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仕事




士護帳(しごちょう)荒哉(あらや)は自室に戻る際、王立魔道図書館によって配給された電子端末機に、一通の着信が入った。



「………はい」



『第六部署、第六副図書長の、士護帳荒哉に間違いは無いな?』



随分とドスの聞いた声、たしかオペレーターの福富士と言う男だったか?



「あぁ、間違いない」



『では、いつもどおり、第六部署に仕事の内容を与える、引き抜きは士護帳一名、第三部署から直々のご命令だ』



第六部署の与えられた役目は、第一部署から第五部署までの穴埋め、ピンチヒッターだ。


今回、第三部署に引き抜かれると云う事は、第三部署の手伝いを強いられる事になる。


第三部署に与えられた役目は"魔道書"の回収、及び同業者に遭遇した際の時間稼ぎである。



「時間は?」



『これより十分以内、装備は移動中に渡す、これは魔道書を持つ者にしか与えられない任務だ』



以上だ、と言葉を添えて、電子端末機は通信を切る。


"魔道書"、魔道書、ねぇ。


士護帳は、少なくとも、魔道書に関しては軽蔑の眼を向けずにはいられないでいた。


それはきっと自分だけが思う感情で、本来はそんな事を、思ってはいけないのに。


士護帳は自らの感情を押し殺し、地上への道を最短距離で向かう。









――――








「ここは?」



古衛リシアは、現状連れ出された場所に目を白黒とさせた。



「魔道書図書館さ、ここが王立魔道図書館なら、地下に図書館があるのは明白だろ?」



地下九階、"第一級"魔道書が管理されている図書館。


地下九階から十三階までは魔道書の階級に応じて管理別にされていて、それに応じてクリアライセンスカードのランクが必要だった。


地下一階から地下七階まではクリアライセンスカードのランクを気にせず自由に移動できるが、地下八階から地下十三階までは、ランクによる制限が有される。


現在位置である地下九階は"第一級魔道書図書室"という、第一級品のみの魔道書を収納した部屋となっている。


魔道書と呼ばれる、神秘と魔力の塊には、それぞれ階級がある。


"対人"や"個人"にのみ作用させる"第一級"魔道書。


"対軍"や"郡"に有益な損害をも齎す"第二級"魔道書。


"対城"や"建物"程の物を巻き込ませる"第三級"魔道書。


そして、"対界"や"法則"などを歪ませる"禁忌級"魔道書の四つ。


今回、古衛に貸し出すのは"第一級"である対人や個人にのみ作用させる魔道書である。


王立魔道図書館は、こうして社員には一人一冊までの魔道書の貸し出しが許され、その魔道書の魔術を扱う事が許される、勿論、その魔道書が使いこなせればの話だが。



「よっし、こっちだこっち、お前に相応しい本があるんだよ」



手招きをして、古衛を呼び寄せて、"神話"の項目から一つの本を抜き出す。



「………なんですか?これ?」



紅色の表紙をした、タイトルロゴが掠れている一冊の書物。


見たところ文章は日本語で無い、一般教育として英語の勉強はしてきたが、この文章には、余りにもクセが強すぎる。



「"猛犬の師(スカサハ)"の魔道書、これはね、英雄クーフーリンのお師匠さんの本なんだよ」



それは、アルスター神話に登場する、一人の女性。


影の国と呼ばれた異界を治める女王にして、武芸と魔術に秀でた戦士。


その勇名を慕った多くの戦士を弟子として、アイルランドの大英雄クー・フーリンに、魔槍ゲイボルグを授ける。



「これは、絶対にお前さんにぴったりだよ」



何せ、このスカサハと呼ばれた戦士は、曲りなりにも、たった一人の弟子に狂気を持ち合わせる愛を秘めていたのだから。





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