第五話 報酬で武器を購入する
こんなダメダメな私の作品にブックマークをしてくれた人が、少しずつ増えてくれています。
正直とっても驚きです。
いつも投稿する時は、ドキドキしています。間違いはないか、伝わりやすい文か。などなど不安で不安で、仕方がありません。
ブックマークをしてくれた方達が居るから、最後の一歩が踏み出せている気がします。
皆さん、有難う御座います!
今俺の目の前には、俺が殺したウサギの死体が転がっている。
この世界で生きていくために必要な事だと分かっていても、実際に自分の手で動物を殺してしまった事で、俺の心はなんとも言えない気持ちに包まれていた。
だが俺が奪った命なので、このウサギの死を無駄にしないためにも、日本で読んだ動物を狩る本のように、血抜きをしようとウサギの死体に手を伸ばしたが。その時、伸ばした俺の手が震えている事に気が付いた。
それも、しょうがない事だろう。何度も言うが、このウサギがユニサス(雪谷禎康)にとって、生まれて初めて、自分自身の意思で動物を殺した経験だったからだ。
今までは急に異世界に転生させられた事により、この世界での知識や力に圧倒され、生きていけるかどうかで頭の中に余裕が無かったから、動物を殺める事がどういう事なのかを、考えなくてすんでいただけだった。
そして自分でその事を自覚した俺は、この世界でこの先生きていけるのかと思いながら。嘔吐感と戦っていた。
「…う。お、おぇ。…ハァ……ハァ、大丈夫だ!日本にいる時に色々な人の話で、人間は慣れる生き物だとたくさん聞いた事がある。この世界で生活していれば、こんな事はすぐに日常茶飯事の当たり前の事になる。…大丈夫だ、大丈夫」
と、自分自身に自己暗示のように言い聞かせた。
そして血抜きのために、さっきウサギにぶつけた石を拾って、ウサギの喉を切ろうとしたが。角が尖っていてもただの石では、ウサギの毛皮が厚くて血管を切る事は出来なかった。
なので近くの木から細い枝をむしり取り、尖った枝の先でウサギの喉を突き刺した。
ズブリッ!
肉に刺さる嫌な手応えの後に、枝を伝いウサギの血が俺の手に触れた。
だが俺は何も考えないように心を無心にして冷静さを保ちながら、枝を引き抜きウサギの頭が下になるように持ち上げた。
それから血がほとんど出なくなるまで、その場で数分程立っていた。
「もう、いいかな。…ウサギは、倉庫に入れておこう。よし、じゃあ街に帰るか」
ウサギを狩った事をあまり考えないようにして、いつもと同じように門番の人と少し喋る事で、少し気持ちが軽くなるのを感じた。そして門を通り、街の中に入ってすぐに目的のギルド本部に向かっって走った。
そしてギルド本部のスイングドアから中に入り、いつもの受付に向かって行った。
「…あの、フレアさん居ますか?」
「うん?ああ、ユニサスかい。ちょっと待ってな」
「…はい」
数分後。
「お待たせ。…あれ!?今日は、収穫無しかい?」
「いえ。今すぐに、受付に出しますね。【倉庫】」
と声に出して言い、目の前には表示が出た。
【倉庫内】
・乾燥薬草 12本
・乾燥上薬草 2本
・ウサギ 1匹
倉庫に入れていた乾燥薬草2本以外の、乾燥薬草10本と乾燥上薬草2本そして最後にウサギ1匹を、受付の上に出した。
すると、フレアさんが驚いた顔をして言った。
「ユニサス!?今のって、まさか!?…魔法かい?」
「…?はい、俺の魔法です」
「ちょっと付いてきな、ユニサス。…奥の部屋、使うよ」
フレアさんは深刻な顔をして、他の職員に一言言ってから奥の部屋に入って行った。
なので、俺も続いて奥の部屋に入るとすぐに。
「ユニサス、少し聞くよ。…アンタの魔法は、どんな事が出来るんだい?」
「…自然に干渉する事ですが、どうかしたんですか?」
「ああ昨日話した、女神レニーアの祝福を受ける者はごく稀なんだよ。だからその魔法、今はこの奥の部屋でアタシの前でしか使っちゃだめだよ!」
「…どうしてですか?」
「この街にはいないと思うけど、レアスキル以上のスキル保持者やユニーク魔法の使い手を、罠に嵌めて無理やり犯罪奴隷にする人達がいるんだよ。だから少なくとも、自分の身は自分で守れるぐらい強くなるまでは、本当に信用できる人以外には話すんじゃないよ。分かったかい?」
「…分かりました。今後、気を付けます」
「本当に、気を付けなよ。…ユニサスは、何かと常識知らずだからね。…正直な話、アタシは不安だよ」
「…すいません。まだ此処(異世界)での、生活に慣れていないんです。あ、さっき受付に出した今日の成果を、置いて来ちゃいました」
「じゃあ、アタシが持って来るよ。ついでに報酬の金額も確認するからね」
そう言って、フレアさんは部屋を出て行った。
それから数分後、フレアさんが部屋に戻って来た。
「ユニサス、ウサギも買い取りでいいのかい?」
「買い取ってもらえるなら、その方がいいです」
「じゃあ乾燥薬草10本で500マドカに乾燥上薬草2本で500マドカで、最後にウサギ一匹で1,000マドカだから、合計2,000マドカだよ」
フレアさんの言葉に頷きギルドIDを出した。
「じゃあ、振り込むよ」
「はい、確認しました」
すぐに報酬を受け取り、ステータスを確認した。
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
ステータス
《ユニサス》
Lv.1 【ランクG】【¥2,000】
ジョブ:狩人
HP:48/50
MP:19/25
スキル: 投擲:Lv.2 鷹の目:Lv.1 気配感知:Lv.2 隠密:Lv.2 暗視:Lv.1 鑑定:Lv.3 早成
魔法:自然魔法:Lv.1 【基礎】
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「今日は宿代の1,000マドカを除いても、まだ1,000マドカ残るね。新しい服を買うか銭湯にでも行くのかい?まぁ服屋は、もう店を閉めてる頃だけどね」
「いえ、買いたい物があるので見に行こうかと。それに、銭湯があるんですか?」
「そりゃあ、あるに決まってるだろ!無いのなんて、想像したくもないよ。…いちよう言っとくけど、奴隷は買えないよ」
(どこをどうしたら奴隷が欲しい事になるんだろう?まぁ興味が無い訳ではないが、こっちの世界での俺の肉体はもう成人してる訳だし、精神的にはもうとっくに成人年齢超えてるもんな)
「…違いますよ。ただ、武器が欲しくて」
「微妙に間があったけど、まぁユニサスもお年頃って事だろうね。…で、買いたい物は武器かい。そうかい、そうかい。冒険者には、大切だもんね武器。………武器!?…あんた、武器も持ってなかったのかい?」
「…恥ずかしながら、一つも持ってません」
「だからウサギに目立った外傷が、何かで突き刺した痕しかなかったのか。じゃあ急いで付いて来な、武器屋も店を閉めてる頃だから!」
フレアさんはそう言うと、勢いよく建物の中をギルド内部を本部とは逆の方に走って行った。
なのでフレアさんを追いかけて、俺もギルド内部を走って行った。
この時に建物の中心辺りで、階段に腰かけた一人の少女を見かけた。少女は猫のような三角の形をした耳を持ち、細くて長い尻尾が存在した。髪の色はもう暗くて判別できなかったが、目は暗くてもよく目立つ銀色で、昔に少しの間だがよく見た目をしていた。
とても気になったが、今はフレアさんを追って武器屋に急がないといけないので、立ち止まらずに走った。
そしてフレアさんに追いつくと、フレアさんは小柄な女性と話していた。女性の身長は120~130センチくらいで、今の俺の身長よりも10センチは低いだろう。
つまり彼女はドワーフなのだろう。
「今日は、もう店じまいだよ!」
「悪いねぇ、でもこの子が武器を何も持ってないのにギルドに登録して、街の外を歩き回ってるんだよ。だから、今回は勘弁しとくれよ」
「…ふん!しょうがないねぇ。今回だけだよ。で、予算は」
「2,000マd「1,000マドカです!」」
俺の事なのに、俺が関わらない間に話が進みそうだったので、フレアさんが予算を言いきる前に俺が答えた。
「…どっちなんだい?」
「1,000マドカです」
「ちょっとユニサス!アタシが、今日の宿代は出すから。2,000マドカにしときな!」
「すいません、それは出来ません。ここでまた、フレアさんを頼りきったら。この先も、一人じゃ何も出来なくなってしまう。そう、思ったんです」
「でもねぇ」
「分かった、1,000マドカだね。その壺に入ってる短刀剣は、全部1,000マドカだよ」
「はい!ありがとうございます」
壺の中にある短刀剣は、形も長さもバラバラなので、一本一本鑑定スキルで〔鑑定〕していった。
ほとんどの短刀剣がレア度★と表示されるのに、数本のナイフとダガーだけがレア度★★と表示された。
その数本のナイフとダガーには、全て同じ共通点があった。
まず刃の部分が研がれてないので、潰れた状態になっていた。あとは刃の側面の部分には、「モカ」と彫られていた。
その中の一本のナイフを持って、武器屋のドワーフの女性に聞いてみた。
「あの、このナイフも1,000マドカなんですか?」
「…ああ、そうだよ。そこにあるのは、まだ成人してない子供が練習も兼ねて打った物だからね」
「じゃあ、これにします!」
「ふ~ん。でも、そのナイフは刃が研がれてないけど、本当にそれでいいのかい?」
「!?やめときな、ユニサス。刃も研がない職人の武器なんて危険だよ!そんな武器じゃ、鉄の棒と変わんないよ!」
「フレアさん、心配してくれてありがとうございます。でも、このナイフがいいんです。刃は、自分でどうにかします」
「…まぁ使うユニサスがそこまで言うなら、もう文句は言わないよ」
「はい、ありがとうございます。代金の1,000マドカです」
「…確かに1,000マドカ受け取ったよ。兄ちゃん、ユニサスって呼ばれてたねぇ」
「はい。俺の名前は、ユニサスって言います」
「ユニサス、アンタいい目を持ってるよ。ウチは、エポンって言うんだ。また武器が欲しくなったら、またウチの店に買いに来な!」
「はい!今日は閉店時間を過ぎてたのに、売ってくれてありがとうございます。また必要になったら来ますね」
武器屋のエポンさんに挨拶をしてから、ギルド本部の方に向かった。途中で見かけた少女が、もう居なくなっていたので、フレアさんに聞いてみると。
「たぶん、この前話した奴隷の子じゃないかなぁ」
「そうだったんですか」
(なるほど。…奴隷なら、あの目にも頷けるな。…あの子は、どんな辛い目に遭ったんだろうか)
ギルド本部に戻って来て、フレアさんにお礼を言ってからギルド本部を出て、俺は宿舎の在る建物の中に入った。
宿舎ではピンさんが、ちょっと心配そうな顔でいた。
「どうかしましたか?」
「あらあら。ユニサス君が、遅かったからちょっと心配しちゃったわ」
「すいません!?俺が武器を持ってなかったので、フレアさんに付き合ってもらって買って来たんです」
「あらあら、そうだったのね」
「ピンさん、今日の宿代の1,000マドカです」
「はい、確かに受け取りました。今日はギルドからウサギのお肉が届いたから、お夕飯はユニサス君の好きなご飯とウサギの焼き肉よ」
「それは、美味しそうですね。頂きます!」
「ふふ、召し上がれ」
ご飯は当たり前のように美味しいが、ウサギ肉には甘辛いソースが掛かっていて、その味がご飯に合っていたのでとても美味しかった。
「とても美味しかったです。特に肉に掛かっていたソースが、お肉の味を引き立てていてよかったです」
「あらあら、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ、あのソースはワタシの特製ソースなのよ」
「ピンさんの特製ソースなんですか、本当に美味しかったです。ごちそうさまでした」
その後、ピンさんと少し会話をしてから昨日と同じ部屋に行った。そして鑑定スキルで、ナイフをもう一度〔鑑定〕して見た。
《ブロンズナイフ》青銅で作られたナイフで、刃が潰れた状態。 レア度★★
と表示されている。
「これなら刃が潰された状態が、変化するか消えるまで研磨すればいいのかもしれないな」
なのでナイフの刃の部分に手を当てながら、自然魔法の【土・研磨】を使う事にした。
研磨し続けて、約十五分後。つまり約15回の研磨により、ナイフの鑑定表示が。
《ブロンズナイフ》青銅で作られたナイフ。 レア度★★
と、表示される様になった。
「これで明日からは、狩りもちょっとはマシになるかな」
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ユニサスは、自分自身の目とスキルで選び自分自身の魔法で刃を研いだ、初めての武器を手に入れた。
誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。
ステータス、変化なし。
2017/7/31 改稿しました。