ー序章ー
この世界に住む生き物には必ず終焉がある。
神によって決められた運命である故に、抗うことも許されない。
しかし人間はそれでもいつか来る死を受け入れ、日々を生きていかなければならない。
行く先は“死”であるというのに。
残酷な運命だ。
俺は病室で眠っている千歳の頭をそっと撫でた。
千歳は幼馴染で、生まれてからずっと・・・・17年間一緒に居る。
ただ、彼女は病気で医者にはもう先が長くないと言われた。
でも彼女は決して生きることを諦めたりはしていない。
「きっと治るよ。」いつも決まってそう言って微笑むのだった。
俺はそんな強がりで優しくて・・・・病気で苦しんでいる彼女を守りたい・・。
俺はそう思うようになっていた。
俺は彼女を守るために医者になりたいと思った。
彼女を病魔から救いたいと、今医学部を目指している。
彼女のためならどんな苦痛でも苦行でも我慢できる。
「ふわぁ・・・。」俺が欠伸をしていると千歳はいつ目を覚ましたのだろうか、俺を見てクスクスと笑うのだった。
「昨日もまた遅くまで勉強してたのね。無理は駄目だよ?朝日が頑張ってること知ってるよ。でも身体壊したら嫌だから・・・。ね?」
「なあに。なにも心配なんて要らないよ。俺、こんなにも元気なんだから。そうだ千歳、明日八月九日・・・。明日、千歳誕生日だよな。何か欲しいものはない?して欲しいこととか・・・。」俺は彼女に問いかけた。
彼女が生きている間、俺は彼女に出来ること全部してやりたい。
「あれっ?もうそんな時期?全然気がつかなかったよ。そっか・・。八月なんだ。外に出れないから全然分からなかったよ。ねぇ。じゃあ、一つだけ。一つだけ聞いて欲しいな。」
「なんだ?」
「ずっと・・・・。私が生きて・・・・られる間は・・・そばに居て。」千歳は震える声で俺に言った。
「お願いされなくても、俺はそのつもりだけど?俺は千歳を守るよ。」
「ありがとう、朝日。私も頑張って生きるから。」彼女は泣きながら俺に言った。
「当たり前だ。」
「ふー。疲れた。」俺は勉強の合間に一息ついた。
「眠たいな。でも頑張らなきゃ。守るって決めたんだから。」俺は一人つぶやいた。
「ねぇ君。」どこからか声が聞こえた。
「おかしい。今部屋には俺にしか居ないはずなのに。」俺は椅子から立ち上がって周りを見渡した。
「ねぇ君!!!」
「おかしいな。空耳だ。さ、勉強しよ。」
俺が机の前に座ると小さな少女が俺の机に立っている。
「誰だ。このちび。どうやって入ってきた!?」俺が問いかけると・・・。
「ちびじゃないもん。私?まあ、言うとするなら神かなっ?」
「がきの遊びに付き合ってられるほど俺暇じゃないから。しかも、なんなのその変な服。出て行ってくれ。早く。」
「信じるも信じないも君の自由だけど。でも、私が普通の人間のサイズじゃないし、このあなたが言うこの変な服着てるのに、人間なはずないでしょう?」
「確かに。まあ、なんでも良いや。神サンとやらは何しに俺のところへきた?」
「よく聞いてくれましたっ!!!!」神は笑顔でそう言った。
「君は選ばれたんだ。プレイヤーにね。おめでとう。君頭良いみたいだし、優勝期待できるんじゃないかな?」神は笑う。
「何の話だ?」
「だからー。簡単にだーっと説明するよ?君は明日死ぬ。でも、君は誰かを強く守りたいと思ってるよね?だから、君は死ぬわけにはいかない。そこでね。君みたいにもうすぐ死ぬ人たちを集めて選ばれた人たちでほかの世界でゲームをしてもらうの。そう、殺し合いのね。それで、最後まで生き残ったら優勝。もし負けたら、数日以内に死んじゃう。あっ。もちろん現実世界で☆優勝出来たら、永遠の命を手に入れられて生きることが出来る。まぁ、細かいことはまた向こうの世界で説明するしー。いこっ!!」
「はぁ?俺が死ぬ?ふざけるな。意味分からない。」
「君、意外と物分り悪い。言っておくけど、私は言うことはすべて真実よ。」
「俺が死ぬはず無い。こんなにも元気なんだから。」
「仕方ないね。ほんとうに君って人は・・・。だったら私が君に見せてあげる。」
俺の意識はそこで途切れた。