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悪夢との決別

 

 僕がその存在を知ったのは、中2の夏休み前の事だった。

 僕はずっと苛められていて、あの夏休みに世界から消えようと思っていた。

 そうして色々と準備していたんだけど、それが全部無駄になっちゃったんだ。

 つまり、僕はそのデスゲームに参加して、ゲームの中で消えようと思ったんだ。

 だけど、僕の目論見は水泡に帰した。


 何故だって?


 だってその世界は……


 僕にとって……


 ☆★☆


 余命いくばくもない老人や病人達。人生に飽きた人、自殺志願の人達など、リアルから消えなければならない人達向けのセカンドライフ計画。

 記憶や精神を可能な限りコピーして構築されたと言われるアバターに憑依しての、第二の人生と言う名のゲーム。

 その世界へのアプローチは基本的に、元の名前や家族の情報は消される事になりはするが、かつて生きてきた中での知識は持って行ける。

 もちろん、それすら要らないというのも可能だし、転生すら可能になるシステム。

 つまり、若い子は転移でも構わないが、老人には転生をお勧めすると。

 そして一度ログインしたらもう、ログアウトの叶わないゲーム。


 世界人口は留まるところ無く増えていき、かと言って産むなとも死ねとも言えない……そんな未来のものがたり。


 ☆★☆


 僕はずっと苛められていて……そりゃ最初は辛かったし痛かったし悲しかった。

 だけど人間って慣れるんだなって、本当にそう思えたんだ。

 辛さに慣れ、痛さに慣れ、そして悲しみとかは分からなくなった。

 そのうちに辛いって気持ちも分からなくなり、痛みはただの刺激になったんだ。

 それで気持ちは楽になったんだけど、どうしてだか気力が無くなっていったんだ。

 毎日刺激はあるけど、気分はそんなに悪くない。


 だってこれは当たり前の事なのだから。


 当たり前の事なのに変に思ったりはしないよね。

 だから僕は止まらない刺激の中でも気分は落ち込まない。

 ちゃんと勉強もするし、テストだってきちんと解いている。

 ただ、最近、どうにも物が無くなるのに困っている。

 破れた体操服とかは別に良いんだけど、エンピツやノートが無くなると勉強にならないんだ。

 でもそれもそのうち慣れて、頭の中のノートに記す事にしたんだ。

 だから教科書の中身や黒板の文字を、頭のノートに記せばそれで良くなったんだ。


 毎日の刺激の中でも僕は成績は落ちなかった。


 でも気力はどうしても弱くなるばかり。

 どうしてなんだろう、こんなに気分が良いのに。

 そんな風に思っていたんだけど、遂に破綻って言うのかな?

 今日は学校に行けなかったんだ。

 行こうとしたら道端に刺激を与える人が居て、裏道に連れて行かれて強い刺激を与えられて、学校に行きたくても歩けなくて……

 刺激の主はもう学校に来るなって言うんだ。

 おかしいよね、授業料払っているのに来るなって言うんだ。

 そういうの、詐欺って言うよね。

 そう言ったらまた強い刺激が来たんだけど、そのうちそれにも慣れたんだ。


 でも、もう気力が続かなかった。


 家に帰って部屋に篭り、僕はVRマシンをセットして、誓約書にサインをしてイエスボタンを押したんだ。

 本当は分かっていた……僕に何が起こっているのかを。

 でもそれを理解する事は僕の崩壊を招く事。

 だから必死で思い込んで思い込んで……それで成り切っていたんだね。

 だけどその許容が遂に越えちゃったんだ。

 人間には慣れもあるけど限界もあるって、その時に理解したみたいだよ、僕。

 だから父さん母さん、僕はあっちの世界に行くよ。

 行けばもう戻れない世界だから、あっちの世界で消える事にするよ。

 だって何処でも世界は同じだから、行けばまた刺激はあるだろう。


 でも、あっちなら迷惑にならない。


 これに入る事は認められているし、保険金だってもらえるはずだ。

 母さんがその保険に加入したのも知っているし、父さんがそのゲームの話題を食卓で出した意味も知っているよ。

 辛いならとっととあっちの世界に行っちまいなって事だよね。

 だって、刺激を与えているのは父さんの会社の上司の息子だから。

 下手に止めたら失業の危機、だけど僕が毎日傷だらけになって帰るのを見るのは嫌。

 大体、治療費も掛かるしさ。

 だからもう諦めているんでしょ?


 上司の息子は僕という獲物を見つけたせいで、上司の機嫌が良いらしいじゃないか。

 金遣いもおとなしくなったし、家で当り散らす事もなくなったらしいね。

 だから下手に転校もさせられないし、表沙汰にする事も出来ない。

 だけどこのままだと僕は自殺してしまう。

 そうなったら父さんも困るし、上司も困る。

 だからあっちの世界に勝手に行っちゃったって事にすれば、少なくとも父さんは困らない。

 巡り合せと諦めてそうしろと言うんだよね。

 そういうメッセージなんだよね?


 うん、そういう事ならそうするよ。

 僕は向こうの世界で自殺する。

 だから……さようなら。

 

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