閑話 《ルリン》
ボクの名前はルリン。生まれた街はパパとママの拠点にしていた街で、正直ボクは知らない。ママ(アン)と同じ銀の髪に青い瞳で、狼種のワービースト。
ボクがその街を知らないのは、ボクが生まれる前にパパが冒険に出て帰って来なかったからだ。
パパは、ママとボクのために一人で冒険に出かけたが、ボクが生まれても帰って来る事は無かったそうだ。ママは、パパと結婚の儀によりパパがもうこの世に居無い事を知っていて、クラン時代に頼っていたロア姉の母親であるエンジェママに手紙を送った。
エンジェママはイサ村を作り、十数人のワービーストと共に生活していた。まだ子供だったロア姉を、村の人達に任せてエンジェママと数人の村の人が、ママとボクを迎えに来てくれたらしい。
それからボクは、イサ村でロア姉と一緒に成長していた。ロア姉と呼ぶようになったのは、ママがロア姉のエンジェママを姉さんと呼んでいたからだった。
物心がついてきた頃にはパパとママの話をよく教えてもらっていた。
パパは、自分の事をボクと言っていたそうだ。それを聞いた後からは、ボクも自分の事をボクと言い始めていた。それからママは、パパがどんなにカッコ良かったかを語っていた。
普段は大人しく弱気だが、ママが危機に陥るといつも助けてくれたのはパパだったそうで、いつからかママはパパの事を意識していたそうだ。
剣の腕前は良かったが、人と争う事はしなかった。ママの事がかかわると、むきになって決闘も受けていたようだ。
今更だが、ママはパパにメロメロだったのだろう。話の内容は惚気ばかりだった。
村が無くなり、ロア姉と二人きりになった。
それからロア姉は、いつもボクと一緒にいてくれた。
アイツと出会うまでは。
アイツは、ロア姉やボクに近づきロア姉を誑かしていく。それからは、ロア姉をボクが守らなくてはいけないと独り胸の内で決意した。
だがボクの努力は何の意味もなく、ロア姉はアイツと契約してしまった。セインさんは家族契約と言ったが、これからはアイツの言いなりになるのだろう。ロア姉と一緒にいるために、しょうがなくボクもアイツと契約をした。
アイツは契約後も特に変わらなかったが、いつ本性を出すか分からない。本性を出されるまでがボクに残された時間だと考えて、ロア姉にボクの言葉を聞いてもらえるように精一杯頑張った。
そして昨日、アイツが一人で倒したらしいビックボアを、ボクも一人で倒した。これでロア姉も、アイツじゃなくボクの話を聞いてくれるだろうと、気持ちが高ぶり油断した一瞬に木の上に居たビックスネークに襲われた。
実際動く事が出来ずに、ボクは死ぬんだと頭の中を埋め尽くした。
ドンと体に衝撃があり、その後に苦しそうな息遣いが耳にかかる頃ボクは生きているんだと、実感して顔を上げる。目の前には苦しそうなアイツの顔があった。
どうして、道具のはずのボクを庇ったのか聞くと、アイツは迷う事無く『家族だからに、決まってるだろうが』と言って意識を失った。
それからはロア姉もクミも慌てていたが、空海の魔法と不思議な力でアイツを助けてくれた。
クミも、そのまま意識を失った。ロア姉は「良かった」と泣いていた。
泣き止んだロア姉が、ジブンが見張ってるからボクに寝るように言った。ボクも起きてると言うと、アイツに元気な顔を見せてあげて欲しいみたいな事を言ったので、寝る事にした。
寝ようとすると、不思議なくらいスッと寝る事が出来た。アイツの腕の中は暖かく心地よかったので安心出来たのだ。
目が覚めると、アイツはもう起きていた。目が合うと、今までと違って胸の奥がドクンッ!と鳴り顔が熱くなる。大丈夫なのか聞こうとすると、ドキドキして声が少し震えた。
ちょっと間があったが、アイツの返事が返って来た。大丈夫と聞いて良かったと思う。そして数回ボクの目で見て、本当に大丈夫な事を確認して自然と頬が緩みにやけてしまう。
そしてロア姉の言葉を思い出し、アイツの上から立ち上がりアイツに貰ったフィンガーグローブを着ければアイツ・・・いや、ボクの主で初めての兄。ユニ兄も喜んでくれるだろう。
ユニ兄から貰ったフィンガーグローブを着けた両手を前に出して似合っているか聞くと、今まで憎たらしかっただけの笑顔がボクに向けられた。
だがその笑顔は、今のボクには逆に嬉しくなり、いつまでもユニ兄と一緒にいたいと思わせる笑顔だった。
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