第4話 生徒会役員共
翌日、俺は目を覚ました。思いの他ぐっすり寝れた。
俺は部屋を出て、リビングに向かった。するとパンの焼けるいい匂いがした。
「あ、おはよう」
そう言ったのは、エプロンを着けて朝食の準備をしている姉ちゃんだった。
「おはよう」
「朝食もうすぐ用意できるから、顏洗ってきたら?」
「おう」
俺は言われた通り、顔を洗いに洗面所に向かった。
顔を洗ってタオルで顔を拭いていると、ふと鏡に目がいった。そこに映っていたのは、やはり女子だった。
この体にも意外と慣れてきたな……。
その後、俺は姉ちゃんと一緒にご飯を食べた。
食べ終わってくつろいでいると、姉ちゃんがこちらを見ているのに気付いた。
「え、何?」
「うん? いや髪とか整えないのかなぁ~って思って」
「髪か……。男の時は何もしていなかったからな……。やっぱクシとかした方がいいん?」
「うん。した方がいいと思うよ」
「じゃあ姉ちゃん、俺の髪整えてくれない? 仕方とか分からないし」
「うん、いいよ」
姉ちゃんは笑顔で言ってくれた。
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「やっぱ、綺麗だね~。髪」
「そうか?」
「うん」
「姉ちゃんの髪も十分綺麗だろ」
姉ちゃんに髪をクシですいてもらいながら、俺は何気ない一言を言った――つもりだったのだが姉ちゃんは頬を赤らめてしまった。
「うん。ありがとう」
「お、おう」
それだけしか言えなかった。てかどう言葉を返すのが正解なのか、俺には分からん。
「よし、いいよ」
どうやら終わったようだ。ショートヘアーの髪を触ると、先ほどとは違って、髪が整っていた。
「サンキュー」
「い~え」
その後、俺たちは学校に行く準備を終え、リビングのソファーで学校に行く時間までくつろいでいた。ちなみに俺はちゃんと女子の制服を着ている。姉ちゃんの制服の予備だ。
鏡の前で回転したりして、自分の制服姿を確認もした。かわいすぎて困った。自分の事を可愛いって思うのはヤバいかも知れない。
ていうか、マジでスカートスースーするんだけど。冬場だったらジャージとか履くんだろうけど、今は夏なのでそうもいかない。
「姉ちゃん」
「う~ん?」
テレビを見ながら姉ちゃんは答えた。
「しゃべり方とか変えた方がいいかなあ?」
そう、問題なのはしゃべり方だ。俺は、今まで通りのしゃべり方で行くか、女子らしいしゃべり方で行くか悩んでいたのだ。
「場合によって変えてけばいいんじゃない?」
「場合?」
俺が聞き直すと、姉ちゃんは俺の方を見て「うん」と言ってから話し始めた。
「今までの楓を知っている人には今まで通り接して、これから楓を知る人には女子っぽくふるまったらいいんじゃない? そしたら動揺しないだろうし」
「なるほど」
納得。やっぱ姉ちゃん頭いいな。俺がバカなだけか。
すると姉ちゃんは時計に目をやり言った。
「よし、そろそろ行こうか」
「おう」
やべえ緊張してきた。やっぱ皆の反応が恐い。
俺達は靴を履き、外に出た。すると家の前ではたくさんの生徒が登校していた。
俺の家は学校からわりかし近いところにある。それでいて、駅にも近いので高校生がよく通るのだ。
俺が周りの視線を気にしながら学校に向かって歩いていると
「ほら、もっと堂々として。逆にそっちの方が不自然だよ?」
姉ちゃんが笑みを浮かべて言った。
……まあ、それもそうだな。
それから俺は、いつも通り普通に歩き始めた。すると周りから「あれ、三年の藤宮先輩だよな?」「でも、隣の子誰? 妹?」「妹さんめっちゃカワイイ!」とか聞こえた。
やっぱ姉ちゃん人気だな。てか普通に妹って思ってくれるんだな。
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学校に着くとまず、姉ちゃんと一緒に職員室に行き、俺の事を話した。
すると、学校側はOKしてくれた。この学校、これで大丈夫なのか。
そして今、俺は担任の白河先生と教室に向かっていた。すでにHRが始まっている時間だ。思いのほか説明するのに時間がかかってしまった。
「じゃあ、皆に説明してくるから」
教室に着き、先生は俺に告げた。俺がいきなり教室に入ったら皆、びっくりするだろうから、先に先生から言ってもらおうという話になったのだ。
--ガラガラ
先生が教室のドアを開けて入って行った。先生が何か言っているがよく聞こえない。するとクラスが急に騒がしくなった。恐らく、先生が俺の事を言ったのだろう。
「藤宮、こっちに来い」
先生がこちらを向いて手招きして言った。
俺は、言われた通り教室の中に入って行った。すると一段と騒がしくなった。
「カワイイ!」「胸でか……」「結婚してくれ!」とか聞こえる。誰だ最後の言った奴。
「藤宮、皆に挨拶を」
「え~、どうも。藤宮楓です。改めてよろしくお願いします」
すると「声もカワイイ!」「結婚してくれ!」とか聞こえる。だから最後の言った奴誰だ。
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HRが終わると俺の席の周りには、人だかりができた。噂を聞きつけたのか廊下の窓から、他のクラスの生徒も見ている。
「本当に藤宮?」「カワイイ!」……ものっそいうるさい。
「うるせえ――――――!」
俺が怒鳴っても、迫力がないのか皆グイグイくる。
「やめろ! お前ら!」
そう言って俺の周りから人を退けてくれたのは『神崎翔太』この学校の生徒会副会長で俺の親友だ。
「ありがとう……。翔太……」
俺は嬉しくて涙目で言った。
「いいって、いいって。それよりその胸本物なんだろ? 揉ませてくれ!」
とんでもない発言だった。ここまで堂々と言えると清々しい。
「いや、無理」
俺はゴミを見るような目で翔太を見た。
「なあいいだろ~。減るもんじゃないし」
「いやだ」
「こうなったら、無理やり……」
そう言って翔太が俺に飛び掛かってきた――かと思いきや、ある女子に蹴られて教室の端まで吹っ飛んでいった。
「大丈夫か? 楓」
今度こそ俺を助けてくれたのは『白石星』翔太同様、生徒会役員で書記だ。その男らしい性格と整った顔立ちで、男女からの信頼も厚いみたいだ。ちなみに翔太も変態だが、それなりには信頼されている。
「ありがとう、星……」
俺はやはり涙目で言った。
「うっ……。これは翔太が襲いたくなるのも分かるな……」
「襲うなよ!?」
「冗談、冗談」
「本当か? 結構目がマジだったぞ……」
星は「あははー」と笑ってごまかした。
「痛えぞ……。星」
「なんだ、もう復活したのか……」
翔太は立ち上がりこちらに向かってきた。
「てか、翔太はあたしの事が好きだったんじゃないのか?」
「お? なんだ? 嫉妬か?」
あー。そんなに煽ったら……。
「死ね」
――ドカッバキッポキッ
なんか聞いてはいけないような音を聞いた気が……。
「はい、お前ら席に着けー」
白河先生が教室に入ってきた。一時限目は英語科か……。
俺達は言われた通り席に着いて、授業を受けた。
ちなみに翔太はもう復活している。翔太の復活能力をなめてもらったら困る。
昼休み。
「昼飯買いに行こうぜ、翔太」
「おう」
そういうやり取りをして、翔太と星は教室から出ていった。別に付き合ってるわけじゃないらしいんだが、やっぱ仲がいいな。でもそんなこと言ったら星に殴られてしまう。
しばらくすると教室に姉ちゃんが来た。
「ごめ~ん。遅くなっちゃった。ご飯食べ行こっ!」
「おう」
朝、俺は姉ちゃんから一緒にご飯を食べようと誘われていたのだ。
「ね? 楓、お願いがあるんだけど」
姉ちゃんは両手を合わせて言った。
え? 何? 嫌な予感しかしないんだけど。
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「カワイイー」「顔小っちゃ!」
そう言われて俺は、3-Cの教室で先輩達に囲まれていた。
「ごめんね~、楓。私が皆に楓の事話したら会いたいって言われちゃって。だから今日はここで食べてくれない?」
「しょうがないな……」
実際、俺は嫌ではなかった。だって悪口言われてるわけじゃないし。ただ見られながら食べるのは恥ずかしい。
「よお、楓。お前女になったんだって?」
俺が姉ちゃんとご飯を食べていると、誰かが声をかけてきた。声の方向に顔を向けるとそこには端整な顔立ちをした男がいた。
「優樹先輩か……」
この人は『神崎優樹』生徒会副会長で翔太の兄でもある。翔太と仲良くなって行って、自然と優樹先輩とも仲良くなったのだ。黙っていれば翔太同様、モテるのだが、翔太と同じで変態なので女子から引かれている。まあそれでも、優しいためそれなりにモテるのだが。
「マジでかわいいな……」
俺の顔をマジマジと見ながら優樹先輩は言う。
「ホントにそうね……」
「あ、白石先輩」
いつの間にか優樹先輩の横に居たのは『白石きらり』生徒会長で星の姉だ。生徒からの人望は厚いのだが、おっちょこちょいなとこがある。星と話すようになって白石先輩とも多少話すようになった。
「なあ、楓……。胸揉ませてくれないか?」
優樹先輩が言った。
「それ、翔太にも言われましたよ……」
「さすが、兄弟……」
姉ちゃんが呆れて言った。
「な? いいだろ? 揉ませてくれよ!」
「いやです」
「なら、無理やり……」
優樹先輩がそう言い、俺に飛び掛かろうとした瞬間――
「ふざけるな」「死ね」
左右からパンチが飛んだ。
「うう……」
優樹先輩は地面に倒れて泣いてしまった。やっぱ兄弟って行動も似るんだな……。
「じゃあ、姉ちゃん。もう飯食べ終わったから教室帰るわ」
「うん。じゃあね~」
「じゃあね、楓君。いや楓ちゃん」
「……じゃあな。楓」
姉ちゃん、白石先輩、優樹先輩の順に言う。
俺らのクラスも騒がしいが、このクラスも騒がしいと思う。
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その後は、いつも通り、騒がしい授業を受けて、放課後になった。俺は部活に入ってないので家に帰ることにする。姉ちゃんは陸上部に入っているので一緒には帰ってきてない。
姉ちゃん貧乳だから陸上で走るとき、有利そうだな……。
そう思うと言いたくなり、姉ちゃんが帰ってきてから、「胸が小さかったら走りやすい?」と言ったら殴られました。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
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