第7話 体育会 そして……
「体育会開催~!」
生徒会長の白石先輩が、マイクを通して言った。
そう、今日は体育会。勿論、保護者もたくさん来ている。
俺は勿論女のままだ。ちなみにまだ完璧に心が、女にはなってないので安心。
この学校はなぜかくそ暑い、真夏の時期に体育会をする。生徒は「ふざけんなよ」とか「だりぃ~」とか言っているが、いざ始まると皆楽しんでる。
だいたいそういうもんだよな。俺も楽しい。
ていうか他のクラスとか、違う学年の奴が俺をチラチラ見てくるんだが……。そんなに目立つのか? 俺。まあ、カワイイんだろう。
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まず俺が出場する競技は、『クラス対抗リレー』だ。ちなみにうちの学校の体育会は各学年、一クラスずつがチームになり戦う。俺のクラス――――2-Cと一緒のチームは1-Cと2-Cだ。偶然にも三クラスともC組だった。3-Cも一緒なので、姉ちゃん、優樹先輩、白石先輩とも一緒のチームだ。
パーン!!
うおっ。ビビった。どうやら、ピストルがなり、第一走者が走り出したようだ。
「はあ……。はあ……」
俺は走り終わり、両手を膝について、肩で息をしていた。
やべえ……。体力が全然ない。やっぱ『女』になって体力も落ちてるのか……。こういうとこは不便だな。
そうこうしているうちに、星が走っていた。次は、翔太でアンカーだ。
星は2-Aとデットヒートを繰り広げている。これは翔太の結果で決まりそうだ。
そして、星が翔太にバトンを渡し、それとほぼ同時に2-Aもアンカーにバトンが渡った。
「翔太行けー!」「翔太君頑張って!」
クラスメイトから激励の声援が飛ぶ。そして、それに応えるかのように、2位との差を広げていく。
よし、これはいける――――あっ! 転んだ!
そしてあっという間に2-Aのアンカーに抜かれる。
「おい!」「バカ野郎……」「見損なったよ……」
クラスメイトが落胆の声を出す。
結果は2位でした。
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「すいませんでした……」
俺らが退場した後、翔太は正座になって、皆に囲まれていた。
『…………』
皆、無言だ。
「おい、お前らなんか言えよ! 怖えよ」
「チッ!」
「おい、誰だ! 舌打ちした奴! 止めてくれよ……」
やべえ、すげえかわいそう。
「ま、まあ。翔太もわざと転んだわけじゃないんだし……」
俺が翔太をフォローすると、皆もしゃべりだした。
「まあ、そうだな……」「まだ始まったばかりだし」
そう言って、皆、自分の応援席に戻る。
「翔太、行こ?」
俺は翔太に微笑みかけ、手を差し出す。
「ありがとう、楓!」
「うわっ!」
翔太が俺に飛びついて来た。
やべえ! やべえ! 仮にも好きになりかけている男子に抱きつかれるとかやべえ! てか胸が翔太に当たって……。
「ん? どうしたんだ楓? 顔赤いぞ?」
俺から離れると、翔太は心配そうに言った。
いや、そりゃ赤くなるだろ! 自分でも分かるよ、顏が熱いもん!
「こ、これは……。日差しが強いから……」
俺が動揺しながら言うと、翔太は空を見て言った。
「あー。今日暑いからな」
「うん……」
すると放送がなった。
『2-Cの神崎翔太君。至急本部まで来てください』
「そうだった……。生徒会の仕事があるんだった。じゃあ、俺行くわ」
そう俺に言って、翔太は本部に向かって走り出した。
俺はその後ろ姿をしばらく見続けた――――
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昼食を食べ終わり、午後の部が始まった。
午前、いくつかの競技に出た俺だが、午後には俺にとって、とても大事な競技があった。
それは『二人三脚』だ。それも男女ペアの。
俺は元々この競技に出る予定はなかったのだ。ただ、星が生徒会の仕事で出られなくなったので、俺が急遽出る事になったのだ。
「よし、行くぞ。楓」
俺と一緒に入場していくのは翔太だ。そう、星のパートナーは翔太だったのだ。翔太がパートナーだと知った時、俺はめちゃくちゃテンパった。それと同時に嬉しくもあった。
入場し終わり、第一グループがスタートした。この競技はリレーではなく、それぞれグループごとで戦う。
そうこうしているうちに、俺達のグループの番。
パーン!!
ピストルの音と同時に俺と翔太は進みだした。
それからは順調に進んで行って、障害物もあったのだが、それも順調にクリアして、1位でゴール近くまで行った。するとゴール近くの所には、風船があった。
え? 何すんの? いや、だいたい想像つくけど……。
すると放送がかかった。
『はい、最後は風船をペアに割ってもらおうと思います!』
やっぱり……。
「よし、じゃあ割るぞ」
「!?」
翔太が風船を持って、お互いの腹に挟んで割ろうとしてきた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「え?」
俺は翔太が居る方とは逆の方を向いて、深呼吸をした。
大丈夫。ちょっと抱きつく感じになるだけだ。落ち着けば大丈夫。
俺は翔太の顔を見て言った。
「よし、いいよ。風船割ろ?」
「お前……。口調が……」
「ん?」
「いや、何でもない」
そう翔太は言うと、風船をお互いの腹に挟んで、風船を割ろうとする。
なんか抱きつく感じになって恥ずかしい。めちゃくちゃ顏熱い。絶対真っ赤だ。
「んっ」
声が漏れてしまう。翔太に聞かれてないよな……。
それからさらに力を入れる。
パーン!!
風船が割れた。
「よしっ行くぞ」
「うん」
そしてゴールした。見事一位だ。
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「体育会閉会!」
白石先輩が全校生徒の前で言って、体育会は幕を下ろした。
結果は一位だ。三年生が一位を取りまくってくれたおかげだ。
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俺は家に帰り、翔太が言った一言を思い出した。
「お前……。しゃべり方……」
この言葉がどういう意味なのか俺は分かっている。口調も『女』になってきているのだろう。
なぜか話す言葉が女の口調になってしまうのだ。しゃべることを意識すれば大丈夫なのだが、意識しなかったら、女の口調になってしまうのだ。
「俺はもう自分が『女』だとはっきり認めた方がいいのかもしれない」
夏休みに入ったけど何もすることがないぜ……
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。