第六話 日本の夢とブロンズナイフでの狩り
第四話[降りた]→[下りた]に直しました。
第五話 宿代払ってなかったので加筆しました。
ブロンズナイフを研ぎ終わらせて、【時・時計】で時間を確認すると。
【20:17】
「もう午後八時十七分か。…でも、この時計って日付は出ないのかな?」
すると、表示範囲が広がり。
【5/8 20:18】
に、表示が変わった。
(…え!?五月八日!…俺が死んだ日が、五月六日だったはずだ。そして、この世界に来て今日で二日目。なら、地球とこの世界の時間の流れ方は同じなのか?)
でも、もし地球と同じだとしても。特に何も出来ないし変わらないので、考えるのをやめた。
(でも俺が死んで、父さんや母さん。……そして忠兄さんにも、迷惑をかけてるだろうな。それに空海や星雪には、母親も早くに亡くしてるのに俺まで死んじゃって、辛い思いをさせただろうな。俺の事なんて気にしないで、幸せになって欲しいな)
家族の事を考えながら、地球での生活を思い出していた。
「父さん、母さん、忠兄さん、空海、星雪、…お休み。そして、……さようなら」
異世界なので、地球に居る家族に届くわけないのに、家族みんなに挨拶をしてから、今日は眠りについた。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
(…う、う~ん。朝か?)
目を開けるとそこは、昨日泊まった宿舎の部屋ではなく。
十数年以上も過ごした、自分の部屋だった。
(…どういう事だ!?今までの事は、全部、夢だったのか?…そうだ、皆は!?)
部屋を出て、一階に下りる階段に差し掛かると。
ピンポ~ン。
突然チャイムが鳴り、一人の男性の声が聞こえてきた。
「警察の者です。朝早くに、すみません」
「はい。…どうでしたか?」
一階に下りるとそこには、疲れ切った顔の父さんと母さんが居た。そして父さんが、警察官に何かを聞いた。
「現場検証の結果では、犯人に繋がる証拠は何もありませんでした。引き続き捜査はしますが、犯人は見つからないかもしれません」
「そう…ですか。…お手数掛けます」
警察官のその言葉に、母さんは泣き崩れた。そしてリビングから空海が泣きながら出て来て、俺の横を素通りして母さんに抱き着いた。
忠兄さんはリビングに居たが、顔は見られなかった。そして星雪は、俺の方を向きながら涙を流し、辛そうな顔で見ていた。
(やっぱり、星雪には俺が見えるのか?)
「…ん」
静かに星雪は頷いた。
(もしかして今、俺が死んだ話をしてたのか?)
「…ん」
(そうか。…そんな辛そうな顔されると、すごく罪悪感が生まれるな)
「……」
(でも、そんなに悲しまなくても。何の因果か、俺は別の世界で生きてるから。だから星雪にも空海にも、俺の分まで日本で幸せになってもらいたいんだ)
「…無理……だよ。……だって、…叔父…さ…んが……死んじゃったもん。………あたし…にも、お姉…ちゃん……にも。…叔父さん…は……特別な…人…だった……から」
星雪は、蚊の鳴くような声で途切れ途切れにそう言った。
(…そう言ってもらえるのは、嬉しいけど。でも俺はもう、その世界の住人じゃないんだ)
「…分かっ……てる。……こんな…力が……ある…から…余計に。…でも、……忘れる…事なんて……出来ない!」
「…星……雪。…どうか……したの?」
星雪の最後の一言が、思ったより大きな声が出ていたようで、空海が星雪に近づいて来た。
「……なんでも…ないよ」
「…なら、……いいん…だけど」
空海も星雪も、辛そうに泣いている姿を見ていると。不意に、体が重くなり意識が朦朧としてきた。
(どうやら、もう戻らないといけないみたいだ。星雪にだけ、押し付けるみたいで悪いけど。皆の事、頼むな)
「…ん」
最後頷いた後に、星雪は口を動かさないで俺の頭に直接語りかけてきた。
(叔父さんに頼まれたんじゃ、しょうがないね。家族の事は、あたしに任せて。……また、会える?)
(…う~ん?……たぶん、無理だと思う。ごめん)
(叔父さんが、謝る事ないよ。たぶん、そうだと思ってたから。……またね、叔父さん)
(!?…ふっ。あぁ、またな星雪)
そこで、意識が闇に落ちた。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「ユニサス君!ユニサス君!もう朝ですよ、起きて下さい!」
「…う、う~ん!?…あれ、ピンさん?」
「ふふ。寝ぼけているんですか?」
「ああ、すみません。故郷の夢を見てました。昨日の夜、思い出していたからかもしれません」
「あらあら。でも、ユニサス君は独り立ちしたんですから。今日生活するために、お金を稼がないといけませんね。昨日は武器も買って、あまりお金も残ってないんじゃないですか?」
「いや~それが~、…無一文です」
「…あらあら。それじゃあ、すぐに朝ご飯の準備するから早く下りて来なさい」
それからすぐに、一階に下りて行き。ピンさんの用意してくれた、日本風の朝ご飯を残さず食べ終わらせて、部屋に戻りブロンズナイフを倉庫に入れて門に向かった。
「おはようございます。いつもお疲れ様です!」
「少年も、いつも森に入って頑張ってるじゃないですか。応援してますよ」
「少年って、…あ!!そういえば、名乗ってませんでしたね。俺は、ユニサスって言います。これからも宜しくお願いします」
「そういえば、そうですね。ワタシは、クーリと言います。宜しくね」
「今日も、森に行って来ますね」
「気を付けてね」
門番のクーリさんに見送られ、転生してから毎日入っている。右側の森に入って行った。
(よし!今日はブロンズナイフを使って、狩りをしてみよう)
まずは、ナイフの扱いに慣れるため。倉庫から出して、右手に持ち。素振りをしてみた。
一回振った後は、何故か扱い方が分かるような気がした。その感覚が投擲スキルの時の感覚に似ていたので、ステータスを確認すると。やっぱり短刀剣スキルが増えていた。
(この分なら、もう大丈夫だろう)
短刀剣スキルによって、少し扱う分には問題なさそうなので、いつも通り〔気配感知〕と〔隠密〕を発動して森の奥に入って行った。
数分後。前方に、小さい気配を感知した。気配の大きさからネズミと判断し、素早く近づいた。
気配のする位置まで、数メートルの距離に近づき。目視で、茂みの下にいるネズミを確認した。
(ここまで近づけば、ブロンズナイフを投げて仕留められるだろう)
前回のウサギの時とは違い、心を決めてから。ブロンズナイフを、ネズミに向かって投げた。
しかし、ネズミはブロンズナイフにすぐに気付き。回避行動をとった。
だが投擲スキルのレベルのおかげで、投げる時の力の入り方が上手くなり、飛んでいく速度が速くなって、ネズミの尻尾を少し切り落とす事が出来た。
「やっぱり、気付かれた。まぁ尻尾には当たったし、スキルのレベルを上げていけば、スキル頼りでもどうにかなりそうだけどな。でも、なんで前回のウサギは反応しなかったんだ。…あのウサギが、とろかっただけか?」
あの時の状況を、思い出しながら。ネズミを追いかけた。
「それにしても、あのネズミの動き。なんか変になってるし、移動速度も今までで一番遅いな。やっぱり、尻尾が無くなった影響が出てるんだな」
なのでもう一度、ブロンズナイフを投げてみた。
今度は狙った通り、体の中心にズブリと刺さった。すると、ネズミの頭あたりに見えていた赤い模様が消えて無くなった。
「…まだ血生臭いのと、動物を殺す事には抵抗があるけど。前回よりは、だいぶマシになったな。やっぱり、気持ちの問題かな。前回は、どうせ当たらないからって。覚悟を、決めてなかったしな」
そうしてネズミの体から、ブロンズナイフを抜き取り。残っている尻尾の部分を左手で持ち、ネズミの体を持ち上げて血抜きをしていて、あまりの血生臭さに前回と今回の違いに気が付いた。
「そうか!あの時は、【風・風向】の魔法も発動してたんだ。そういえば漫画とか小説でも、狩りの時は風下に回るもんな!!」
自分自身で気付けた事が、あまりに嬉しくて上気分になってしまった。
魔法によって、自分の周りの空気をほとんど動かないようにしていたから。前回は今日と違い、強烈な血生臭さではなかったのだろう。
なので魔法【風・風向】を発動し、前回同様に俺の周りの空気を一緒に移動する。そして、血抜きを終えたネズミを倉庫に入れた。
「よし!俺の推測通りなら、これで簡単に狩っていけるはずだ!」
それからは、見つけたウサギやネズミをほぼ一撃で仕留める事が出来た。
そして太陽がちょうど真上辺りに来たので、時計で時間を調べると。
【5/9 12:03】
だったので、倉庫を発動した。
【倉庫内】
・薬草 9本
・上薬草 1本
・乾燥薬草 2本
・ネズミ 2匹
・ウサギ 2匹
倉庫内を確認し、最初の尻尾が少し短いネズミを出して、解体してみる事にした。
(まずは、内臓を取り出すのかな?…うん!?なんか、手順が分かってきたかも。…て事は、またスキルが増えたかな)
ステータスを確認すると、やっぱり解体スキルが増えていた。
なので解体スキルに頑張ってもらい、ネズミを骨と皮と肉に切り分けられた。
だがギルドが何を買い取ってくれるか分からないので、肉以外は倉庫に入れ直した。
そして近くの木の枝を、ブロンズナイフで切り取って先の方を削った。
調味料が無いので、その枝の削った方に素のままのネズミの肉を突き刺し反対側を地面に突き刺した。
「よし、あとは火だな。そこら辺に落ちてる葉っぱや枝に【植物・乾燥】の魔法を使えば、【火・種火】の魔法でも火は点くだろう」
それから黙々と作業を続けた。まず火を点けてから、ネズミ肉を焼き始め。そして暇な時間を使い、倉庫内の薬草類を全部乾燥した。
それでもまだ、肉が焼けてなかったのでステータスを確認してみた。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
ステータス
《ユニサス》
Lv.1 【ランクG】【¥0】
ジョブ:狩人
HP:50/50
MP:14/25
スキル: 短刀剣:Lv.2(NEW) 投擲:Lv.3(UP) 鷹の目:Lv.1 解体:Lv.1(NEW) 気配感知:Lv.3(UP) 隠密:Lv.3(UP) 暗視:Lv.1 鑑定:Lv.3 早成
魔法:自然魔法:Lv.1 【基礎】
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
と、表示された。
短剣スキルと解体スキルを新しく覚えた以外は、使用しているスキルのレベルが大体上がっていた。
でも鷹の目や暗視は、相変わらずにレベル1のままだ。鷹の目は、よく分からないし。暗視は、効果的にも夜しか使わなそうだし、街の中では安全だから使う必要もない。
「今度この森で、野宿でもしてみるか。それにしても、自然魔法も結構使ってると思うのに。まだレベル1のままだな。魔法の方がスキルより、レベルが上がりずらいのかな?」
ネズミ肉にちゃんと火が通ったみたいなので、さっさと食べ終わらせた。
「よし!お昼ご飯も食べ終わったし、午後も午前中のように頑張りますか!」
その後は、時計で時間を気にしながら。午後五時くらいに門に着けるよう、薬草採取と狩りをしながら森の中を歩き回った。
今日の収穫は午前中のを合わせて、薬草18本・上薬草4本・ネズミ3匹・ウサギ4匹で、内ネズミ1匹はお昼に解体して今は骨と皮だけだ。
だが、異世界に転生して初の大量の成果と言えるだろう。
早速ギルドに向かい、フレアさんに声をかけた。
「フレアさん、今戻りました」
「ん?あぁ、ユニサスかい。ちょっと奥の部屋使うよ」
昨日と同じように、他の職員に一言言ってから奥の部屋に入って行った。
なので俺も、昨日と同じようにフレアさんが入った部屋に入った。
「今日は、どうだったんだい?」
「はい!スキルと魔法の使い方に慣れてきて、武器も買ったおかげで今日は大量でしたよ!」
「嬉しいのは、分かったから。まず、今日の成果の物を出しな」
「そうですね、〔倉庫〕!」
フレアさんに言われて、まず今日採取して乾燥させた薬草18本と昨日の余りの乾燥薬草2本を合わせた。乾燥薬草20本を机の上に出した。
そして続けて、乾燥上薬草3本も出した。
「乾燥薬草20本で、1,000マドカ。乾燥上薬草4本で、1,000マドカ。他は?」
「ウサギとネズミを少し。あと、お昼にネズミを1匹解体して、食べちゃったんですが。骨と皮だけは、持ち帰ったんですが。…これは買い取ってもらえますか?」
「大丈夫だよ。骨も皮も、いろんな物に使えるから」
「じゃあ、残り全部出しますね!」
倉庫内に、入っていた。今日一日で狩ったネズミとウサギを、目の前の机の上に全部出した。
「…結構多いね。これが、今日の成果かい?」
「はい!そうです」
「じゃあ、まずウサギ4匹で4,000マドカ。ネズミ2匹で1,600マドカ。ネズミの、骨と皮で300マドカ。合計7,900マドカだね」
「冒険者の一日の稼ぎで、7,900マドカってどうなんですか?」
「実際、少ない方だよ。でもユニサスはまだ新人冒険者だから、この収入は多い方だよ」
「フレアさん、有難う御座います。此処で、生きていける自信が付きました」
それから、いつも通りに報酬を受け取り。その後に、宿舎に行こうとしたら。
「ユニサス。…明日は朝からギルドに来な」
「?…分かりました。フレアさん、お休みなさい」
「お休み」
宿舎に入り、ピンさんに今日の分の宿代を払い。ピンさん特製の夕飯に舌鼓を打ち。今日の成果を、ピンさんにも報告してから。軽く挨拶を交わし、自分の部屋に戻った。
(明日は、朝からフレアさんに呼ばれているので、今日みたいに寝坊は出来ないな。六時には、ちゃんと起きよう)
フレアさんとの約束のために、すぐに眠りについた。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
何が何だかよく分からかったし、都合のいい夢だったかもしれないが。
俺は、意識だけが地球の日本に戻って、星雪とだけ意思の疎通が出来て、家族みんなにお別れをした。
誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。
2017/8/6 改稿しました。
現在のステータス
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ステータス
《ユニサス》
Lv.1 【ランクG】【¥6,900】
ジョブ:狩人
HP:50/50
MP:25/25
スキル: 短刀剣:Lv.2 投擲:Lv.3 鷹の目:Lv.1 解体:Lv.1 気配感知:Lv.3 隠密:Lv.3 暗視:Lv.1 鑑定:Lv.3 早成
魔法:自然魔法:Lv.1 【基礎】
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