第一話 ハーピア創世神話と亜人達
こんな私の作品に読んでブックマークをしてくれた人が、一人居てくれた事に嬉し恥ずかしの今日この頃。
今後どうなるか分からないので、ブックマークしてくれた方もつまらないと感じたら気軽に消してくれてかまいません。
ですが読んでくれて、有難う御座いました。
突然お爺さんが声をかけてきた事で、ちょっと驚いたが言葉が分かるので少しだけ冷静になれた。
「…お爺さん、ちょっと聞きたいんですが。ここはいったい、何処ですか?」
「ああ、ここはミルキーウェイに続く街道の途中じゃよ」
まず最初に、今の状況を確認するためにお爺さんに質問してみたが、律儀に答えてくれた。そのままお爺さんは話を続けた。
「それにしてもキミの青い髪と紺色の瞳は、暗い夜に見たら噂に聞いた勇者様みたいに、黒髪黒目に見えるんじゃないか。もしかして、勇者様の子孫とかかい?」
お爺さんに言われて、俺は自分の髪に手で触れてみた。確かに髪が青くなっていたが、瞳の色は正直分からない。しかし、体が全体的に幼くなっている事には気付いた。
なので、否が応にも認めるしかなかった。
(やっぱり俺は車に轢かれて死んで、あの小部屋でルリと名乗った女性が言っていた通り、異世界に転生したんだろう。それにお爺さんの話を信じるなら、勇者の外見から勇者も日本人である可能性が高いし、俺みたいに転生者もいるかもしれない。それに俗に言う転生者特典なのか分からないが、なぜか言葉は通じてるし、お爺さんからこの世界について、もう少し情報を集めてみよう)
頭の中で今後の方針を決めてから、お爺さんの質問に答えておく。
「親からそんな話は聞いた事ないので、たぶん違います。…あの、俺は何でお爺さんの馬車の荷台に乗ってるんですか?」
「そりゃあキミが街道の途中に倒れていたから、近くの村からミルキーウェイに冒険者になりに行く途中だと思ったんじゃ、それに魔族に襲われないか不安だったから乗せてあげたんじゃが。…もしかして、違ったかい?」
この世界には、ファンタジー小説で有名な冒険者と魔族が存在するようだ。そして、このまま乗っていけば、少なくとも冒険者になれる街には行けそうなので話を合わせておく。
「いえ、お爺さんの言う通り、冒険者になりに行く途中だったんですよ。お爺さんのような優しい人が助けてくれて、とてもよかったです」
「そりゃあ、よかった。まだ当分は街に着かないから、退屈凌ぎにハーピアの創世神話を教えてあげよう。―――」
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
―――昔々。《創世神トアーケン》様は、まず人を生み出そうとしたが、生み出せなかった。なぜなら、人が存在する事が出来る場所が無かったのだ。
そこでトアーケン様は、まず広い空間である世界を創りだし、そこに光源として球体の《源石》を創り出した。源石はありとあらゆる光を放ったが、トアーケン様が求めていたのは明るい光と暗い光の二種類だけだった。
そこで源石を二つにする事にして、中心から半分ぐらいの質量の球体を取り出した。取り出された中心の石は黄金に輝き、中心が無くなった残りの石は白銀に輝きながら空洞になった中心に向かって崩壊した。そして白銀の石は衝突し合って、黄金の石より一回り小さい球体になり、その周りに小さな白銀の石片が無数に出来た。トアーケン様は、まず黄金の石を〈太陽〉それから白銀の石を〈月〉、そして〈月〉の欠片を〈星〉とした。
それからトアーケン様は、世界の中心に〈太陽〉と〈月〉の直径の約五倍の惑星ハーピアを創り、そしてハーピアを挟むように、ハーピアから約五十万キロメートル離した位置に〈太陽〉、正反対の位置に〈月〉と〈月〉を中心に広がる〈星〉を動かして、〈太陽〉を人々の暖かい想いを受けて燃えるように熱く明るい光を放つ黄金の衛星にして、〈月〉と〈星〉を人々の冷たさを吸収して凍えるように淡く暗い光を放つ白銀の衛星と衛星の輪にした。それから〈太陽〉と〈月・星〉が、ハーピアの周りを同じ軌道・同じ速度で回り続けるようにした。
しかしハーピアにはまだ光源が存在するだけで、人が住める環境ではありませんでした。なので人が生きていけるように、空気や水。そして動植物などの人に必要な物を創り、人々を生み出しました。
そして最後に、〈太陽〉には〈天使〉を〈月・星〉には〈悪魔〉を守護者として創りだし、人々の邪魔にならないように、〈天使〉には《天界・ゼグドン》を〈悪魔〉には《地界・アイビルク》を創りそこに住まわせて、人々の住む《人界・ハーピア》を中心に界層を隔てました。しかし相反する存在である〈天使〉と〈悪魔〉は、人界に来ては戦争を始めました。
だが、いくら争っても決着はつかず。仕方なく、〈天使〉と〈悪魔〉は代表者による話し合いにより、それぞれ一億の兵を創りだし代理戦争をさせて、先に全滅した側の負けと決めた。だがこの代理戦争は、数年で突如終わりを告げた。
人々はやっと訪れた平和を手に手を取って喜んだ。しかし、平和な日々は一年も経たずに《魔神》と魔神の生み出した《魔族》により壊された。そして今、人々と魔族による戦争が続いている。―――
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
「―――と、まぁ魔族と前線で戦っているのが、キミがなると言った冒険者って訳じゃ。ちょっと長くなってしまったな。年寄りの長話でつまらなかったかい?」
「いえ、とてもいい話が聞けました」
「そうかい。お、街が見えてきたぞ」
お爺さんの言葉で前を見ると。
確かに大きな建物らしき何かは見えてきたが、あれが何なのかは遠すぎてよく分からなかった。
それから馬車に揺られる事、数十分後。見えていた建物が城壁だった事が分かり、街道の先には門らしき場所があるのも見えた。
そして城壁の周りには、城壁を覆うように森が広がっていて、小さい頃に遊んでいた日本の森を思い出していた。
(あの頃は本当に楽しかったな、大自然が遊び場で毎日が冒険の連続だったよな)
それからまた数分後、やっと馬車は門らしき場所に着いた。
すると、詰所らしき場所から槍を持った女性が一人出て来て、もう一人の女性が詰所からこちらを窺っているように見える。詰所には少なくとも、二人は居るようだ。
「その馬車止まって下さい」
女性は門番だったらしく、門に近づいて来た馬車を止めに来たようだ。
お爺さんは馬車を止めて、門番の女性と話し始めた。
「ミルキーウェイに、何の用ですか?」
「ワシはちょっとした用事で来たんじゃが、彼は冒険者になりに来たそうじゃよ」
「そうですか。…まだ時期じゃないですが、まあ成人してすぐ来る方もいますし、おかしくもないですね。では、《ID(身分証)》を提示して下さい」
「これでいいかい?」
そう言ってお爺さんは、首に掛けていた紐が通っている無色透明な留め具に嵌っている、大きいビー玉サイズの無色透明な双角錐の石を指で持って見せていた。
そしてお爺さんが持っている石は、綺麗な光を放っていた。
「はい、…大丈夫です。お通り下さい」
「あの俺持ってないんですけど、通っていいんですか?」
「?…ああ、大丈夫ですよ。街は、初めてですか?IDは成人してから街で登録するんですが、この大陸の人達はゲン担ぎのためにこの街で作る事が多いので、IDをまだ持ってない若者がよく来るんですよ」
「そうなんですか、色々教えて頂きありがとうございます」
「いえいえ、気にしないで下さい」
「話は終わったな。じゃ、行くぞ」
そして俺達は門を通り、城壁の内側に入る事が出来た。
門の中に入って気付いたが、城壁が円を描いた様に街全体を囲って築かれていて、街の中央から城、居住区、畑そして城壁となっていた。城壁の中で一番外側の畑は広い範囲に広がっていて、居住区は狭い範囲に建物が密集していて、そして街の中心部にはとても立派な城が建っていた。
そしてお爺さんの馬車は、門の前の大通りを街の中心部の方へ向かって走って行く。
大通りを行き交う人達を見ていて、やっぱり異世界なんだと。俺は実感していた。
なぜなら行き交う人達の中には、外見的特徴はほとんど変わらないのに、獣の耳と尻尾がある人がいたり、綺麗な顔立ちで耳が横に長い人や、耳が少し上向きに尖っていて背が小学生並みしかない人。そして最後に、身長が約十五センチ程度しかなく、背中に透き通った羽があってその羽で空を飛んでいる人なんかがいた。
「どうしたんじゃ?」
「いえ、あの人達がちょっと気になって」
「うん?…もしかして、亜人を見るのは初めてか?」
「はい」
「じゃあ、目的地に着くまで亜人について教えてやろう。亜人には―――」
❖ ❖ ❖ ❖ ❖
―――《木人族》・《鉱人族》・《獣人族》・《翅人族》・《鰭人族》・《竜人族》の六種族が存在し、全ての種族に共通して女性しかいない。
・エルフ――植物を好み、森に村や街を造り生活している。耳が長く顔が綺麗でスタイルがいいが、胸が大きくなる者はとても稀で胸にコンプレックスを抱いている者がとても多い。亜人の中でも長寿で知識がとても豊富で、肉体的には弱いが魔法が得意で魔法道具などの作成もする。魔法に関しては右に出る種族はいない。
・ドワーフ――鉱物を好み、鉱山などの近くで村や街を造り生活している。耳が少し上向きに尖っていて背がとても低くそのせいか胸も大きくなく背や胸にコンプレックスを抱いている者がとても多い。亜人の中でも腕力が強く魔法の素質は火属性か土属性のどちらかの属性になるのがほとんどで、鉱物に詳しく金属製の武器・防具などの鍛冶仕事に関しては右に出る種族はいない。
・ワービースト――草原や森を好み、村や街を造り生活している。獣の耳と尻尾を持ち、亜人の中でも特に仲間を大切にする者が多くて身体能力にも優れている。それぞれの種によって、耳や鼻そして目などの優れた器官が違い、索敵に関しては右に出る種族はいない。しかし魔法に関しては、亜人の中で一番不得意でまともに使える者はまずいない、とされている。
・フェアリー――秘密を好み、独自の文化があるので魔法を用いて隠れ里を造り生活している。身長が最高でも十五センチ程度にしか成長せず、亜人の中でも一番非力だ。背中に四枚の透き通った綺麗な翅があり、空を自由自在に飛ぶ事が出来る種族。亜人の中で一番短命で成人年齢も10歳と、他の種族より二年も早い。踊りが好きで踊りに関して右に出る種族はいない。魔法も踊りながら魔法陣を描く事によって使い、里も広い魔法陣の中に造り隠しているらしい。あと成人すると一日に一時間程度なら、他の種族並みの大きさになれるらしい。
・マーメイド――水中を好み、海の中や海岸などに村や街を造り生活している。亜人の中でも陸地では人と区別がつかないが、水に入ると下半身が魚の様になり水の中で生活する事が可能だ。しかし、一日に三十分は水に浸からないと病気になる事があるらしい。歌が好きで歌に関しては右に出る種族はいない。魔法も歌の旋律によって使う補助系の魔法だ。
・ドラゴメイド――山中を好み、火山や雪山などで生活している。亜人の中でも一番長寿で身体能力に優れ体も丈夫な事もあり、あまり子孫を増やそうとせずとても少ない。耳の上あたりから角が生えていて、コウモリのような翼があり、トカゲのような尻尾を持っている種族。魔法を身に纏って戦い、とても強くて戦闘に関して右に出る種族はいない。
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「―――と、まあこんな感じじゃな。分からない事はあったかい?」
「1つだけとても気になる事があるんですが」
「うん、何じゃ?」
「亜人には女性しかいないって最初に言ってましたよね」
「ああ、そうじゃよ」
「じゃあ、どうやって子孫を残すんですか?」
「そんなの決まってるじゃろ。人族の男と子供を作るんじゃよ」
「でもそれだと、種族としての個性が失われていってしまうのでは?」
「何でかは知らないが。生まれてくる子供は、母親側の種族で生まれてくるんじゃよ」
「そうなんですか」
(俺の髪の色が、青い事から何となく考えていたけど。人族以外は、全て女性と言う事で確信した。この世界は、俺のアンケートの回答に関係しているとみて間違いないだろう。性別・楽しかった時・好きな色を参考に体を変え、それ以外の質問で世界を選んだ。だから青い髪に、深い青色とも言える紺の瞳。そしてお爺さんの話で分かった、この世界の成人年齢の12歳。つまり最後のハーレムについての質問が、この世界を最終的に選んだ理由だろう)
「よし、目的のギルドに着いたぞ」
お爺さんが、唐突にそんな事を言って右側の建物を見ていたので、俺もつられて見てみるとそこにはスーパーマーケット程の木造二階建てで瓦屋根の建物があり、大きくカタカナでギルドとなっていた。
そして入り口らしきスイングドアが右側・中央・左側の三箇所あり、それぞれ上に違う看板らしき物が存在して、右から漢字で本部・奴隷・武具となっていた。
(この世界には、奴隷制度でもあるのだろうか)
ちょっと複雑な感情が胸に込み上げてきたが、お爺さんの一言でそれどころではなくなってしまい。奴隷の事が、頭の中から吹き飛んでしまった。
「一番右がギルド本部じゃ、さぁ行くぞ」
「…え!?お爺さんも、一緒に来てくれるんですか?」
「ここまで来たんじゃ。登録までは、付き合おうと思ってたんじゃ」
「ありがとうございます!実は、ちょっと不安だったんです」
お礼を言って馬車の荷台から降りた俺と御者台から降りたお爺さんは、ギルド本部のスイングドアを開いて中に入って行った。
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こうして俺は、この世界での初めの一歩を踏み出した。
誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。
2017/7/7 改稿しました。