鉱山改革の果てに
東の国と言えば鉱山という訳で、鉱山見学にやって来た訳ですが、鳥が可哀想でありました。
てかさ、この魔法全盛期な世界で鳥でガス探知ってどうなってんのよ。
またぞろ研究室魔導具を据えての研究に明け暮れる事となり、空気を放出する魔導具……いわゆるエアラインマスクみたいなのを開発した。
いやね、最初はアクアラングみたいなのにしようと思ったんだけど、鉱夫の意見を取り入れるうちに、背中に重い物を背負ったまま作業するのが辛いって話になってね、まあそうだろうなって事でこういう方式になったんだ。
それでそのエアラインなんだけど、これがまた変わった名前のヘビを使うんだけど、誰が付けたんだ、こんな名前。
「ノビールスネーク」
そりゃ確かに皮がゴム管みたいではあるけどさ、伸びるヘビってそのままだよね。
それでこれがまたやたら細長いんだ。
直径は5センチぐらいしか無いのにさ、長さが10メートルぐらいあるんだ。
んでそいつは普段、木の枝に巻き付いていてさ、獲物が下を通るとビローンって伸びて襲うんだけど、熊でも平気で獲物にしちゃうんだ。
え? 直径5センチでどうやって食うんだって?
いやね、獲物にひたすら巻き付くんだ。
だから窒息か圧死する事になるんだけど、そこからがちょっとエグいんだ。
どうにも元は回虫だったんじゃないかってヘビでさ、体内に潜り込んで中から食うんだよ。
だから倒れている魔物を見つけるとさ、そのまま冷凍するのさ。
そうしたら中のヘビは強制冬眠みたいになるからさ、腹を掻っ捌いてヘビを取り出してそのまま煮ます。
するとだね、何故かヘビの身がドロドロに溶けてさ、皮だけが残るんだ。
そこで登場するのが『クリーンポーション』なんだけど、煮たヘビを洗った後でポーションで消毒すんのな。
そうしたらエアラインホースの出来上がりとなるんだ。
鉱山の主にその魔導具一式を売り込みに行ったんだけど、最初はその効果を信じてくれなくてさ、協力してくれた鉱夫も交えて説明会を開いたんだ。
鉱夫? ちゃんと協力費として飲ませてあるよ。
だからさ、もう協力者がわんさかになっちまってさ。
「よーし、今日は僕のおごりだよ」
「「「「「うおおおおお」」」」」
てなもんさ。
んでまぁ、鉱山主には内緒で使用してもらってたんだけど、どんなにガスがあっても心配無いってんで、早く正式に導入をしてくれって事になってさ、ぞろぞろ引き連れての談判みたいになったんだ。
そうしたらさ、やたら値切ってくんのよ。
どうにも鉱山の経営が巧く行ってないとか言われても困るんだけど、そこで商業ギルドの出番ですよ。
黒金貨20枚の査定じゃ到底無理って話になった挙句、鉱山の権利がそもそも黒金貨5枚って話になって、何時の間にか僕が経営する羽目になって、元の主に黒金貨5枚払って経営権委譲になっちまったんだ。
まあそうなったのなら仕方が無いと、エアラインホース式での採掘になってさ、ついでに鉱路にトロッコの線路を沿わしてさ、魔導列車みたいなのを走らせる事にしたんだ。
そうしたらやたら効率が上がってさ、前月の15倍の獲得量になったもんだから、いきなりの大黒字だ。
んで、全て込みでいくらになるかと商業ギルドに改めて査定をさせたらさ、黒金貨100枚って言いやがんのね。
何で増えたのかって聞くと、安全な採掘と効率的な運搬のせいだと言われてさ、画期的な方法だからと言うのさ。
確かにエアラインの魔導具が1つ黒金貨20枚って査定で3基稼動しているし、魔導トロッコの路線は日々延びている。
鉱夫はひたすら採掘するのみで、交代もそれに乗って出るから楽に交代もやれる。
魔導トロッコにも空気発生器が付いていて、交代要員はホースの接続を変えるだけで良いから安全ってな訳だ。
んで、鉱山の権利が5枚、空気が20×3で60枚、魔導トロッコが35枚で100枚って事になっているんだけど、はっきり言って路線を敷いただけ魔導トロッコの利益率がかなり悪いんだ。
その辺りを説明して、総延長84キラメトルって言ってやると、査定額が倍になっちまった。
ああ、キラってのはキロの事で、メトルはメートルな。
何かさ、大陸統一国家の頃にさ、向こうの人間が暗躍したみたいでさ、悉くもじったような名前になってんのさ。
そりゃ分かり易くて良いけどさ。
そんな訳で黒金貨200枚になった査定額を受けて、何時までも留まる訳にはいかないと、最後に鉱夫全員にたんまりと酒を振舞ってさ、お別れって事になって商業ギルドに全てを委譲する代わり、預金が黒金貨200枚分増えたんだ。
何だかんだで鉱山で1年過ごした訳だけど、街の隣の家もこの際、解体して移動しようかって思っていると、門番の彼女とバッタリ出会ってさ、あのお金はどういう意味かと問い詰められたんだ。
給与の一括払いって言ったんだけど、門番として給与は支払われていたから、もらう筋合いは無いって言うんだ。
だからつい、夜の分って言ったら引っぱたかれてさ、我ながら娼婦扱いをしちまったと反省して、日本式謝罪行動の最上位のアレをやったんだ。
THE、DOGEZAですな。
それでまぁ、許してくれたんだけど、今、彼女は僕の上に乗ってます。
え、? アッチの話じゃないよ。
はっきり言うとさ、押し負けたって言うのかな、門番辞めて付いて行くって聞かなくてさ、僕にしがみ付いたんだ。
僕はここでお別れって言ったんだけど、どうにも離れないんだ。
そのうちに周囲に人がわらわら集まってきて、妙な注目を受けるのも嫌だと街の外での話し合いにしようと思ったんだけど、責任がどうのこうのと煩くてさ、もうどうでもいいやって投げたんだ。
そのうち飽きたら自然に別れになるだろうって、そんな淡い期待を抱いてさ。
だけど僕はまた空の旅のつもりでいたから馬車の用意も何もしてなかったんだけど、さすがに彼女を連れて空の旅にする訳にもいかなくなり、のんびりと次の街まで歩いて行く事になったんだ。
いやね、風の刃の翼は良いけど、人を背負って生やすと危険だからさ、その工夫を何とかしているうちに、彼女が眠いって言い出したんだ。
なので横抱きにしていたんだけど、翼の段取りが何とか付いたのは良いけど、背中に背負う訳にいかなくてさ、背面飛行になったんだ。
んで彼女は僕の上で寝ているんだけど、屈折式前方探査魔法……早い話が寝たままでも前が見える魔法を急遽開発してさ、それで飛んでいるんだ。
それは良いんだけど、彼女、さっき寝返りをしようとしてさ、落ちないように支えてなんとかさせたんだけど、双丘が双丘がぁぁぁぁ……
何とかセーフティゾーンっぽい場所まで飛んで行き、テントの中に寝かせたのは良いんだけど、僕のテントどうしよう。
誰か鎮めてぇぇ……
~☆~★~☆
昨夜は悶々としているうちに、深夜目覚めた彼女によって僕は鎮められ、熟睡になった事をここに記しておきます。
それからは馬乗りで背中に乗るって事になり、僕も一安心と思ったんだけど、彼女ったらうとうとして前に寝ようとするんだよ。
そうなると背中に双丘が当たる事になってさ、毎晩僕は鎮められる事になったんだ。
そんな旅の内に、やれば出来るって事になり、教会で既遂結婚する羽目になっちまってさ。
え、既遂結婚? 出来ちゃった結婚な。
まあそうなればもう、馬車での移動のほうが安定するからと、馬車をタダで手に入れる方法を開発しました。
まあ、ショックアブソーバーを商業ギルドに見せてさ、査定と共に馬車に取り付けての試乗の結果、揺れが殆ど無いとかって絶賛されてさ、またぞろ査定金と共にそれなりの馬車を手に入れて、揺れない馬車での移動になったのさ。
タダで手に入れるつもりが黒金貨大量になった訳だけど、そっくり預金に入るから関係無い。
御者に困るだろうって思うだろうけど、商業ギルドには徒歩の行商人も多い訳で、御者してくれるならタダで荷物を運んでやるって言ったんだ。
そうしたらそこら中に居た行商人が押し寄せてさ、我も我もって凄い勢いなのさ。
どういう事情かと聞いたら、徒歩の場合は途中の安全地帯までかなり急がないと辿り着けず、早朝に出て夕方に何とか着けないと、夜の街道には何やらおかしなモノが出るらしい。
それでまぁ、御者はギルド推薦の人に決めて、退魔系の魔導具の開発を急いだ訳だ。
でもさ、毎回、箱型の魔導具ってのも芸が無いと思ってさ、銃型にしようと思ったのさ。
四角い箱で操作棒が付いていてそれを動かすと動作するって、少年愛好家の元ネタになった少年が出て来るマンガでさ、彼が持っている装置にそっくりだからさ。
しかもさ、通算28番目の開発魔導具となるとさ、意地でも違う形状にしたいと思った訳さ。
え? そんな古いのをよく知っているって?
まあ、映画もそうだけど、僕はかなり古い頃の色々な話が好きだったからさ。
付いた仇名が『遠浅』ってさ、広くて浅い知識だからだってさ。
確かに名前も浅見遠一郎ではあったけどさ。
そんな事はさておき、聖属性魔法発射銃はこうして造られた。
本当は馬車を覆うバリヤーみたいなのにしたかったので、銃を吊り下げて範囲にすると周囲に放射、手に持つと単体攻撃ってのにしたんだ。
それを見た商業ギルドがまた騒いでさ、査定査定と言い出したんだ。
さすがに銃そのものの形は拙かろうと、台所着火用ライターみたいな形状になったんだけどさ、何とかバスターっぽい話になってさ、探索ギルドも混じって開発権利の譲渡がどうのこうのって言い出したんだ。
結局、黒金貨100枚での権利譲渡になったんだけど、自分で使う分には構わないって契約にだけはしたんだ。
折角作っても使えないとか言われると困るしね。
その代わり、出発を遅らせてくれって話になって、彼女の出産まで滞在する羽目になったんだ。
もうね、何か作るたびに食指を伸ばされてさ、そのたびに滞在になっているんだけど、この大陸全て巡るのにどんだけ掛かるかもう分からないよ。
そうして僕指導の元で、ゴースト対策魔導具の作成が行われています。
完全聖属性の魔法なので、生きている人間には無害のうえ、憑依対策にも効くとあっては誰もが欲しがる品になっていたんだ。
しかも教会までが絡んで来てさ、是非にも神官御用達にしたい、とまで言い出してさ、どうすりゃいいのよ、全くもう。
預金がもうじき4桁になろうってのに、金とか要らないのに出すから混ぜろって言われてさ、もう断りようがないんだ。
しかも東の国の王族も絡んで来ているって話だし、下手に断るとどうなるか分からない有様だ。
でもさ、奥さんに手は出すなよ。
さすがに僕の我慢にも限度があるからさ、手を出したら消滅すると思って欲しい。
それとなくそう言ったのに、バカ貴族が調子に乗ってさ、奥さんが寝ている部屋に侵入しようとしてマクラを踏んじゃったんだ。
ああ、マクラってのはあのヘビの事な。
んで、食われた後に討伐とか言い出して、その頃にはマクラは専用マジックポーチの中に潜っていたんだけど、それを渡せって話になって、私財強奪って訴えたんだ。
ほら、僕にはマジックポーチが2つあるからさ、マクラのほうは物品倉庫に中に入れておいたんだ。
でまぁ、通常価格黒金貨数枚もする高価なマジックポーチが欲しくて平民から奪ったって話になり、王族まで絡んでいた魔導具の関連から王宮でも話題になった挙句、その貴族を何とかしてくれたら混ざっても良いよって話になって、そいついきなり取り潰しになってやんの。
おまけにマジックポーチは戻って来るわ、損害賠償みたいなのまでくれてさ、どんだけ参加したかったんだよって思ったよ。
あーあー、魔導具~28号~
彼は南の賢者(お師匠様)の元での修練で魔法の知識がかなり増えたうえ、懇意の魔導具屋での共同開発で魔導具造りのプロみたいになってます。
なので簡単に作っているつもりでも画期的な魔導具のようで、価値を知る者からは熱望される結果になっているようです。




