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自重しない国作り

「ラーム肉むっちゃ美味かったですハイ」


「誰に言ってるんだ?」


エルフ長は首をかしげこちら怪訝そうな目で見ていた。


「なんでもないやい!」


ちょっとした現実逃避だよ!


集落に戻った俺たちは魔物の解体と祭りの準備に追われあれよあれよとフィナーレの宴に突入していた。


ラーム肉は極上のヒレ肉のように口の中で蕩け前世でも食べたことのない一品だった。

貴重品っていうだけはあるな。


いくら家の周りを色々改造していて能力が不思議とか思われていてもあのワームを倒すような力だっていうのに・・・。


「難しい顔しとるね。何が不満なんだい?」


「いえ、不満はないですけど納得というか何というか」


「はぎれが悪いねぇ」


「長も言っていたじゃないですか、異型の者と…」


「ああ、言ったね」


「ならあれだけのことを男がしてしまったなら何か言われたりするものかと」


あきれたような表情をしてため息混じりに長は言った。


「馬鹿だねぇ」


「え?」


「いや、私に対する評価が低かったのかね」


「長に対する評価?」


「舐めるなよ小僧?エルフの『長』が在住の許可を出したんだ、意見するものがいると思うな」


背筋に寒気が走る。そうかまた驕っていた…。

俺がいくら便利な能力をもって普通の人間よりも精神が育っていようとも相手はそれよりも長寿。

全てのエルフをまとめる『長』としての資質をもった俺よりも格上の存在なんだということに。


「フォレストワーム程度で満足していたらそれこそ足元をすくわれるよ、精進しな」


「はい、ありがとうございます」


勝てないな。力云々の話じゃない。だてに前世合わせても俺よりも長寿じゃないってことか。

能力以外にもいろいろ鍛えないといけないな。


祭りは夜中まで続き全員が寝静まるまで明りが消えることはなかった。




―――――――――――――――――――――――――――



能力がばれてからいくばくか立ったがみんな普段通りの接し方で変わることがなかった。

杞憂だったけど拍子抜けというか俺のあの覚悟は・・・思い出すと恥ずかしい!!!


でも、この反応は普通じゃないんだろうな。

能力がばれても恐れられないのはこの集落の人たちが理解あり優しいからだ。


王都ではこうはいかなかっただろうし…。

そう考えると冒険者登録は浅はかだったかもしれない。


だから俺は悪くない…。


ちょっと自重がしなさすぎたかもしれない。

俺の家はばれてもいいんだという思いから魔改造に歯止めが利かなくなっていた。


水車小屋を建ててついに電力を確保。

エナメルを生成して街灯を作って家の周りを明るくした。

もちろん家のいたるところにも電灯を設置してある。

家はすでに3階建てになっており、住まい、作業階、倉庫と1つになっている。


前の家は解体して生簀を広げ大量の川魚を飼育している。


家の横には地下を数百キロ堀って強制的に源泉を引っこ抜いた。

通常の源泉よりはるかに温度が高かったので地熱を使って燻製場を広げたりもしてある。

家横には石と木で作った露天風呂を作った。

やっぱ風呂は大切だよね。


ちょっとやりすぎたかもしれない・・・。


個別で見ると水車小屋の近くに家と外風呂があり畑と池があるこじんまりとしたす、住まいだし・・・


「お前の家は来るたびに魔窟になっているな」


魔窟!?


「カーミアか」


「お前がこっちに来てから3ヶ月は立ったけどここの変わりようは数十年を思わせるよ」


やりすぎたらしい。


「長が呼んでるんだ。ついてきてくれるかい?」


「長が?」


何の用だろう…。


―――――――――――――――――――――――――――


「失礼します。シントをつれてまいりました」


カーミアが扉をあけると長達がそこには集まっていた。


4人の長が全員ここに?


「カーミア御苦労だったね。仕事に戻りな」


「はい」


カーミアが扉を閉めて出て行く。


「座んな」


「はい」


さすがに長4人ともなると重圧が違う。緊張するな。


「どうだい鬼の?こいつの目は」


「あーもう大丈夫だろ。来たときとは違う落ち着いた目をしてる」


落ち着いた目?


「焼き鳥はどうだい?」


「焼き鳥じゃないよ!!そうだね警戒心もほとんどないかな?」


「無口は・・・聞いても無駄か」


「・・・・・・・悪くない」


「おお!久々に声聞いたなぁおい!」


長達がドワーフの長がしゃべったことに盛り上がる。俺も初めて聞いたわ。


「ここに呼んだのはお前さんのこれからを決めようと思ってね」


「これからですか?」


「人の国の動向…気になるんだろう?」


「!」


動揺を隠せなかった。気にならないわけがない。それでも少しでも忘れようと何かに没頭したりして

誤魔化してきてはいたが他人から指摘されて表情の変化を押さえられるほどではない。


「もちろん気になります。家族が今どうなってしまっているのか…」


落ち着いた今の俺ならわかる。俺の指名手配はもうどうでもいい。でも家族は…。


「ならそろそろ元の世界に帰りな」


「え?」


「あーそのなんだ、出て行けってわけじゃねーぞ。お前には鬼達も世話になってるしな」


頭を掻きむしりながら鬼の長がばつの悪そうに言った。


「これ以上いたらたぶん人間のところに戻ろうって気も消えちゃうよ?」


鳥の長に言われて否定できない自分がいた。


無理やり忘れようとしてはいたけど最近は無理じゃなくても何か忙しいとぽっかりと忘れてしまえるようになってきていた。


「本人も心当たりはあるようだねぇ」


「・・・・・・・・・・どうする?」


「お・・・俺は・・・」


どうしたいんだ?


戻ってどうする?家族が悲惨なことになってるのを目のあたりにするだけかもしれない。

人間達に追われて今度は俺の首もはねられるかもしれない。

今度は俺が人を・・・


「お前さんにはいくつかの選択技があるさね」


このままここで暮らすスローライフコース

人間と和解し昔の生活に戻るコース

冤罪を償い牢屋生活コース

集落を出てさらに放浪コース

人間と全面戦争コース


「こんなところかね?」


最初の次の以外碌なのがないな・・・。


「まあお前はまだ若いし焦ることもないんだがこれ以上先延ばしてもどっちつかずになるだろ?」


「だーかーらー私達長で話し合ったの。人族さんの気持ちを聞こうって」


「・・・・・・・・・・後悔してからじゃ遅い」


「・・・最初から決まってます」


「ほぉ?」


「俺は国を作って自分の住みやすい場所を作るつもりでした」


「国?大それた話持ち出してきたね?」


目を丸くして鬼の長は俺のほうを見つめてくる。


「最初は許嫁や縛られる生活から逃れるためでしたけど・・・今は目的がかわりました」


「俺の生きられる国を作ります、生きることを失わせない国」


「生きられる国ね・・・子供の妄想にしてはなかなか壮大だ」


「ですね」


「エルフの長こいつは・・・」


「本気さね。目を使うまでもないね」


「だろうなぁ」


4人はため息をついてしまう。

それもそうか5歳の子供が言うことじゃないし説得力もない。


「計画はあるのかい?」


「はっきり言って具体的な計画はありませんけど・・・自重しないつもりです」


俺の能力は自重しなけれ国の1つや2つは建国できる力を有していることがわかってきた。

建物のみに絞ればどの国家にも負けない強固な国が出来ることだろう。


「あんたが自重しないでやったら周りの国々が沈みそうだねぇ」


「違いねぇ」


長達はみな苦笑いをしている。目が笑ってないです・・・。


「これからどうするんだい?」


「国に戻ってみます。追われたままでは落ち着かないですし、いざとなれば滅ぼしてきますよ」


「ほ、滅ぼしちゃうのかい?」


「・・・いや冗談ですけど」


やっぱ滅ぼすのはまずいよね?人殺しにもなっちゃうだろうし路頭に大量に迷わして間接的に殺しちゃうだろうし・・・。


―――――――――――――――――――――――――――


「そうか行くのか」


カーミアに挨拶をしていく。これから集落を出て人族のところに戻ることを伝えた。


「何かあったら戻ってこい。お前の家もあるんだしな」


「はい!」


集落の外に出ると急に孤独感に襲われる。

元いい大人がさみしさを感じるなんて…と思うと笑えてくるのが不思議だ。


それだけここの住み心地はよかったんだろう。


俺はロダ王国へと転移した。



―――――――――――――――――――――――――――



前にトイレに転移場所を作っといてよかった。


ロダの街並みに出ると相変わらずの人込みだ。

だが行動するのには助かるかもしれない。手配書で俺の顔はばれてるかもしれないし。

と、そうだ手配書の張り出されていそうなとこでどんな出来栄えか確認するか。


広場にたどり着くとボロイ掲示板に張り紙がいくつか張ってある。


これだ・・・っとどれどれ?


いくつか張ってあるお知らせやらなんやらの中にそれはあった。


【シント・アル・ウント 】

【探し人 金200万リフト】

【遺品届け時は金50万リフト】


これだ…。


200万リフト・・・途方もない金額だ。日本円なら2億ってところか?

すげえや遊んでくらせるじゃん俺捕まえたら。


自分で自首したら貰えないかな?って馬鹿なことしか思いつかないや。


とりあえずこの場所からは離れよう…。


ロダでは正直動きようがない気がしてきた。

あれだけの賞金だ。市民の印象に一時的に根付いた恐れがある。

すれ違う程度ならまだしも話しかけたら一発アウトの可能性だって出て来た。


せめて家族の動向が追えればいいんだけど・・・。

家に戻ってみるか・・・。

近くの森に一度転移して遠くから覗いてみよう。


俺は一度トイレに戻り家の近くへと転移した。


「到着っと・・・」


家の方学へさらに目視転移を繰り返す。だが・・・。


「あれ?方向間違えたか?」


そんなはずはない。転移を使うことによってかなり空間把握能力は高くなっている。

場所を間違えるなんて・・・。


「家がない?」


俺は自宅まで来ていた。いや正確には自宅のあった場所か。


何もない更地になっていた。


「はっは・・・そうか・・・」


察してしまった。国家反逆罪の息子がいたのだ。家は奪われ地を追われたのだろう。

手配書には家族の名前はなかったしおそらく全員・・・。


「俺のせい・・・か・・・」


やはり逃げたのは間違いだったのだろうか。捕まっても転移で逃げられたのだ。

玉砕覚悟で無実を叫ぶべきだったのか。

今となっては全て手遅れだが・・・。


俺は暗くなるまで元の家に立ちつくしていた。


「どうしようか・・・」


このままここにいても仕方ない。

俺には残された選択技も少なかった。

ロダと戦うのは・・・やっぱり気が引ける。

帝都に逃げる?手配書が回ってる可能性も考えると行ったことない国はかなり危険だ。


国か・・・でも場所が下手なところに作ると魔物とかもいるし・・・。


ん・・・そういえばどうして俺の家は更地になってるんだ?

自慢じゃないが結構立派な家だったし国が攻めて来たとして傷んでも壊すよりは流用したほうがいいはずだ。


そういえば・・・


昔父の書斎で地図を見せてもらった時ここは魔領域に囲まれて防衛施設を引かないと暮らせない土地だと教わったな。

なら領民はどうなったんだ?この家がなくなって納める人がいないはずだけど・・・。


俺は転移をして領内を回った。


「領内にも家がない・・・完全に放棄されたのか」


もともとここはロダの領内でも辺境で不便な土地だった。それでも材木資源は確保できるため残されていたんだ。だけど領主がいなくなって存続が厳しくなって移転でもして放棄されたのだろう。


「・・・やれることもないし」


俺は森羅万象を発動した。

かまいたちを発動。魔領域となっている森を全て刈り取る。

木々が一斉に倒れ景色が見渡せるようになる。

次は土地隆起凹んでいるところや出っ張りのある土地を全てなだらかにしていく。

魔領域にいた魔物が一斉にこちらに向かってくる。

視界の開けたところに俺という獲物がいたためだ。


「散らせ・・・」


フォレストワームで魔物対策はすでに完璧だ。一気に地面を燃え上がらせ敵を焼きつくす。

あとあと邪魔になるので炭になるまで燃焼をやめなかった。


領内が一気に開け5倍くらいの広さになる。

これくらいあれば小さい国くらいなら作れるかな?



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