第8話 姉弟→姉妹
「俺はもう自分が『女』だとはっきり認めた方がいいのかもしれない」
……ここまで追い詰めてしまうとは申し訳ない。私のせいだ。
私は『藤宮楓』の中にある『女』の人格だ。元々昔から存在していた。
昔から、私の思った事は『男』の私には反映されなかった。でも、体が『女』になってから『女』の人格を受け入れだしたのか、意見が反映されだしたのだ。
その結果、『男』の心が『女』になってしまい、口調も女になってしまったのだ。
勿論、翔太が好きだというのも私の気持ち。
ここまで意見が反映されるのだ。
もし私が「男の私と入れ替わりたい」と思ったら……
そう思った時、『男』の人格の私が眠りについた。『男』の私が眠ってしまうと、私も自動的に眠ってしまう。そして私は眠った。
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翌日、私は目を覚ました。ただ、いつもと違うことがあった。
体が自分の思い通りに動くのだ。
そう、『男』の人格と『女』の人格が逆転したのだ。
本当に人格が入れ替わるとは……。もし、これから体が男に戻らなければ、私はずっとこのままだ。
ただ、正直戻らない方が嬉しい。自由に動けるからだ。
「ごめんね? 一応、私の体でもあるんだし、このまま生活するね?」
そう私は、自分の中にいる『男』の人格に話しかけて、リビングに向かった。
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「おはよー楓」
お姉ちゃんがソファーでくつろぎながら言った。
「おはよう、お姉ちゃん」
「ん?」
お姉ちゃんが怪訝そうな表情を浮かべた。多分、私が「お姉ちゃん」と呼んだのに疑問を感じたのだろう。
一応、言っておいた方がいいかな? でも「人格が入れ替わった」って言って信じてくれるかどうか。
「楓……。そんな口調だっけ?」
「初めまして、お姉ちゃん」
「あなた……。誰?」
まあ、当然の反応。説明しないと。
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「じゃあ、本当に違う人格なの?」
「うん、そうだよ」
一通り説明し終わり、私は朝食のパンを食べながら言った。今日は体育会の代休なので、急いで食べる必要はない。
「私を騙してるわけじゃないよね?」
「だから、違うって」
私は呆れながら言った。
「じゃあ、今までの楓の人格はどこに行ったの?」
今までの楓の人格――『男』の人格の事だろう。
「多分、私の中にいる。私が『男』に戻れたら出てこれるんじゃないかな?」
「消えたわけじゃないのね?」
「うん」
「ならよかった……」
お姉ちゃんは「ほっ」と息をついた。すると「う~ん」と悩みだした。そして「うん」と勝手に納得して、私に楽しそうに言った。
「じゃあ、これからは今の楓が弟……じゃなくて妹になるわけだね?」
「なんでそんなに楽しそうなの……」
「だって実際、弟も妹もできたわけでしょ? なんか一度で二度おいしいって感じ」
笑顔でお姉ちゃんは言った。楽観的すぎるよお姉ちゃん……。
「それに、どっちがいいって差別するのも嫌だし。どっちの『楓』も私の大切な『きょうだい』には変わりないから」
お姉ちゃんは笑って言った。
……本当にこの人がお姉ちゃんでよかった。
「よし、じゃあ遊びに行こう!」
「へ?」
急に何を……。
「やっぱ女の子とも遊びに行きたいし、『女』の楓の事も知りたいから」
「そういう事なら……」
私はお姉ちゃんと買い物に行く事になった。
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―-ショッピングモール――
「じゃあ次はあそこ行こ!」
「ちょっと休憩させて……」
「だってなんか新鮮で楽しいんだもん」
すごい楽しそうにお姉ちゃんは言った。
体力ありすぎ……。さすが陸上部。
でも、このままやられっぱなしにはいかない。ちょっと攻撃を仕掛けよう。
「お姉ちゃんは胸が薄いから動くのに楽そうだな~。私は胸が『そこそこ』あるから大変だよ」
挑発的に言ってやった。するとお姉ちゃんは、
「え? なんだって? もういっぺん言ってみて?」
若干怒った様子で言ってきた。
よし、挑発に乗った。
「だ~か~ら~。お姉ちゃんは胸が『小さい』からいいよな~って思って」
私は『小さい』の所をあえて強調した。するとお姉ちゃんは、肩をプルプル震わせたかと思うと、こちらを見て、そしてこちらに向かって怒号を放ちながら走ってきた。
「胸の事は言うな!」
「わ~逃げろ~」
そして私達姉妹による鬼ごっこが始まった。
ただ、係員の人に「走るな!」と怒られてしまいました。
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夜、私はお姉ちゃんをお風呂に誘った。いつも『男』の楓がやられてるので、仕返ししてやろうと思ったのだ。
そして、現在に至る。
「あー。胸が大きいと大変」
風呂の中に、お姉ちゃんと向かい合わせで入ってる私は、また挑発した。
「お姉ちゃんはどう思う?--あ、お姉ちゃんに聞いても意味ないか」
すると姉ちゃんはキレた。
「うがー!」
「わっ、ちょっと待って!」
お姉ちゃんは私の胸をもんできた。
「この胸がいけないんだー! この胸が!」
「んっ! ちょっとお姉ちゃん!」
このままではいけない! 反撃しよう!
「とりゃ!」
「えっ。ちょっと!」
私はお姉ちゃんの胸を揉み返した。薄い胸を。
その結果、
「んっ! いいかげんにして! あっ! お姉ちゃん!」
「楓こそ止め……あっ!」
美人姉妹がお互いの胸を揉みあうという異様な光景ができてしまった。
―-それから数分後――
「はあはあ」「はあはあ」
お互い疲れ果ててしまった。この状況を『男』の楓はどう見てるのか……。
「よし、お姉ちゃん髪洗ってあげるよ!」
「え……。何もしないよね?」
「当たり前じゃん!」
「じゃ……じゃあよろしく」
そして私は姉の髪を洗い、そして泡をシャワーで流した。
よし、次は……
「じゃあ次は体、洗ってあげるよ!」
「え……。いいよ、それは……」
お姉ちゃんは顔をひきつらせて言った。
「ほら~。遠慮しなくていいから~」
「えっ! ちょっとこっち来ないで」
「『男』の私がされたこと。お姉ちゃんにもしてあげる」
そして私はお姉ちゃんの体をめちゃくちゃに洗ってやった。
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「ひどすぎる……」
「お姉ちゃんこそ……」
風呂上がり、私達姉妹はソファーでぐったりしてしまっていた。
なぜ私までぐったりしているかと言うと、お姉ちゃんの体を洗ったのは良かったのだが、その後、私もお姉ちゃんに体をめちゃくちゃに洗われてしまったのだ。
「『男』の楓は反抗しなかったのに……」
「ふっふっふっ。今は『女』だからね。女子に対してはガンガンいけるよ!」
胸を張って私は言った。胸を張って。
「その胸を張ってるの、私への当てつけ?」
「お、よく分かったねお姉ちゃん!」
「くそー!」
そう言ってお姉ちゃんは私に飛び掛かってきた。そして、また胸を揉みだした。
「ちょっと!」
「むー!」
こうなったら私も……。
「とりゃ!」
「はうっ!」
そしてまた私達はお互いの胸を揉み続けるのでした。
彼女が欲しいです(切実)
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。