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異世界に《俺は転生》《姪は転移》した。  作者: ブルーアワー
第一章 新たな旅立ち 第四幕 勇者召喚された姪 《空海》
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第一話 人生の絶望と希望

第四幕スタートです!

 私の名前は、雪谷(ゆきたに) 空海(くみ)

 叔父さんが亡くなり、私の気持ちが絶望のどん底にあっても時間は刻々と過ぎていき、いつの間にか一学期が終わり私達小学生は夏休みに入っていた。


 そして今日は、夏休み初日にして私の十二歳の誕生日の七月二十日なんだよね。


「ほんとに、私はどうすればいいんだろう・・・」


 夏休みに入ったので学校に行く必要がなくなったが、その代わりに何をしていればいいのかも分からなくなり、カーテンで外の光を遮り暗い部屋の中で、私はベットの上で布団に包まって膝を抱えていた。


 そんな私の下に、うっすらと汗をかきその汗をタオルで拭う一人の少女が近づいて来る。

 彼女は私の妹で、雪谷(ゆきたに) 星雪(せいな)。星雪は日課の朝のジョギングに出ていたのだろうが、夏休みに入った事でいつもより長い距離を走って来たのだろう。

 星雪がいつもの距離を走っただけなら、タオルを使うほど汗をかかないはずだし、いつもより帰って来たのが遅い時間だったのだ。


「いつまでそうしているの空海お姉ちゃん」

「・・・」

「そんなんじゃ、おじさんも心配するよ」

「……そう、かな」

「そうだよ!あたしも、とっても辛いけど叔父さんのためにも前を向いて生きていこうって決めたんだよ。だから空海お姉ちゃんも、叔父さんが好きだったいつもの元気なお姉ちゃんに戻ってよ!」

「ア、アァーーーーーーーーーー!」


 私の淡い恋心は、星雪の『叔父さんが好き』と言う言葉に強く反応し、ダムが決壊したように目から涙が流れ続けていた。


 涙が枯れて落ち着くと、ずっと傍に居てくれていた星雪がしょうがなくといった感じに話し始めた。


「…ふぅ。信じてもらえないかもしれないけど、あたしには霊魂なんかが見えるの」

「・・・」

「…それで、叔父さんが亡くなった数日後に叔父さんの魂が家に来ていたの」

「!?そ、それで叔父さんは!」


 私は星雪の話に居てもたっともいられなく、とっさにベットから飛び出して星雪の両肩を力いっぱい掴んでいた。


「い、痛い!落ち着いてお姉ちゃん!」

「ア!?ゴ、ゴメン星雪。でも、早く叔父さんの話を聞かせて」

「はぁ、分かった。叔父さんはこう言ってた。『俺は別の世界で生きてるから。だから星雪にも空海にも、俺の分まで日本で幸せになってもらいたいんだ』って、それから意思疎通の出来たあたしに皆の事を頼むとも。だから空海お姉ちゃんは、叔父さんのためにも幸せにならないと…」


 そんな事を言われても、私の幸せは叔父さんと一緒にいる事だった。

 将来的に結婚も出来ない相手だとは知っていたけど、それでも叔父さんと生きていきたかった。


 私達の間に沈黙が続いていると急に、頭に直接女性の声が聞こえてくる。


『今居る世界に絶望せし、力ある勇者達よ!ワタクシ達の世界は、今この瞬間も危機に陥っています。どうか今の世界からワタクシ達の世界を救いに来てくださいませ!』


 え!?今の話はどういうこと、今居る世界からワタクシ達の世界と言う事は別の世界、つまり異世界に行く事が出来ると言う事だよね。

 今の話を信じるなら、叔父さんが生きてるかもしれない世界の可能性もある。


「星雪は今の話どう思う?」

「……?今の話って、あたしがした話の事?」

「え!?さっきの女性の話だよ!…もしかして、聞こえなかったの?」

「何を言ってるか分からないけど、ここにはあたし達二人しかいないよ」


 やっぱり星雪には聞こえてなかったようだ。なので俄然さっきの話に信憑性が増した。

 私にしか聞こえなかった女性の声、そして異世界の話。叔父さんがファンタジー小説好きで、私も少しだけ推測が出来る。女性の声が頭に響いたように聞こえたのは、たぶん異世界の魔法によるものだろう。


 だから、私は決めた!


「私、行くよ!!」


 私が声に出すと、足元が強く光り輝き魔法陣が浮かび上がった。


「え、なにこれ!?お、お姉ちゃん!」


 星雪が私に向かって右手を伸ばす。私はその手を両手で包むようにして握った。


「星雪、ごめん!私は異世界に行くよ!!だから、お父さんの事お願いね」

「ッ!?あんな人の事はどうでもいい!だから空海お姉ちゃん、あたしも一緒に連れてって!!」


 星雪の言葉に、やはり星雪も異世界に叔父さんを探しに行きたいのだろうと感じた。

 でも女性の声が聞こえなかった星雪は、異世界に行く事は出来ないだろう。


 私は星雪を見て微笑する事しか出来なかった。その私の顔を見て星雪は目を見開き絶望の顔をしていた。


 その瞬間足元の魔法陣がより一層光り輝き、私は部屋から姿を消した。

 そして一人残された星雪は、さっきより暗く感じる部屋で膝から崩れ落ち、床に座る形で涙を流していた。


 その薄暗く感じる部屋で、空海が握っていた星雪の右手が薄っすらと光っていた。


 ❖ ❖ ❖ ❖ ❖


 一瞬の眩しさが止むと、そこは見た事もない広間だった。

 足元には白い粉のような物で魔法陣が描かれていて、周りには私と同じ境遇らしき人達が立っていて周りをキョロキョロ見てから、口々に本当に異世界なのかと呟いていた。


 そして私…いや私達(十人以上)を囲むように、数人のローブを羽織った人達が立って…いや一人の女性を残して皆倒れた。

 残った女性も、着ている水色のドレスと同じように顔面蒼白だったが。


「よくぞ御出で下さいました、勇者様方。ワタクシは、このセタ王国第一王女にして皆様を召喚した、マリン・セタと申します。これ程多くの勇者様方が御越し下さいました事、心から感謝します」


 第一王女と名乗る女性の話が終わると、一人の男性が前に出て質問した。

 男性は高校生化大学生くらいに感じ、とても男らしい顔つきをしていた。


「一つ聞くが、ここは本当に異世界なのか?」

「は、はい!間違いなく、勇者様方の居た日本国ではありません!!そしてワタクシの事は、どうかマリンと御呼び下さい」


 男性の質問に、第一王女のマリン姫が緊張しているのかよく分からない顔でで返答した。

 だがこの時、私達の中に疑問が生まれた。なぜマリン姫は『日本国』と断定したのか。

 確かに、私を含めて一瞬の内にこの場に集まって居るのだろうから疑いようのない異世界だと思うのに、ならなぜ異世界の姫が私達の国を知っているのかと。


 だが、その疑問もすぐに解決する。王女に聞いていた男性がドスを利かせた声で聴き返したのだ。


「マリンとか言ったな、なぜ日本の事を知っている?」

「!?ス、スミマセン。何か気に障るような事を言ってしまいましたでしょうか?」

「ここが本当に異世界なら、なぜ日本の名が出てくるのかが知りたいだけだ?」

「それなら、ご安心下さいませ。ここはまごう事なき異世界ハーピアに御座います。ワタクシは初代王妃にして、初めての勇者召喚をなした曾お婆様から異世界日本国の事を聞き及んでいます。曾お婆様は日本国で亡くなり、この世界に転生したと言っていました。そして成人した日に、元の世界である日本国から初代国王様を含めて七人の勇者様を召喚したと聞きました。…なのでワタクシも、日本国で絶望している力ある勇者様方に限定して召喚しました」


 マリン姫の話が事実なら、なぜ星雪には声が聞こえなかったのだろう。

 最後の星雪の言葉からは、叔父さんの最後の頼みだから無理をして頑張っていたが、絶望はしていたはずだし日本にもいた。

 では力が無かったと言う事なのか、だが私には見えない魂を見る事が出来た星雪に、力が無いとはどうしても考えられなかった。


「マリン姫、私も一つ質問いいですか?」

「…えぇ、どうぞ」


 一瞬だが、マリン姫の眼光は鋭く私を睨んだがすぐに笑顔になり、どうぞと促してくれた。

 少し怖かったが、ここで聞かなかったら後で後悔すると心を強く持ち質問した。


「ショ、召喚に関して、他に限定した事はありませんか?」

「…これといって、有りませんね。強いて言うなら、成人しているかどうかです」

「え!?……私、まだ成人してませんが」

「俺も!」「あたしも!」「僕も!」


 と、私以外の人もほとんどが()()()より下のようだ。だがマリン姫は、私ならともかく他の人を見て不思議な顔をした。


「では、貴方はいくつなのですか?」

「十いt!?いえ、今日十二歳になりました!」

「そうですか、ワタクシと同じ誕生日ですか。なら貴方は今日成人したのですね」

「…え!?……成人って二十歳じゃないんですか?」


 周りを見回すと、同じ日本から来た人達が驚いた顔をしていて、そして来た時に倒れた人達の内の数人が意識を取り戻し、その人達は何を言っているんだと言う顔をしていた。


「今の反応から、勇者様方は皆成人していると言う事で間違いありませんね。では、ID(身分証)登録を致しましょう。皆様、こちらへ」


 マリン姫に続いて行くと、耳が長い金髪碧眼の女性が待っていた。多分あの人はエルフなのだろう。そのおかげで、一気にファンタジー感が増した。


 さっきは動揺してしまったので思考が停止してしまったが、星雪が召喚対象にならなかったのは歳が関係していそうだった。


「では勇者様方、ここに居るシンリーの指示に従ってください」

「では勇者様方、一人ずつワタシの前に来てください」


 いつの間にか私達は一列になり、私の前には最初に姫に聞いた男性が居て私の後ろに一人の男性が並んでいた。

 前の男性の番がきて少しすると、前で騒ぎが起こった。前の男性のこの世界での職業が、なんと本当の勇者だったのだ。


 騒ぎが治まり私の職業も分かったが、私の職業は神官で今回の勇者の中で最低だったようだ。


 その日の夜、私達勇者を無事召喚出来た事から宴が行われた。勇者のジョブだった鬼同(きどう) 勇武(いさむ)の下には第一王女マリン姫など、同じ勇者の中でも最高ランクのジョブだった者達が集まっていた。


 だが私に近づいて来る者はいなかった。私は夜空が見えるバルコニーに歩いて行き、この異世界に叔父さんが転生している可能性に思いを馳せていた。


 少しすると、後ろからコツッコツッと近づいて来る足音が聞こえてきた。

 振り返るとそこには、私と同年代のピンクのドレスを着た少女が立っていた。

 少女は恐る恐る私に聞いてきた。


「勇者様ですよね?」

「…はい、……いちようは」

「?…申し遅れました、ワタクシはセタ王国第二王女ヒナ・セタと申します。少しご一緒させてもらえますか?」

「!?うん、喜んで♪私は雪谷空海、くみって呼んでね♪私も、ヒナちゃんって呼ぶから♪」

「!?」


 異世界に来て初めて普通に話しかけてくれたヒナに、嬉しさのあまり王族とかそうゆう事を忘れて、日本の友達に話すように喋ってしまった。

 ヒナの驚いた顔を見て、「あ!?」と思った時には後の祭りだったが「まぁ、いっか」と考えた。


「では、クミ様h」

「くみ、だよ!ヒナちゃん」

「……、クミ…ちゃん」


 様付けで呼ばれるのが、何か嫌だったので訂正してもらうために強めに言った。

 また驚いた顔をしたがすぐにキョロキョロ周りを見て、恐る恐ると言った感じに名前を呼んでくれた。


「うん♪なに、ヒナちゃん」

「…クミちゃんは、どうしてこの世界に来てくれたの?」

「う~ん。マリン姫が言っていた世界の危機に、私も力になれたらいいなって思ったのも本当だけど。異世界なら私の叔父さんが転生した世界の可能性が、ほんの少しでもある事でこの世界に希望があったからかな」


 私はヒナに自分の意思を伝え、自分自身にも言い聞かせていた。

 この先、この世界で居るか居ないかも分からない叔父さんを探すと言う事は、広い海の中で一粒の砂金を見つけ出すようなものだからだ。


 だがこの時の私には、ゼロよりはよっぽどいいように感じられた。

誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。

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