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第19話  まるでリア充

※テストや塾によって、今後しばらく投稿できないと思います。

 休日。俺はショッピングモールに来ていた。時刻は昼の十二時。


「来ねえな……」


 今、俺は一人でモール外の時計台の前にいるのだが、皆さんも分かる通り人を待っている。

 それにしてもこのモールには思い出がかなりある。体が女、心が男の時に姉ちゃんと来たり、翔太と来て翔太にときめいたり。うっ……。あの抱きついたのを思い出したら吐き気がしてきた……。


「せーんぱーい!」


 向こうから走ってくるのは私服姿の咲夜だ。目につくのはミニスカート。そこからスラリと伸びた足が見えていてたまらない。

 ……おっとつい本音が出てしまった。てか走ってたらパンツ見えそうなんだけど。あ! おい通行人! 今見たろ! ずるいぞ! あれ、俺気持ち悪くね?

 なおも咲夜はこちらに向かって走ってくる。


「遅えよ!」


 咲夜が俺の元に着くなり、俺は怒鳴った。


「え、そうですか?」


「いや、もう二時間待ち合わせの時間過ぎてるんだぞ!?」


 すると咲夜はやれやれと一つ息を吐いて


「そこは『全然待ってないよ』って言ってくれないと……」


「いや、俺も最初はそう言おうと思ったよ!? でも二時間も遅れるとは思ってねえし! 電話かけても出ねえし!」


 俺が息を切らして怒鳴ると、咲夜はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて


「もしかして心配とかしてくれたんですか~?」


「ああ、したよ! そんなに遅れるんだ、何かあると思うだろ!」


 咲夜は俺の言葉に面食らってしまったのか「そ、そうですか……」と気の抜けた返事しかできない。


「で、何で遅れたんだ?」


 普通なら何も深い理由は聞かないほうがいいのかもしれない。でも、一応遅れた理由は聞いておきたい。

 なぜ、理由を聞きたいのか、その理由はよく分からない。もしかしたら咲夜の家庭が複雑かもしれないから、何かされてないか気になったから聞いたのかもしれない。


「ね、寝坊です……」


 咲夜は言いにくそうにボソッと呟いた。


「そうか、じゃあ何で電話しても出なかったんだ?」


「慌てて家から飛び出して来たんで、スマホ家に忘れちゃって……」


 申し訳なさそうに咲夜は下を向く。


「しうか、まあ事故にあってなくて良かったよ。じゃ、行こうか」


 俺はモールを指差し、中に入ろうと伝える。咲夜はなぜかポカーンとした表情で俺を見ている。


「ん? どうしたんだ?」


 俺はモールに向かおうとしていた足を止め、咲夜の方を振り返る。


「お、怒らないんですか……?」


 咲夜は伏し目がちに俺に言う。


「怒る? まあ、さっき充分怒ったし……。それに咲夜が無事に待ち合わせ場所に来てくれて良かったから」


 それだけ言うと俺はモールに向かって歩き出す。咲夜は何か言いたげだったが、何もいわず俺の後を追って歩き出した。

 正直俺はさっき自分が言った言葉が恥ずかしくて、咲夜の方を見れなかった。


~~~~~~~~~~


この……この……なんて言えばいいんだ? デート? まあ、デートとしておこう。このデートを設定したのは咲夜だ。これも男の俺が女の俺になるかどうかの実験的なやつらしい。

 正直これで女になるとは思えんのだが……。やっぱキスで入れ替わると思う。でも咲夜は「キモイです……」とか言ってくるし。なんか俺がキスしたいだけの奴になってない?


「……ぱい、先輩!」


「へ?」


 つい気の抜けた返事をしてしまった。


「聞いてます?」


「お、おう聞いてるぞ?」


 咲夜は頬をふくらませる。あ、あざとい……。


「これ可愛くないですか?」


 咲夜が手に持っているのはウサギのぬいぐるみだ。それを俺に見せてくる。


「いや、可愛くない」


 おっとつい本音が……。


「えー。じゃあこれ買いません」


 咲夜は不機嫌になってしまい、ぬいぐるみを商品棚に戻す。

 いや、でもほんとに可愛くないんだもん……。妙にリアルだし。と、ふと犬のぬいぐるみが俺の目に入った。


「お、これは可愛いな」


 俺が手に取ると、咲夜がそれを隣から横取りした。


「なら、先輩これ買ってください!」


「え、えええ……」


 すると咲夜は俺の前に立ち、口元に手をあて、上目遣いで見てくる。


「お願いします先輩……。買ってくれませんか……?」


「う……」


 くそ、買ってあげたくなる……。しかし!


「ダメだ」


 きっぱりと言ってやった。ここで甘やかしたら他のものまで「買って!」とせがまれてしまう。


「チッ!」


 俺から目をそらし、咲夜は不満げな顔をする。


「あっ! 舌打ちしたろ、今!」


「してませんよ」


「した!」


「しました」


「認めちゃった!」


「はい、素直に認めたんでこれ買ってください」


 咲夜は犬のぬいぐるみを指差す。


「それはダメ」


「チッ!」


「あ、お前また舌打ちしただろ!」


「はい、しました」


 なんだよこの無限ループ。あと咲夜そんなに口尖らせなくても……。これそんなに欲しいのか。なら……

 俺は先ほどより一回り小さい犬のぬいぐるみを手に取って、咲夜に見せる。


「なら、こっちの小さいやつなら買ってやるよ」


 咲夜は驚いていたが


「ほ、ほんとですか!?」


「ああ、ほんとほんと」


「ありがとうございます!」


 こんなに喜ぶとは……現金な奴だな。


「はい、どういたしまして」


 咲夜は素直に頭を下げ感謝した。

 なんだ、可愛い所もあるじゃねえか……。てかこのぬいぐるみ小さいのでも結構値段するな……。

 ぬいぐるみを買ってあげた後咲夜は、終始ご機嫌だった。ちょろいな……。こいつその辺のおじさんが「これ買ってあげるからついておいで」って言ってきたらノコノコついていくんじゃないか? そしてそのまま……おっとこの話はここまでだ。これ以上の事を言ってしまったら、俺が最低な野郎になってしまう。



 その後、俺と咲夜は遅れ目の昼食をとり(代金は俺が支払った)、クレープを食べ(代金は俺が支払った)、映画館に来ていた(代金は俺が支払う予定)。

 なぜここまで俺が代金を支払ったいたのかと言うと、咲夜に頼まれたからと言うのもある。でも、もう一つ理由がある。咲夜は家族とうまくいっていない(俺の勝手な予想)と思うので、モールとかに来て満足に楽しんだことがないかもしれない。だから楽しませてあげたくてお金を払ってあげていると言うわけだ。

 ……でもちょっと甘えすぎじゃないですかねえ……。お金がものすごいスピードで減っていっているんですが……。


「先輩、これ見ましょうよ」


 咲夜が指さす先にあるのはポスター。映画のポスターらしく、どうやら恋愛物らしい。意外と乙女なとこあるんですね。まあ、別にみるのはどれでもいいか。


「おう、いいぞ」


 正直ありがちな展開で主人公とヒロインがくっついたので、なんとも言えない気持ちになりました。



 映画を見終わり、俺は咲夜に「トイレに行ってくる」と言って、用を足し終わり咲夜の元に向かっていた。

 そう言えば翔太と来たときは、翔太がトイレに行っている間に俺が不良っぽい人に絡まれたんだよな。まあ、咲夜は気は強いし絡まれても大丈夫だろう。てかそもそも絡まれるわけが――えー……。

 目に入ってきたのは不良っぽい人たちに絡まれている咲夜だった。少し離れた所から見てもなんか言い争っている声が聞こえる。

 すげえな咲夜。よく言い争えるな……。俺は無理だったのに……。

 もう少し近づくと、はっきりと声が聞こえるようになった。


「ねえ、いいじゃん少しぐらい」


「触んないでください。汚らわしい」


「はあ? そんな事言わないで俺達とさ――」


「ちょ、マジでキモイです。このゴミクズ共が」


「「ああ?」」


 ちょっと言いすぎなんじゃ……。


「ふざけんなよ!」


 不良グループの一人が声を張り上げる。


「お前は俺らに従えばいいの」


「は、はあ? ほんとキモイんですけど」


「ん? こいつ足震えてね?」


「ギャハハ! マジじゃん! 大丈夫だよ~。怖くないから~」


「っ……!」


「大丈夫~?」


「ふ、ふざけないでください!」


 咲夜の声は俺でも分かるほど震えてしまっていて、先ほどまでの迫力はまるで感じられない。

 まあ、咲夜の気持ちは分かる。俺、経験者だし。ちょっと怖いけど助けに行くか……。あれ、俺の手震えてね?

 なおも言い争いを続ける咲夜と、不良たちに向かって俺は近づいていく。

 くそ……! 静まれ俺の手……! いや、中二病とかじゃなくてマジで震えてるんだって、恐怖で。情けねえな……。てかどうやって咲夜助けるの? 前の翔太みたいに不良としゃべる自信ないんだけど。よし、こうなったら……。


「咲夜!」


 俺は走り出した。咲夜も俺に気づいたようだ。そして俺は咲夜の手を掴み、スピードアップし逃走を試みる。


「え、ちょ、先輩!?」


「黙ってないと舌噛むぞ!」


 後ろから不良共が追いかけてきているかは分からない。でも俺は咲夜の手を引きながら、無我夢中で走った。



「はあ……はあ……」


「はあ……はあ……」


 どうやら撒いたようだ。着いた場所はモール内の広場だった。

 なにこの既視感。ああ、そうか。ここは翔太と俺とで不良から逃げてきて着いた場所。


「あの、先輩……そろそろ手を放していただけると……」


「え?」


 俺は自分の右手に目をやった。そこには傷一つない咲夜の美しい手につながれた俺の手があった。


「あ、す、すまん!」


 俺は素早く手を放した。


「「…………」」


 おい、なんかしゃべろよ俺。ますます変な空気になってるぞ。と、咲夜が俺の方を見ず


「まあ、いきなり逃げるのは無いと思いましたけど、カッコよかったですよ、先輩」


 咲夜の頬は赤くなっていた。俺はそんな咲夜の姿を見るのがなぜか可笑しくて、


「そ、そうか……」


「な!? なんで笑ってるんですか!」


「いや、なんか……。さ、咲夜が恥ずかしがってるのが可笑しくて……」


「酷すぎます! このビビり先輩!」


「な、ビ、ビビってねえし!」


「ビビってました~。走って逃げてる時、手震えてました~」


「そ、それは……」


 否定できない。だって自分でも震えてるの分かってたし。


「でも……」


 咲夜はやんわりと微笑んで、


「助けに来てくれて嬉しかったですよ、先輩。ありがとうございました」


 俺は若干気恥ずかしくて、まともに咲夜の顔を見れなかったが


「どういたしまして」


 すると咲夜は「ふふっ」と笑って、


「じゃあ、帰りましょうか、先輩」


「ああ、そうだな」


 ……まあ帰り道、色々さらにおごらされたわけだが……。咲夜がご機嫌なだけ、良かったとするか。


 翌日、俺が女になることはなかった。……やっぱキスなんだって!


 



なんで周りにリア充がたくさんいるの?


誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。

評価などお願い致します。

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