いざ王宮へ!
再びトイレへ転移。
この転移スポットも変えたいな。いつまでもトイレとは。
騒動が収まってどこかに家でも借りられればいいんだが。
街並みを歩く。ちょっと深めのローブを羽織って顔は隠れている。
ギルドの前を通る。
そういえばギルド登録したんだっけ、せっかく登録したのに。犯罪者になったら無効かな。
城には跳ね橋があり、その周囲は水で覆われている。
堀で侵入を防ぐためにあるだろうが洋風の城だと見栄え重視なんだろうな。
跳ね橋の前に兵が二人か。
「止まれ、この先は見ての通り王城しかない。何ようだ」
兵に呼び止められる。
そりゃそうか。
まあ、考えていたセリフがあるし大丈夫だ。
俺はさっき剝ぎ取った紙を見せながらフードを取る。
「シント・アル・ウントを連れてきたぞ。金200万リフトもらいに来た」
兵は目をぱちぱちさせながら手配の絵と俺を見比べる。
すると一人が警備隊長に確認しに行きます!といっていなくなる。
「ちょ、ちょっと待っててくれ!今上に取り次ぐ!」
あら、すぐに取り押さえではないのか。
しばらくすると兵装に身にまとった女性が出てきた。
「この者がシントと名乗った少年か?」
「はい、お触れの紙を所持しており、見比べても瓜二つです」
「そうか、中に入れよ」
「いいのですか?似ているだけで素性はしれませんが」
「構わん、男であることに違いはないのだし、ましてや子供だ。こんな子供一人に城がどうにかなるようなら警備体制の見直しをせねばならん」
「わかりました」
なんだかすんなり通れそうだな。都合はいいけど罠じゃないんだろうか?
即死トラップ以外なら何とかなるだろうけど・・・。
「ついてこい」
城の門をくぐり場内に入る。
内装は白と黄色を基調とした洋風建築。地面にはレッドカーペットが引いてあり、馴染みのない俺はちょっと気おくれしたりして。
外の兵は男だったが、内部の巡回兵はすべて女性だ。ということは魔法が使えるのだろう。
中の警備はそれだけ厳重ってことかな?
ひと際大きな扉の前に立つ。牢獄ではないだろうし、途中にあった扉の3倍はある。
失礼のないようになっとだけ警備隊長は言うと扉を開ける。
「失礼します!シント・アル・ウントと名乗る似た人物を連れてまいりました!」
扉をの奥を見ただけでわかる。あれは王座だ。
ということは左に座っているのが王で、右が王妃か?
なんで直接こんなところに?
半ばまで歩くといったん兵に止められる。
「ふむ、手配書に瓜二つだな。どれエレルを連れて確認するか」
「そうですね。それが一番早いでしょう」
女官らしき人がそそくさと部屋を出ていく。
エレルっていうのは確か俺が案内した女の子か。
身なりはいいし世間知らずだからいいところのお嬢様だとは思ったがまさか王女だとは。
王女が町を出歩くなんて思ってもみなかったしな・・・。
「エレル様まいりまし「シント!!」
エレルはトテトテと効果音を出しそうな感じで駆け寄ってくる。
「会いたかったわ!ごめんなさいシント!」
「いや、えっと!?」
あれ?今指名手配中だよな俺?
「い、いけません姫様!危険ですよ!」
女官の一人が追いかけるように走ってきた。
「危険ではありません!」
「エレン・・・じゃなかったエレルどういう?」
「姫様を呼び捨てにするとはなんと無礼な!」
ああ、そうかえっと・・・
「いいのですよシント。エレルとお呼びください。あなたにはお世話になり、その上恩を仇で返すような無礼をこちらが働いたのですから」
「エレルよ、まずはこちらにおいで、話をしないとシント君も混乱してるようだ」
「はい、そうですね」
王と王妃の前に立ちエレルは会釈する。
町であったときとは違い、ドレスに身にまとう彼女は気品高く感じる。
「シント・アル・ウントで相違ないようだな」
「はい、間違いありません。この者は間違いなくシント・アル・ウントです」
「そうか」
「シントさん、あなたは自分の今の現状をおわかりですか?」
「げ、現状ですか。王女の誘拐か何かの罪状で200万の賞金を懸けられたということでしょうか?」
「ち、違います!あの200万はですね」
「エレル、私が説明します」
王妃からいままでの経緯を聞くとなんともまあ・・・。
あの200万という金額は懸賞金ではなく尋ね人求む!の報奨金だったらしい。
王女誘拐の罪状は世間に出回る前に王妃が差し止めエレル王女が逃げまどって困っているだろうということから発行されたものだ。
今まで隠れてた俺の苦労はいったい・・・。
「して、今までどこにいたのだ。国中総出で探しても見つからない場所におったのだろう」
「え・・・えっとっ」
これなんて答えればいいんだ!?森のさらに奥にある他種族の集落にいたっていうわけにもいかないよな?
かといって実家の領の横の魔の森潰して国作りましたっていうわけにも・・・
「言えぬか?悪いが脅威とはなるとは思えんが一応拘束させてもらうぞ」
「お父様!」
「エレル、いくらこちらに落ち度があろうとも素性や人間性まで安全なことがわかったわけではない」
王の言うとおりだ。このままだと完全に不審者だし・・・。
「も、森の奥で暮らしてました。穴を掘ってウサギや野草を食べつないでいままで」
「ふむ、ならずいぶんと小奇麗な格好で3か月もおったのう」
うっ・・・俺の服は物々交換で手に入れたエルフ製の服だ。たしかに逃亡生活をしてるならおかしい奇麗さだ。
「これは城に行く前に行商人から買ったものです。家から持ち出した金品もありましたので」
「ならその行商人はずいぶんと学がないと見える。なにせ200万もの大金の顔を覚えていない行商人なのだからな」
ダメだ、完全に何を言ってもダメらしい
「そ、それは・・・」
「別に取って食おうというわけではないのだ。真実を語ってくれればよい」
真実は話せない・・・集落にも恩義はあるしこれで争いになるのは・・・。
待てよ・・・なんで俺は自分の能力を隠すことを優先してんだ?集落を守りたいならこんなもん話してやればいいさ。
「お話し致しますが・・・かなり滑稽に聞こえる内容です」
「いいわ、話してちょうだい。私も真実を聞きたいわ。いかに5歳の少年が我が国の兵を掻い潜ったのか」
「では・・失礼して」
スゥ…
俺は光学迷彩を発動した。
「き、消えた!なんと!?」
「これが私の能力です」
「なんと・・・男が魔法を?」
「攻撃力はありません、そして完全に消えてるわけではなく見えなくなっているだけなので殴られればダメージを負いますし、刺されれば死にもします」
「いやそれを持ってもすさまじい力だ」
「女王陛下、この力は危険です。これでは暗殺なんて簡単に行えてしまう力ですぞ」
女王の周りの家来?宰相?の人たちが手をあげ言う。確かにその通りだ。
「デメリットもありそうだな。完全に消えたというわけではなさそうではないか?」
「はい、女王様の言う通り、私を認識してから消えると違和感が強く残りある程度どこにいるかが見えたと思います」
「それはデメリットに入りませぬ!結局は物陰で力を使ってから城に侵入すればいい話ではないですか」
「確かにな。その力は隠したくもなるか…」
「お父様!お母様!お願いです!シントはそんなことしない!するならとっくに行っているわ」
お姫様がかばってはくれているが
「姫様、今は敵対心がないですが、出来てしまうとうところが重要なのです。もしお金をつかまされたら?家族を人質に取られやむを得ずに行ってしまったら?そこが重要なのです」
「そ、それでもシントは・・・」
出会ったばかりである俺をそこまでかばってくれるのは純粋に嬉しかった。
「ありがとうございます、姫様・・・」
「シント・・・あなたの人生を私は・・・」
大丈夫です。なぜなら・・・
「王女様、王様・・・今日は確認に来たことが2つありましてお伺いしました」
「ん?申してみよ」
「1つ、私の家族はいま何をしていますでしょうか」
「家族は今、お前さんを探すために地方の領地へ行って探しておるよ。使いを出しておいたから戻ってくるだろう」
「ということは犯罪者でもなく無事なのですね・・・」
「ああ、1か月間手配されてしまい、色々なもめごとはあったがこちらの責ということでもめごとは全て引き受けたからな」
「・・・でしたらもう一つお聞きします。私が亡命を今ここでお願いしたら可能でしょうか?」
「亡命・・・国を出たいということか?」
「はい」
「やはり!他国の間者ではないのか!」
周囲にいた家臣たちが一斉に騒ぎ出す。
「静まれ!今は王家とウント家長男と話しておるのだ!」
女王が一括を入れると家臣たちが絶句しシーンと静まりかえる。
「で、国を出てどうする?」
「私の力はすぎた力のようですので、国を出て正式にロダ王国と和平を結びたいと思っています」
「個人と国で和平?聞いたこともない提案だな」
「私は個人で国を興します。私が国王となりますので」
子供の戯言だと臣下たちが騒ぎ出す。
「国など興せまい、この大陸に余っている土地などないぞ。ロダや帝国に内に国を宣言するなら内戦となる」
「いえ、私が領地とするのは魔領地です。あそこならば問題はないですよね」
「あそこは不浄の住めぬ土地。魔物が蔓延り木々がうっそうとしている」
「あそこなら問題ないという確約さえもらえれば私は今亡命を宣言し、新たら国、パレスを建国を宣言します」
「絵空事です、女王陛下。ここで見えなくなるという常識外の力をごまかされないようお願いします」
「・・・いくらこちらに落ち度があろうとさすがに子供の妄想話に頷くことはできんな」