プロローグ【転生と能力】
真っ白な霧の掛った空間
床も白、周りは真っ白な霧、一面の白い世界。
俺はいつからここにいるのか、一体ここは何なのか
夢?いや、夢はこんな自由に物事を考えることなんて出来やしない
「おーい」
弱々しい声を出してみるが周りの空間は白いままで何も変化はない。
「おぉーーーーい!」
今度は大声で叫んでみる。
「うるさい!」
突如として空か声が聞こえた。
「順番があるんだ、おとなしく待ってろ!」
「す、すみません」
思わず謝ってしまった。「どこなんだよ」とか「なんで空から声が」とか色々言いたいことが
あったのだが声が出ない。有無を言わせない一喝に尻込みしてしまっていた。
しばらくして
「おい、お前」
「は、はい!」
空からの声がまた聞こえた。突如として聞こえた声にもすぐ返事をしてしまう威圧感のある声。
「説明から入る。質問は説明を終えてからしろ」
「はい!」
どうにも声の主には勝てる気がしない。
そして説明の内容はこうだ。
今空から話をしているのは死後の管理人、言わば神様?もしくは閻魔様?みたいなものらしい。
俺は天寿を全うし、死後の世界であり行き先を決める段階であること。
死んだ生物は基本的にこの審判を受けるということ。
色々と突っ込みたいところが満載だが
「質問は?」
「はい、行き先とはなんですか?」
「行き先とは世界線のことだ。お前がもともといたのが地球という世界線だとすると次は別の惑星に行くという考えで良いだろう」
「別の惑星…」
「もっとも、地球が存在する世界ですらないがな。そちらの言葉を借りるなら異世界という言葉が適切だろう」
異世界…つまり漫画やアニメのような世界?ランダムなら最悪、生物災害多発世界という絶望的な世界もありえそうだ…
「そ、それは選べるんでしょうか!?」
「要望を言えば、その要望に一番近い世界に行くことになるな」
あ、あぶねえ!
「ある程度人類が発展していて、滅亡の危機に瀕してないような世界がいいんですが」
「その要望だとほぼ全ての世界に該当するな。もっと細かくはできないか?」
細かく・・・やっぱ剣や魔法のファンタジー世界が無難か?どうせなら魔法ってやつを使ってみたい。
やっぱりロマンでしょう魔法!
「剣と魔法のある地球で中世時代と呼ばれるぐらいの文明でお願いしたいです」
「ふむ、それならさきほどより絞り込めるがまだ多岐にわたりあるな。もう一つくらい条件があるとこっちも楽だが」
条件付けしたほうが楽なのか…あんまり要望を言うと強欲だと思われて良い印象にならないと思って自重したけどなら…
「他種族がいる世界でお願いします。あとは姫騎士みたいに女性の武力が強い人がいるので」
「剣・魔法・中世・・他種族・・女性の武力・・・だいぶ絞り込めるな」
だいぶなんだ・・・世界には一体どれだけの数があるのか。
まあ、死んだ生物は基本的にこの審判を受けると言っていたしもしかしたら何億、何兆と世界があるのかもしれない。
待てよ…死んだ生物は基本的にこの審判を…
「異世界に行くのは俺ですよね」
「そうだな」
「記憶はどうなるんですかね?いままでの人生やここでの会話とか…」
「ああ、そのへんは次の質問になるんだが世界を決める為には必要なら話そう」
「お願いします」
「次質問する予定のだが、持っていきたい能力を一つ決めてもらうんだ」
「能力?」
「いままで渡した能力だと魔法の適正を最大だとか、王家の血筋とか前世の記憶引き継ぎ等々がある」
やはりか!これはまずい。前世の引き継ぎができないのとそもそも現代とファンタジーのギャップを楽しめない。せっかくの剣と魔法世界なのだ。第2の人生として楽しみたい。
「なら、俺が世界に出現時に神からいままでの記憶を転写する世界にしてほしい」
可能か…?
「神の啓示か。その世界ならさきほどの条件の中に存在しているな」
よし!
「世界の選定は以上か?」
「は、はい。以上です」
「ではさきほど言った能力を一つ加える作業だな。能力は基本的に何でもありが基本だが異世界への移動は許可していない。そこの世界に送った意味がなくなるし、他の転生管理とかぶったり管轄外に行かれても困るからな」
異世界移動以外何でもか…思いつく能力はあるんだが
「世界の森羅万象を操る能力をお願いしたい」
「さきほども行ったが異世界へ干渉しそうな能力は」
「世界とは俺の行く世界のみの干渉限定ならどうでしょうか?」
神様らしき人の声が途切れたまにムムム…という唸り声が
どうやらそうとう微妙なラインの能力にしてしまったようだ。
ぶっちゃけ許可されればほぼチート能力だしOKなら儲けたようなもの程度だ。
許可がされなければ不老不死でもいいし、元世界の万物を引き出せる能力とかでもいい。
「よいだろう。世界の森羅万象を操る能力を許可しよう」
「えええ?いいんですか?」
通ってしまった…。
「だが、制約をつけさせてもらうぞ」
ん?
「異世界の移動を全般とする能力の発動不可。世界の空間崩壊を準ずる発動の不可」
「以上行った二つの制約をつける」
なるほどね。妥当なとこだがもともとその二つはやるつもりもないことだし大丈夫だろう。
「そろそろ時間だ。最後に質問は?」
質問?決まってる。
「次の世界で死んだらまたここに来るの?」
世界の魂の数は有限。魂が消滅しない限りはここに来るだろう。
そうして世界は白く包まれた。
「珍しい魂だった。まさかあそこまで自我がはっきり残っているとは」
「『俺が世界に出現時に神からいままでの記憶を転写する世界』か、まさか個人専用の世界が存在しようとはな・・・」