第18話 家庭
いつもよりかなり短くなりました。
ただ、次話はいつもより長くなると思います。
男に戻った翌日。俺は男のままだった。心も女も。
……まあ、昨日特別な事なんて何もやっていないし、そりゃ入れ替わるはずがないだろう。やっぱキスで入れ替わったのではないかと俺は思う。
「おい楓。三人でメシ食べようぜ」
俺がそんな事を考えていると、椅子に座っている俺の視界に男子の制服が入った。顔を上にあげると、そこには翔太がいた。その隣には星もいる。
「おう、いいぜ」
久しぶりに三人で食べるな……と思っていると、教室のドアが元気よく開いた。
「先輩! 一緒にご飯食べましょう!」
はい、咲夜さんです。今日も元気が良くて感心。女の俺に接している時のおしとやかさはどこへ行ったのか……。
てか、どうしたらいいの? 女子に「ご飯一緒に食べよ?」とか言われたの初めてなんだけど……。
俺が戸惑っているのが分かったのか、咲夜は教室の中に入り、そして俺の手を掴み、半ば強引に俺を屋上まで連れて行った。翔太、星、すまん。また今度一緒に食べよう。
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「よくあんなに堂々と上級生の教室に入ってこれるな……」
俺は屋上のベンチに咲夜と隣り合わせになる状態で腰かけ、姉ちゃんが作ってくれた弁当を食べつつ、感心したようなどこか呆れたような声を出す。
「う~ん。まあ別に先輩と付き合ってるわけじゃないですし。そんなに恥ずかしくはありませんね」
う~ん。もう少し異性として俺を見てくれてもいいんじゃないかな? なんなの? 女しか受け付けないの? そんなのもったいないよ? もっとその可愛さを全面に出していこうよ!
「先輩何見てるんですか? 気持ち悪いです……」
お、おおう……。もうなんか慣れてきちゃったよ……。
「す、すまんすまん」
俺は苦笑いを浮かべる。そんなに見てたか? 俺。ハッ! まさか俺こいつに恋してるんじゃ……。そしてここから二人の仲は急接近していくのだった――みたいな事にはならない。
こんなしょうもない事を考えていた俺は、咲夜の食べているものがふと気になった。
「弁当とかじゃないんだな」
咲夜が食べていたのは、購買で買ったであろうクリームパンだった。
何気なく聞いたのだが、咲夜は表情をくもらせた。
「あ、はい……。親は基本家にいないんで……。私も料理はそれほどできませんし……」
俺、もしかして聞いちゃダメだった? ど、どうしようこの空気。
すると咲夜は今の空気を察したのか、明るい声音で俺に
「せ、先輩はお姉さんがお弁当作ってるんですか?」
「あ、ああ! そうなんだよ!」
俺もこの空気を脱するため、明るく振る舞う。ただ、咲夜は声は明るくても、辛そうだった。もしかしたら思った以上に咲夜の家庭は複雑なのかもしれない。
中間テストの日が近づいてくる……
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
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