これって」

「おや、知っているのかい? 」

「図書館で見た本だ」

「アタシが昔使っていた本でさ、もう使わないからアンタにあげるよ」

「ありがとうございます。この恩は決して忘れません」

「あはは、嫌だよ、こんな事ぐらいで」


 確かに世界の存在はドロドロかも知れないけど、救いの手が全く無い訳じゃ無いらしい。

 真摯に頼んだせいなのか、それとも気まぐれかも知れないけど、彼女は僕に本をくれた。

 時間が無いからと諦めた読書だったけど、本当は最後まで読みたかった本だったんだ。

 お金がたくさん稼げたら、今度は指輪型の魔法発動体を買いに来ると約束し、頑張りなさいと激励を受けて店を出た。


 彼女は布袋に杖と本を入れてくれたけど、中を見ると他にも何か入っている。

 妙に丸い……え、これって本にあった。

 属性を調べる水晶珠が入っていた。

 これも決して安くはないはずなのに、本当に……


 ありがとうこざいます。

  

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