自重しない国作り2
円状に高々と囲われた壁がそびえたち
壁の周囲には環境を整えるための小川が流れる。
壁の中には西洋風にまとめられたレンガ造りの家がいくつも立ち並ぶ。
中央には木造の大きな屋敷のような建物が建っている。
さらにその裏の奥には石造りで5階建ての建物がそびえている。
「完成だな」
俺はここにプチ王都を作ってしまった。
広大な敷地を生かし民家を敷き詰め5000人規模の住宅を確保した。
商業区画や工業区画と分けて働き場所も作った。
有事の際に対して壁には開閉式の隠しバリスタが搭載されており迎撃が可能。
空を責められることも想定し壁の上にも駆動式バリスタを搭載した。
「なんかおもちゃを与えられた子供みたいなことをしてしまったな」
作ってる最中はもはやブロック遊び。
際限なく使えるブロックを使いどんどん作ってしまった。
「地下にはこんどレールでも走らせて地下鉄でも作りたいな」
思った以上に広くなってしまったため、町の中の移動は徒歩では厳しいものがある。
円状に移動できる地下鉄でも考えておこう。
まあ・・・これだけ作ったけど
「住む人はいないから巨大なゴーストタウン・・・いやゴーストキングダムかな?」
街だけ作ってしまい満足してしまった。
あるあるだな・・・だよね?
「このまま放置しても賊が住み着いて荒れそうだな」
住む人を早急に決めなければならないが難しい問題だな。
せめてどこかにはぐれ者でも・・・
「ああ・・・区別してるのは俺もか」
賊が住み着く?いいことじゃないか。
俺は2億円の賞金がかかった男だ。それに比べたら賊なんてかわいい物だ。
なんで俺はえり好みなんかしてるんだろう。
日本に住んでいた時の常識のせいかな。
「荒れるなんて上等だ。なら対策をして有無を言わせなければいい」
俺はまた町に戻ると街づくりを開始した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
3日が経過し壁の中の町は様変わりを遂げた。
区画を整理したのだ。住、商、工ではまったく足りない。
『誰』でも住める都市にしてやろうと思い立った。
賊でも犯罪者でもいい。亜人、エルフ、人間、魔物
どんなものでも抱え込める町に。
「完成だ・・・」
俺だけの理想の町・・・。
名はなんと名づけよう・・・俺だけの家・・・パレス
そうパレスだ。俺だけの世界。
もとの世界の知識をフルに使いつくりかえた。
外見は西洋風のままで作り直した。
区画を細かく割り地上の移動の手間を省いた。
地下1階には移動式連結トロッコが走り物資の移動を楽にしている。
一般人の移動には使われないがここで商業の円滑化を図っている。
地下2階は居住を中心としたスペースだ。地上に住みきれない人はこちらも住むことが出来る。
ほんのりとうす暗くどちらかというと人間以外の種族が住みやすいだろう。
地下3階は娯楽施設を並べた。
賭博から子供が遊ぶ遊具まで考えうる施設がそろっている。
広さが町と同じ大きさなのでとんでもない広さだ。遊びつくすのに何年かかるだろうか。
地下4階は犯罪者の町だ。
犯罪経歴のあるものたちはここで暮らすことになる。
軽犯罪から重犯罪まで死刑という制度はとりいれず全てここで暮らして貰う。
この地下4階で暮らす限りは何をしても自由だし一般市民と変わらない生活が出来る。
娯楽施設はないがそれはおいおい住む人たちが何とかするだろう。
多少の奉仕活動の義務があるが死罪よりはいいだろう。
地下5階は魔物の町
町と言えるかわからないが洞窟のダンジョン状態にしてある。
捕まえて来た魔物たちをここで放逐しておいてある。
地上に出ることができないように高さは約300mほど
空を飛ぶ魔物に対し効果のあるようにミスリル製の有刺鉄線を引いてある。
餌はなにを食べるかわからないのでとりあえず適当にほおりこんでどうなるか要観察だな。
地下5階まである国
パレスがここに誕生した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「あの方はまだ見つかりませんか?」
「はい、それらしい人をみたという情報が何人かあがってはいますが」
「そう・・・あれからずいぶん経ちますが」
「も、申し訳ありません」
「あなたに申したわけではありません・・・独り言です」
「国内をまた探して参ります」
ふかぶかと頭をさげ部屋を出て行く。
「シント・・・どこにいるの」
エレル・コムスコープ・リンガ
この王都ロダの王女にして最高権力者の一人である。
6歳という歳だが王と妃は英才教育としてすでに国職に娘を携わらせていた。
「エレル様・・・少しご執心が過ぎませんかな?」
隣にいる女性は私のアドバイスをしてくれる大臣。
私のお父様と親しいが私のサポートとして付けてくれたのだ。
「国として不貞を働いてしまったのよ。これでも足りないくらいだわ」
「ですが無実と決まったわけではないのですよ?」
「限りなく無実と判断されたでしょう。王都に来て1日目、辺境の貴族の5歳、そして男性」
「ですが今日まで我々の捜索を掻い潜っております。ただの男とも思えませんな」
「それはこちらが無能というだけでは?」
「手厳しいですな」
あれから国はシントを犯罪者として挙げた。
だが私がすぐにお父様に説明をして取り下げてもらったのだ。
しかし説得や手続きに1ヵ月日にちがたっていた。
そのあとシントの家族に説明をした。
シントを探すために家族達は家を引き払い領民を隣の領地へと移動させ今も王都で探索を行っている。
子供ので足での移動だ。近くの森で彷徨っている可能性は十分あると毎日王都周辺の森を捜索している。
私たちは城壁の管轄に子供が抜けた形跡をないと確認した為国内部を探しているが2ヶ月間その行方はわからないままだった。
「こんなことがあるのかしら・・・子供一人を国中が探して見つからないなんて・・・」
見つからない為お触れを出した、金額を吊り上げ誰の目にも止まるように探し人のお触れを
それでもこの3ヶ月間シントを見たものはいなかったのだ。
「何かの物陰に隠れて国の外に出てしまったのかもしれませんな」
「なら・・・」
「・・・死体が出れば幸いでしょうが魔物の腹に収まってしまえばそれも絶望的かと」
泣きそうになる。
王女として振舞っているがまだ6歳という幼い年齢だ。
遊び、笑い、楽しむ時期なのだ。
私のせい・・・あのとき私が抜けだしてなければ・・・
シントにわがままを突き合わせてなければ・・・
ルメを止めるだけの説得力をもっていれば・・・
私のせいだわ・・・全て私の
「エレル様・・・」
――――――――――――――――――――――――――――――――
「そうかあの子はそんなに辛そうか」
「ええ、王女としての自覚は芽吹いたことは大変喜ばしいことでしたが」
「それだけ代償があってはな・・・」
「エレは今は?」
「今はお眠りになっております。心労がたたっているのかもしれません」
王座に座る二人。
バイアス・コムスコープ・リンガ
ライナ・コムスコープ・リンガ
このロダ国の王と妃である。
「苦労かけるな」
「いえ、これが務めです。未来の女王となるお方の力になれるなら」
「少し甘やかしすぎたか・・・領民一人の命を一喜一憂していてはとてもこの先はやっていけないだろう」
「貴方、エレはまだ子供ですよ。人の生き死ににまして自分が関わっていたら辛くもなります」
「だがもうかなりの月日も立っていよう」
「あら、私が死んだら貴方はこのくらいの月日で忘れてしまえるんですのね」
「それとこれとは」
「知りませんよーだ」
「まったく・・・娘の件だが」
「わかっております。ですがエレル様は自分で乗り越えることができましょう」
「頼んだぞ」
「お願いね」
宰相である男は扉をゆっくりと閉め部屋を出ていく。
「エレは優しい子に育っているのね」
「父親としては嬉しいが女王としては・・・な」
「いいじゃないですか、国民のために一喜一憂し憂いることができる女王になるのですから」
「それでは国外の敵になめられるし、王としても民からなめられる。なにせこの先つらいことだらけだよ」
「そうね。でもあの子は強いわ。昔の私なら諦めてしまっているもの。あの頑固さは誰に似たのかしら?」
「・・・まだ子供だ。これからだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――
「ハイパーむなしいタイムだなぁ」
国レベルの規模の建築が終わり、見回してみるが無音。
これほど孤独が虚しいとは思ってもみなかった。
森の中ではそんなこと考えてなかったのに人が住んでない建物を見るとこうも辛いとは。
せっかく作ったけど消してしまおうか?
いやいや、あれからさらに1週間、温泉街、貿易センター、農場、漁場まで作ったというのに。
とくに漁場なんて海を直接地下から引っ張って来ているのだ。
これは結構大変だったし、力も使った。
まあ、いらなくなったら放置でもいいか。
別に壊す必要はない。俺が手入れをしていかなければ補修する技術も追いついてないだろうからいずれ風化してなくなるだけだ。
それよりも今後だ。
国が敵になっている状態をどうにかしないといけない。
住むのはここでもいいが、俺が住んでるのがばれるのは時間の問題だろう。
そうすれば国は俺を捉えにやってきてしまう。
ぶっちゃけこの問題はどうしようもない気がしている。
だって逆の立場だったら2億の賞金首だなんてどんなことをしてくるかわからないから問答無用で無力化するだろう。
対話の必要なんてない。まずは捕まえて無抵抗にしてからの話になるだろう。
なら城に乗り込む?それこそかけげなしの犯罪者だろう。
一番正しいのは・・・正面から訪問だよなぁ・・・。
めんどくさいことにはなりそうだけど、襲われたら反撃すればいいし、弁明できるならすればいい。
問題は女尊男卑のこの世界で俺の発言はどこまで有用なのかだが、これは考えても仕方ないか。
せっかくチートみたいな能力があるんだ!何ひ弱な考えしてるんだ。
俺は最強!俺はチート!俺は支配者・・・あれなんか歪んだぞ?
とりあえず正面から訪問爆撃じゃ!