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パパさんと同い年

オレ達の旅はこれからだ。

 

 ふうっ、気付いてみれば某マンガのパパさんと同い年か。

 色々あったけど、北の国から出発して中の国をスルーして南の国、そこから西の国に行くつもりが東の国になっちゃったんだけど、もしあれであのまま西の国に行っていたとしたら、ルークは今でも……はぁぁ、未練だよな。


 それはそれとして、西の国って島国と言うか、島が連なっている国になるんだ。

 あれも含めて大陸と言うのは弊害があると思うんだけど、当時の誰があそこに追いやられたんだろうな。

 土地の豊饒さには差があると言うのに、よくも5つに分けたものだよ。

 中の国は海が無いものの、岩塩が豊富に採れる豊かな国らしいし、南の国は夏は暑いものの冬でもそこまで寒くなく、だから穀物の育ちも良いし。

 北の国は冬は確かに厳しいけど、そこまで雪が降る訳じゃ無いから、穀物の生産もそれなりにやれていたんだ。

 ただ、ちょっと少数民族に対する態度がさ、搾取対象ってのが気に入らなかったけどさ。

 そうして東の国だけど、確かに当初は海の無い国という事になっていて、全般的に高山地帯ではあるけど、山脈を越えれば海はあるんだ。


 今は王都から山裾を越え、山脈の向こうの港までの山岳列車が稼動していて、あれで海の幸が運ばれるようになり、この国も豊かになっていったんだ。

 つづら折り式線路は無駄があると散々言われたけど、下りは不要と言った奴は、斜面を滑落して死んでしまったんだ。

 だから自然と僕の案が取り入れられる事になったんだけど、経費が経費がと煩かったから僕の手出しで僕の経営にしてやったんだけど、お陰で国の利益が皆無になり、あれでかなり儲けたな。

 目先の事しか見えない大臣はあれで失脚し、今では長期の国の行く末が見られる有能な人に交代している。

 そうなって初めて僕に交渉って来たからさ、全てを委譲する事になったんだけど、そこでもかなりの儲けになったんだ。

 その代わり、この国は今後、海の幸がふんだんに手に入る事になり、もう他国からの輸入に拘る事も無くなるだろう。

 山脈貫通トンネルと共に、この国の宝としてあの路線を保持していって欲しい。


 あれは僕がこの国で生きた証のようなものだから。


 魔物棲み分け計画もあれから順調に進み、路線に出て来る事は無くなったな。

 路線一帯は魔物の住処として、路線自体には来れないようにする代わり、山裾から山麓までを関係者以外立ち入り禁止にして、それで列車強盗を防ぐという名目の元、魔物の隔離に成功したんだ。

 この場合の関係者と言うのは、ギルドに認められた探索者という意味であり、中の魔物の間引きをしてもらっていたんだ。

 あの地方でしか見られない珍しい魔物も居て、あれに入れるようになったら一人前と言われていたらしいな。

 今ではあの一帯は国の土地になったけど、僕の狩場でもあったあそこは日々の気分転換に最適な場所だったんだ。


 あれから転移魔法も確立して、山と離れは転移で往復してた。

 離れの入り口にはセンサーのような魔導具を設置していたのに、あれが鳴る事は無かったな。

 鳴ればすぐさま帰ろうと思っていたのに、あいつは元妻の言いなりだったとは情けないな。

 それにしても、本当に人は年月で変わるものだとつくづく思うよ。

 だけどあいつもルークの母と同じような事になっていたんじゃないのかな。

 それでも僕は同じ屋敷の中に居たんだし、王都に行ったっきりのルークの父親とは違うだろう。

 そりゃ研究が楽しくてプロジェクトに夢中になってはいたけどさ、言えば是正したのに言わなかったあいつらが悪いのさ。

 自分達で楽しく過ごしていたってのに、何が不服だったのか。


 まあ、僕は無理だと思っていたけど、やっぱりこうなっちまったか。


 所詮、生まれが違うから合わないと思っていたんだけど、押し掛けて既成になったから責任を取ったようなものであり、そこに愛があったかと言われると甚だ疑問ではあったんだ。

 それでも娶った以上は豊かな暮らしをさせてやろうと、屋敷も買ったし調度品も色々と言われるままに揃えてもやった。

 元々、親に生を諦められた僕に、愛の何たるかなんて分からないんだ。

 なのにどうしても付いて来ると言ってダダこねたのはあいつであり、だから半ば諦めて成り行きに任せていた。

 あれがルークならまた違った未来になっていたかも知れないけど、あいつは僕と交代しようとは思わなかったみたいでさ。

 だからずっと僕が動いていたんだけど、よりにもよって赤子に憑依するとはな。


 あれは取り殺すタイプの憑依だと分かったから、必死で懇願したけど無理だったんだ。


 執念と言うのか妄執と言うのか、どうして急にあんな事になったんだろう。

 僕の中で世界を見たいって、それで裡に引き篭もったと思っていたのに、本当は違う理由があったんじゃないのかな。

 もう、その理由は分からないけど、僕が殺したのだけは確実だ。

 殺して成り代わるとか、僕も似たようなものじゃないかな、クククッ。


 ふうっ、またぞろおかしな気分になっていたな。

 どうにもルークの事が後を引いているようだけど、終わった事を何時まで引きずってんだよ、僕は。


 よし、スッパリと忘れよう。


 若返りの薬を2本飲み干し、そのままベッドに横たわる。


 ~☆~★~☆


 どうにもいけませんね。


 意外と精神耐性が高いようですが、これでは困ります。

 君はこの世界で魔王になって、勇者召喚の後に滅ぼされる定めなのですよ。

 さあ、過去の事を悔やみなさい、そしてタガを外して暴れるのです。

 そうして西の国の祭壇で数百年ぶりの勇者召喚の始まりです。

 だから君には西に行かないように調整したのですが、このままでは西に向かいそうなので仕方なく介入する羽目になりました。

 中の存在も洗脳し、子供も妻も調整したと言うのに、ここまで耐えるとはやはりあの人員の導きですかね。

 まさか勇者の為の人員が彼のブレーキになるとは、さすがに予想外でしたよ。


 ですが、ここまでです。


 もう君に人間としての未来は、アガガガガ……


(やれやれ、未来が無いのは君のほうですよ。世界は流れるままなのが理想であり、シナリオはただのガイドラインに過ぎません。何処の誰に吹き込まれたのかは知りませんが、散々突いてくれましたね。しかも彼に元祖を消させるように仕向けるなど、完全に越えてます。私の権限で君は消滅罪として処分しますが、自業自得だと諦めてもらいますよ……それにしても相当に歪めてくれたものですね。本当に彼には可哀想な結果となりました。しかしこれも流れるままなのです。なので運が悪かったと諦め……それはさすがに厳しいですかね。なら少しだけ……)


 ~☆~★~☆


 ふあぁぁぁ、何か変な夢を見ていたような。

 ちょっとシャワーでも浴びて目を覚ますか。


 ほぇぇぇ?


 ああ、若返りの薬を飲んだのを忘れていたな。

 2瓶だから今、21才って事か。

 この国でのあれこれの時間がそっくり消えたって事になるか。

 まあ、ライフワークみたいな事もやったし、もうこの国に用は無いか。


 さて片付けていよいよ西の国だな。


 もう消えちまったろうけどルーク、君の分まで僕は世界を見聞していくよ。

 だからさ、君の分まで生きてみせるから。そう、どんな手を使ってでもさ。

 幸いにも若返りの薬はまだまだあるし、師匠のところに行けば恐らく年は経過しないだろうし。

 現に師匠のところに居た数年間で、僕の見た目は全く変わってなかったしね。

 だから40代の割には若いとか言われていたけど、外見的には35才ぐらいだったはずだ。

 もっとも今はもっと若く見えるだろうけどね。


 さあ、気分一新、新たなる旅の始まりだ。


 ~☆~★~☆


(かなり是正出来ましたか。あのままでは本当に魔王に成りかねませんでした。確かにそれがシナリオとは言え、彼は元祖の為に必死で生きていたのです。それこそ自らの人生を捨てる覚悟でね。その対象を変質させ、彼の手で殺させるなどと。なので彼の精神を少し補正しましたが、あれぐらいは許容範囲でしょうかね)


 ~☆~★~☆


 そうして彼は旅に出る。

 過去を乗り越えて何処までも。

 そこに何らかの干渉があったにしても、それを知る事は無い。

 それが世界の掟である以上、世界の中の存在に知る術は無いのだ。


 それでも長年彼にちょっかいを出していた存在は消えたようなので、今後の彼は何者にも縛られる事は無くなると思われる。


 西の国は勇者召喚の国らしく、彼がそこで何を見て何を感じるのか。

 そうして何時気付くのだろうか、この世界が異世界であるという事に。

 いや、彼は既に異世界のつもりで生きているようだ。

 それならそれで構うまい。


 彼のこれからの人生に幸あれと、ただそれだけを記してペンを置くとしよう。

 

勢いのままに書き綴った感じですが、ストーリーが出来上がるまでかなり苦労した作品でもあります。

元々、12話ぐらいの予定が少し長くなりました。

それでも自分的には満足しています。

拙いのは分かっていますが、今の僕にはこれが精一杯なのです。

読んでいただきありがとうございました。


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