兄と仲を深める?!
「ああ、これから、どうしたものかって思ってね」
それを言われ、シュナーゼも悩む。
「そうですね。あのセズンさんを出し抜くのは、なかなか難しいでしょうね」
「同意見で、嬉しいよ」
「だって、我々は完全に彼の気配すら読めなかった。彼が本気になれば、一発必中で我々は今頃死んでますよ」
「そう言うってことは、お前もセズンを認めているってことか? でも、お前なら」
「いいえ。僕は負けたんです、彼に。側近としても」
悔しそうに唇を噛む。
「別に、慰めるわけじゃないが、お前は負けてないと思うぞ」
「どうして、そう思うかを聞いてもよろしいですか?」
シュナーゼはどうして、そう思えないらしく、カミューに聞く。
「お前は私にそっくりな兄を見ているからだ」
「そんなことが、理由になりますか?」
「お前が警戒しなかったのは、私の身内だからだ」
「そんなもの理由になりません」
と、シュナーゼは叫ぶように、言った。
「そうだな、理由にはならないな。だが、前の王宮での暮らしを見てればそうも言えないんじゃないか?」
「ですが、私はあなたを護るのが、役目」
「そうだな、その役目は果たせませんでした。申し訳ありません」
そう言って、シュナーゼは頭を下げる。
「いや、それは、私も同じだ。あいつはいつもああやって気配を消しているんだろう。だから、あいつは何も感じさせなかったんだ。たぶん、お前が気付かないで無理ない」
「でも、俺は彼に負けたんです」
「勝った負けたとか、どうやって決めるんだ? お前がそう思っているだけだろう?」
「そうですが、でも、俺はどうしても彼に勝ちたいです」
ションボリするシュナーゼに、カミューラは笑いながら慰める。
「時間は沢山あるさ。勝てるまで何度でも挑戦したら良いさ」
と、言ったら、シュナーゼはそれに、頷く。
「そうですね。勝てるまで、僕は挑戦し続けます」
「オー、頑張ってくれ」
笑ってあくまでも、冗談のように、言う。
「カミュー様、慰める気はありませんね」
「当然だろう。俺が慰めると思うか?」
「私なら、いつでも受けますよ」
セズンは笑って言う。
カミューが当然のように胸を張って言うと、いつからいたのか、兄とセズンが笑っていた。
「ごめんごめん。一応ドア、ノックしたんだよ」
と、兄は謝る。
「どうしましたか? えっと?」
「ああ、私のことはルマンドとお呼び下さい。王子とかは止めてください」
「分かりました。では、ルマンド様、どう言ったご用権で訪ねてくださったのですか?」
「兄弟の中を、深めたくってね」
そう、ルマンドは言った。
「そうだな。俺も、深めたいよ」
カミューも頷く。
「良かった」
嬉しそうにルマンドは言った。
「じゃあ、どうします?」
カミューが聞くと、ルマンドが待っていましたとばかりに言う。
「過去を聞かせて」
「面白い話しなんかないぞ」
カミューが言うと、セズンは「それでも良いから、聞かせて、君の歩んできた道を僕にも教えて。何もなかったとは思わない。今まで辛酸と言うのを君は味わってきただろう。それを教えて欲しい」。
「なぁ」と、セズンに聞く。
「ええ、私達の想像もつかないものに違い有りません。話すのが、お辛くなければ、聞かせてもらえませんか?」
「ただ、話せば笑えるかもな。私が拾われて王宮に行った際、占い師に私は18までしか、生きられないと最悪な預言を受ける。後継ぎとして役に立たない俺は、王宮の奥深くに閉じ込められたって話だ。このシュナーゼは私の見張り役として、俺のところに来た。頭良いのにバカだよな」
「いいえ。頭良いからこそ考えられたんです」
と、セズンは、言う。
「何を?」
「自分が命を懸けても良いと思えるものに、私が王に会えたように」
「でも、こいつは俺にその時はまだ、会っていないんだぞ」
「それは、関係ないさ。あそこに俺がつかえる人がいると、何となく感じるんものなんだ」
セズンの言葉にシュナーゼは頷く。
「そうかもしれませんね。私も感じました。王宮のこの下に私がつかえる人がいるってね」
「そうなのか?」
カミューは驚く。
「ええ、そうですね。私もこの下に私の主がいると思いましたから」
「弟に言われたから、配置になったんじゃないのか?」
「違います。自分から希望を出して、それをそれならと頼まれただけだ。けして、頼まれてきたわけじゃありません」
「お前、そうなのか?」
「ええ、そうです。僕は誰かの指示で動いたりはしません」
「弟の命令じゃないのか?」
「命令じゃ有りませんね。僕は僕の意思できました」
それに、セズンは笑う。
「やっぱり、お前良いな」
「何がです」
ちょっと怒り気味にシュナーゼは言う。
「申し訳ありません。そんな意味で言った訳ではありませんが、じゃあどう言う意味でって聞かれても困りますが」
それを聞き、カミューは笑う。
「別に気にするな。こいつはマゾだ。苛められて、喜びをかんじるよ」
「誰がですか? カミュー様」
「お前しかいないだろ」
「カミュー様がそんな風に思っていたのは心外です。訂正を」
シュナーゼが、頬を膨らませて言う。
それに、カミューは笑う。
「お前いくつになった?」
「私はあなたの弟さんと同い年ですよ」
「つまり、お前は14なんだよな。そうなんだよな。お前それなのに、幼いぞ」
「失礼な。皆さん、私を大人だと言いますよ」
「そうだよ、カミュー彼は、僕らより年下だよ。それなのに、すごいよ。もう仕事をしてるなんて。それだけで、尊敬すべきだよ」
すごく尊敬の眼差しだ。
「そうだな」
カミューは少し引き気味に言う。
それに、何か納得いかず、ルマンドは怒る。
「もっと、誉めてあげなよ」
その言葉にカミューは笑う。
「こいつには、これぐらいで良いんだよ」