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第二章


「おいおい。」俺が端末を開いてみるとまあそこには現実世界ではありえないようなルールが並んでいた。

お金は必要が無いということ。

宿舎は用意されていて食事もきちんと用意されているから心配ないという事。

端末にはメールが出来るように設定されているため、メッセージのやり取りが可能であるという事。

などなどと沢山のルールが書かれていた。

一応、快適には過ごせそうだ。

・・・生きていられるのならば。

「まあ、神なりに人間に対する配慮をしてくれているのだな。それにはまず、感謝だな。しっかし・・・。」

俺が周りを見渡すと、そこには沢山の人間が居た。


俺は・・・・この人達を殺さなければならない。

しかし、俺は正直まだ殺すという行為に抵抗がある。

勿論、この世界で死んでしまってもまだあと数日は現実世界で生きることは出来る。

だか、もし俺がここで殺してしまえば殺された相手はいずれ死んでしまうのだ。

そう思うと殺すことが出来そうに無かった。


でも。

それでも、俺は千歳のために生きなければならない。

俺の中で、どうしようもない二つの感情が生まれていた。


「ねね。そこの君!」俺がぼんやりと端末を見つめたまま考え事をしていると、一人の少女が声をかけてきた。

「君は何歳?」そう俺に声をかけてきたのは、いかにも俺より年下の少女だった。

まだ、少し幼い顔立ちをしていて、ポニーテールのためか明るい印象の少女で、身長が180ある俺に比べたら彼女は随分小さく見えた。

(いったい何センチなんだ?160くらい?)

「ちょっと。私の質問に答えたらどうなの?しかもなんだか失礼なことを考えてる気がするんだけど。」

(失礼なのはどっちだ。・・・・訂正。明るいじゃなくて生意気だ。)

「人にものを聞くには、まずは自分が自己紹介するのが筋じゃないのか?」

「いちいちうるさいわね。私は、リオン。16よ。」

「朝日だ。俺は17。」

「じゃあ、朝日。自己紹介は済んだわ。私と勝負しなさい。私があんたを殺してあげる。大丈夫。悪いようにはしないわ。」

「嫌だね。俺年下のあんたには負けねーよ。あんたが死ぬだけだぞ。」

「はあ?逃げるつもり?男のくせに。私は負けないわ。あんたなんかには。私はこう見えて陸上部よ。脚力も体力もあんたには負けないわ。あんた、細いし。」

「そうじゃない。俺、女は殺せないんだ。」

「そんなんじゃ、この世界で生き延びれないわよ?」

「かもな。でも俺は負けない。負けられない。」

「死ぬのが怖いの?」

「ああ。怖いさ。それに俺には守るって約束した大切な人が居る。だから死ねない。それに、女は殺せない。だから、悪いけど勝負は他を当たれ。」


彼女はあきれたように俺の顔をぽかーんと眺めている。

「あんた・・・それで優勝するとかいうの?」

「勿論だ。俺は、女は殺さない。男も殺したくないけど・・・。さすがに男は殺さなきゃ、俺が殺されてしまうからな。身を守る意味でも男は勝負を挑まれたら殺す。」

「あんた、変な人。まあ、いいわ。勝負はしなくて。あんたには、なにか理由がありそうだもの。じゃあ、改めて。こんな世界で友達って言うのは可笑しいのかも知れない。だけど私とあんたは殺しあわないんでしょう?だったら友達になりましょうよ。どうせ、知り合いも居ないんだし。ね?」

「まあ、いいか。友達なら殺しあわなくてすむんだろう?」

「うん。そういうこと。」

「まあ、俺たちが最後の二人になった場合を除いてだけどな。」

「確かにそうだよね。」

「なんか、変な感じだ。」

俺たちは互いの顔をみて笑いあった。


こんな感じで俺はこの世界での友人が出来た。

リオンは生意気だけど、一緒に居て楽しくないわけじゃない。

もし、いつか殺しあう日がきても俺たちならきっと、正々堂々と戦えるだろう。

俺はそう思った。


「ねー。朝日はリアルでどんなことしてるの?」

俺たちはこの世界を見回るために歩き始めていたのだが、突然リオンが聞いてきた。

「医者のになるために勉強してる。」

「ほんとっ!?頭いいんだね。」

「まあ、いろいろあってな。」

「そっか。」

なんだか微妙な空気になってしまった。

そのときだった。


ぐうー。

リオンのお腹が盛大になった。

リオンは顔を真っ赤にしてうつむいた。

「腹減ってるのか?」

「うん。お腹空いちゃった。こんな状況なのに・・。」

「まあ、人間生きてたら腹は減るもんだしな。なにか食うか。・・・っても何があるか分からないんだけど。」

「ちょっと待って!」

彼女はポケットから端末を取り出すと、データの地図を見始めた。

(そんなものまであるのか。知らなかった。どんだけ広いんだこの世界。)


「この近くに、屋台があるみたいだよ。何が売られてるんだろう?見に行こうよ!」

そうやってはしゃぐ彼女の姿はまだまだ幼く見えた。

・・・といっても一つしか年齢は変わらないのだが。

「早くいくよ!」


いつのまにかすっかりリオンになつかれた俺は一緒にご飯を食べるため、屋台に向かうことにした。



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