第11話 勉強合宿1日目 『海』
夏休み――それは長い休み。学校に行かなくていいから嬉しい人もいるだろう。
でも私は違う。むしろ学校に行きたい。だって夏休みに特にする事ないから。
この休みを利用して、リア充共はイチャイチャしてるんだろう。爆発しろ。
「何、真剣な顔で言ってんの……」
お姉ちゃんはその美しいロングヘアーの黒髪をいじりながら私に言った。
「あれ、口からもれてた?」
「うん、はっきり」
「そっかー」
それからしばらく私達は何もしゃべらなかった。特に話す内容もない。私はグテ』とソファーの横になり、天井を見た。うん、まあ特に天井に何もないんだけどね。
「あーひまー!」
「うわっ! びっくりした」
お姉ちゃんは私の放った一言に、ビクッとしてこちらを向いた。
「なに、どしたの急に」
「夏休みだよ!? 何もしないなんてもったいないよ!」
「宿題をしなさい」
「「……」」
「夏休みだよ!? 何もしないなんてもったいないよ!」
「私の発言をなかった事にするな」
「ごめん、私は『宿題』と言う単語を受け付けないんだよ」
「はあ、もういいや……」
お姉ちゃんは呆れてため息をついた。
もう夏休みに入り一週間がたつ。LINEで翔太や星などとやり取りはしているが、まだ一歩も外に出ていない。ベランダには出たりしたが。ベランダって外に入らないのかな?
まあ、そういう事で絶賛引きこもり中です。
『~♪』
「ん?」
私のスマホに着信が入った。
「はい、もしもし」
『楓、今大丈夫か?』
「しょ、翔太!?」
『お、おう。そうだけど……』
誰からの着信か見ずに、スマホを取ったから私は驚いた。
翔太の声を聞くだけで、何か嬉しくなる。
「な、何? どうしたの……?」
若干の動揺を含みつつ、私は翔太に話しかけた。
『勉強会するぞ!』
「は?」
呆れた声が出たのが、自分でも分かった。
~~~~~~~~~~~~~~~
翔太の着信から二日たった今日。私達は翔太の家に集合していた。
翔太の家には私の他に、お姉ちゃん、神崎兄弟(翔太、優樹)、白石姉妹(星、きらり)、咲夜の計七人が集まっていた。
「勉強会ってどういう事?」
「合宿って聞いたけど」
「何すんの?」
「お姉様と合宿……。エヘヘ……」
「なんかこういうのワクワクするね!」
「これはハーレムと言うやつか……」
誰が何を言っているか分からない。
「だー! うるせえ、うるせえ!」
翔太が私達に怒鳴った。
「説明するから静かにしろ!」
「お姉様!」
「わっ! ちょっと抱きつかないで!」
「ねみぃ……」
「楓ちゃんモテモテ~」
「意外とお似合い……」
「ヒャッハー! ハーレムだぜー!」
「いい加減にしろー!」
「「「「「「うるさい(です)」」」」」」
「あ、すいません……」
「おりゃー!」
「ちょ、優樹先輩抱きつかないで……!」
「お姉様に近づかないでください!」
「「優樹死ね」」
「翔太、漫画読んでいいかー?」
「じゃねーよ! 話を聞け!」
翔太が立ち上がり、バタバタしている私達に向かって元気よく言った。
「勉強合宿行くぞ!」
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電車に乗り二駅こえて、少し歩いた所にある旅館に私達は来ていた。この合宿の内容については、皆電車の中で翔太から聞いた。夏休みの宿題を早く終わらすため、この合宿を開いたそうだ。三年生を呼んだのは、教えてもらうためらしい。
ちなみにこの旅館だが、翔太のいとこが経営しているそうでタダにしてもらえるらしい。
そして今、私は旅館の部屋の中に居る。部屋割りは男子の兄弟と女子五人に分かれた。女子五人では少し窮屈な感じもするが、タダなので贅沢は言えない。
「二泊三日か~」
会長がふと言った。
そう、この合宿は二泊三日だ。
だから着替えがそこそこいると翔太は言ってたのか……。
「でもあっという間に過ぎそうだな」
星が窓から外の景色を見ながら言った。ちなみにかなり絶景。
―-ガチャ
ドアの開く音がした。
ドアの方を見ると、翔太が水着でいた。
「お前ら水着持ってきたよな!?」
私達は顔を見合わせて、私が言った。
「まあ、翔太が持って来いって言ってたし……」
「よし、なら海行くぞ!」
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「「海だー!」」
神崎兄弟が海へ向かって走っていく。
この旅館は、海から近いところにある。だから水着を持って来いと翔太は言ったのだ。
(勉強は?)
と私は思ったが、まあずっと勉強するわけじゃないし、いいか。
「人多いわね……」
お姉ちゃんが辺りを見渡しながら言った。
夏休みに土日が重なって、家族連れ、カップルなどが多い。
「お姉様……。恥ずかしいです……」
咲夜は私の後ろに隠れて、周りの視線を気にする。
「ダメだって、堂々としなきゃ!」
お姉ちゃんが咲夜を私から引き離す。
「うう~……」
そう恥ずかしながらも、咲夜は私の後ろから離れる。
「すごい見られてるな……」
星が辺りを見渡しながら言った。
「ほんとだ……」
会長がパラソルを立てながら言った。そのパラソルの下に私達は日差しから避難する。
確かに視線をものすごい感じる。
まあ、これだけのルックスのメンバーが集まって、しかも水着なのだ・見られないはずがない。
私達は皆、ビキニなのだが、それぞれ見え方が違う。
会長はやはりその胸に目がいってしまう。恐らく、このメンバーの中で一番胸が大きい。さらにスタイルもよくて、そのキリッとした表情とギャップを感じる柔らかな口調もあって、男性からよく見られている。
お姉ちゃんは……。うん、やっぱり胸に目がいってしまう。会長とは違う意味で。多分この中で一番胸が小さいんじゃないだろうか。ただやはりスタイルはものすごいよい。黒髪に白のビキニが良く映えていて、大人びた感じがある。女の私でも見とれてしまいそうだ。貧乳だけど。
星はちょうどいいサイズの胸で、スラッとしたスタイルでいかにもスポーツが似合いそうな雰囲気だ。
やはり男性からかなり見られている。
咲夜は胸が小さくて、それなりに身長も低いので、まさに『妹』っぽい。なにか守ってあげたくなる。咲夜の事を見ている人もかなりいるが、何か危なそうな人ばかりだ。若干、幼さを感じるが、成長すれば『かわいい』から『美人』に変わるんじゃなかろうか。
私は自分の事はよく分からないが、さっき水着に着替えているときに言われた皆の言葉を思いだす。
お姉ちゃん「やっぱ胸大きい……」
会長「身長の割には大きいね」
星「それでいてスタイルもいいしな……」
咲夜「美しいです……」
多分会長とお姉ちゃんは美人系で、私と咲夜は可愛い系なのだろう。星はどっちにも属する感じだ。
「よし、楓行こ!」
「え?」
お姉ちゃんが私の手を引いて、海へ走り出す。会長も咲夜もついてくる。
そして私達は海で遊んだ。
優樹先輩が女子の体を触ろうとしてボコボコにされたり、翔太が星の体を触ろうとしてボコボコにされたりした。ただ翔太は私の体を触ろうとはしなかった。私との距離感をまだ測りかねているのだろうか。
私はむしろウェルカムなんだけど……。いや、でも迫られたら殴ってしまう自信はある。
学校に行きてえなぁ……。
次回は丸ごとお風呂回です。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。
評価などお願い致します。