本当の父も、王!
「その予言をした奴って、俺のを予言した奴か?」
「そうです」
「そうなると、キナ臭いな」
「ええ、あいつもそう言ってました」
「その予言をした者のところへ行くか。最後の別れをしにな」
そう言って、カミューはほくそ笑む。
「カミュー様、悪どいです」
「どっちが悪どいかね。その占い師は王家によほどの恨みがあるんだろうな」
そう言ってカミューは悩む。
「さて、親父様は何をしたんだろうね。こんな恨みを買うなんて」
「さぁ、考えられるとしたら、先の戦争ですね」
「だよな。お前は先の戦争で何があったか調べてくれ」
「一体、親父様は何をしたんだろうね。こんな恨みを買うなんて」
「さぁ、考えられるとしたら、先の戦争ですね。でも、何故裏から操っていると分かるんですか?」
「今回の犯人は、表立っては動いてないさ。たぶん、影からそれを見て楽しんでいるんだよな。巧妙だよ。お前は先の戦争で何があったか調べてくれ」
「御意」
そう言って、シュナーゼは頭を下げる。
シュナーゼは捜査を開始した。
捜査は難航を極めた。
「捜査に行き詰まったか?」
「ええ」
シュナーゼは疲れきった様子で返事をする。
「調べるなら、元側近で、親父様の幼なじみは調べたのか?」
「えっ? 王の友達ですか?」
「ああ」
「でも、友達が友達の子にこんな占い結果を教えますか? その友にこんなマネしますか?」
「仲が良いなら尚更だろう。人はちょっとした掛け違いで、本来ならいられたはずの一生の友を失い、ひいては敵になる場合もある。」
そして、何かに気付いたように言う。
「後、俺の遺伝子と親父様の遺伝子を調べてくれ。これで、俺が恐れている通りなら、親子関係はないと出るはずだ」
「そんな、カミュー様は王のお子です」
「そう思えたら、楽なんだけどな。でも、そうすると、何でここに入れられたか分かる」
「何故です」
「分からないかい」
カミューラは笑う。
笑ったあと、淋しそうな顔をする。
「すいません」
「母のためだよ。母は俺を見るたび、罪悪感に苛まれるからな。私を見たくないんだ」
「でも、なぜ、あなたの弟にも、あんな占い結果が出たんでしょう?」
「さあな、分からない、それが」
カミューも首を捻る。
「ただの八つ当たりか?」
「あの怖いことを思ったんですが」
「何だ?」
「こう言ったら怒られるかもしれませんが」
「構わない言え」
「では。こう言ったら怒られるかもしれませんが、王妃とその人の仲が終わってなかったんじゃあ?」
「つまり、お前は弟のDNAも調べろと?」
「ええ、思いたくは有りましせんが、王妃は彼と切れていたんでしょうか? そもそも王との、なれ初めも聞いていませんし」
「俺も知らないな。って、会ってないが」
「そうなると、そこが鍵ですね」
「でも、知りたくないがな」
「怖いですよね」
「いや、母を悪く思いたくないとか、じゃないんだ。俺にとってあの人は遠い人だよ。でも、父が誰か分かっても母は変わらない。それが、悔しいんだ」
カミューの言葉にシュナーゼは疑問を口にする。
「それだとなぜあの占いが出てくるのでしょうか?」
「そうだな。つまり、母親が違うと、他にいると?」
カミューは首を捻る。
「そんなわけない。俺の母はあの人だけだ」
そう言うと、シュナーゼは否定する。
「本当はカミュー様も分かっているのでしょう」
「黙れ。それ以上言うな」
カミューの瞳からは涙が流れ落ちる。
「カミュー様」
「疑った事はある。母は1度も訪ねてはこなかったからな。父がここに私を入れたのは、母から私を守るため。つまり、この牢獄は私を守るために作られたんだな。ずいぶん綺麗な部屋だと思ったよ」
そう言うとカミューは笑う。
シュナーゼは驚く。
「さすが、カミュー様。そこまでお気づきになるなんて、驚きです」
「そっかぁ。ここにいると、他に考える事がなくてな」
「そうですね」
カミューラの言葉にシュナーゼは納得する。
「良かった。納得してもらったところで、悪いが私を連れ出す算段を」
「そうですね。后にバレない様に、ですね」
「ああ、そうだ。バレたら消されるからな」
「そこまで、やりますか?」
「あの人ならやるだろう?」
「そうかもしれませんね」
「自分の妃としての地位を守るためなら、なんでもやるよ」
「でも、そんなに強い執着心があるならやらないと思いますよ」
「お前が考えている以上にその執着心があったら」
「強い執着心ですか?」
「ああ、そうだ。王の愛情が自分には向いてないことに気づき、恨んだことでしょうね」
「恨んだか。そうかもな」
そう言って王が入って来る。
シュナーゼは頭を下げる。
カミューは来ることがわかっていたのか全く驚かない。
それに、王は笑う。
「お前は私が来ることに気付いていたな」
「ええ」
「なぜ?」
「私の素性をお話し下さい」
「お前は下町で私が拾った」
「つまり、俺の親は王も知らないわけだ」
「そうだ。お前の出生は誰も知らない。俺を含めてな」
「ふーん、闇の中ってことね」
「そうだ。そうなるな」
王がそう言って、笑った。
「俺の素性を知っている者のは、いないわけだ」
「いや、言ってはいないが、噂とは、漏れるものだ」
「漏れることより立たせる奴がいるよ。それの方が怖いですよ」
笑って、言えば王は笑う。
「そうだな」
「でしょう?」
「それより、怖いものはありません。それより、弟の父は貴方ですか?」
「そうだ」
「では、母は?」
「舞踏会出会った皇族の娘だ」
「すなわち、文句のない地位ってことですね」
「そのまどろっこしい、言い方止めろ。何が言いたい」
「私のような素性の者など、絶対に反発が出ます。丁度良いことに私の素性は知られていません。悪いな、シュナーゼ。予定変更して、私は国外に逃亡する。王になってやれなくて、悪かったな」
カミューが言うと、シュナーゼは笑って言った。
「私はあなたを国外で王にします」
それを聞きカミューは笑う。
「だいぶ、路線変更したな。でも、サンキュー」
「弟に伝えて下さい。お前はこの国の王になれ。私はは国外で王になると。王よ。今まで育ててくださりありがとうございます」
そう言って頭をカミューが下げると、王は辛そうに言う。
「こんな牢獄みたいなところに監禁して、すまない」
そう言って頭を下げる。
「考える時間が出来ましたし、こんな住みやすいところにしてくださった。感謝してもしたりません。頭をお挙げください」
「そう言ってくれるか、ありがとう」
「いいえ。それよりなにか言いたいことがあって要らしたのでしょう」
「ああ、そうだ。これを渡したくてな」
そう言って、ボケットから何やら出す。
それは、どうやらオルゴールのようだ。
「何ですか? これは?」
「お前が捨てられた時に持っていたものだ。それに、真珠がついているだろう?」
「それは、ここから南の国の特産物でしかも高い。お前の素性は分からんが、行ってみてくるといい」
「へーえ。捨てる人間に付けるものじゃ有りませんね」
「ああ、そうだ。たぶん捨てざる終えない状況に追い込まれたんだと、思うぞ。なぜ、そんな状況に追い込まれたのかは、不明だがな」
「ええ、行ってみます。今まで有り難うございました」
そう言って、カミューラは軟禁されてた部屋を出る。
王はそれに頭を下げる。
シュナーゼはそれに、頭を下げて、言う。
「行ってきます」
「探してこい。己の起源を」
「見付けます。絶対に」
そう言って、カミューは国を出た。
もちろん、シュナーゼを連れて。
カミューは早速、南の国のヤーシヤに向かう。
ヤーシャは温暖化の過ごしやすい国だと、カミューは聞いている。
カミューが鼻唄混じりに行く。
シュナーゼはもっと緊張感を持てと言った。
「そんなに、最初から緊張感を持っていたら、肝心なときに動けないじゃないか」と取り合わなかった。
そんなときに、会ったカミューと同じ顔をした青年と会った。
なぜ?
カミューは驚くが、青年は感動したように、カミューに抱きつく。
「な、な、なんだ? 俺には、そんな趣味ないぞ」
「安心しろ。俺にもないから」
と、笑って言った。
「じゃあ、なんだ?」
カミューが聞くと唐突に話始めた。
「俺には、双子の兄弟がいた。だけど、私達を取り上げてくれた人の国では、双子は意味嫌われ、あとから生まれた子は、捨てるのが習わしらしくてね。その人は、その習わしに従っただけだそうだ。その子に生まれた地域のものを持たせて、仮に戻って来たら、その子はその家を繁栄させるって言う馬鹿げた迷信に従ってね」
「バカくせぇな」
「ええ、だから父上も、その人をこの国から未来永劫追放にしました」
「そんな力あるのか?」
「一応、この国の王だ」
それを聞き、カミューは笑う。
「どうしましたか?」
「いや、俺は王族って言うのに、縁があるなって、思ってな」
「どう言うことですか?」
「俺を拾ってくれたのは、ここから、北に位置するランパチって言う国の王だ」
「ランパチの王にお礼をしなくては」
「礼なんて良いさ。ただ、女といちゃつきに言ったところでたまたま、俺を見付けただけだから、王としては誉められたものじゃない」
「でも、その王に感謝です」
そう言って、その王子は笑い、そして、王宮に彼は案内する。
カミュー達は彼に連いて行く。
彼は直接、王のいるところへ。
それに、シュナーゼは驚く。
彼にしてみれば、警備体制をもっと、確りしろと言いたいのだろう。
それが、カミューには、わかり笑う。
興奮ぎみに、彼は言った。
「王よ。今日は思わぬ人に会いました。父上も、たぶん会いたかったはずです」
といわれ、王はカミューに視線をやり、すごく驚く。
「お前は?」
「俺は北の国に捨てられ、その国の王に拾われました。今回、町で彼に会い彼に弟と、言われました」
「そんだけ似てればそなたがこれの弟と言うのは、間違いないだろう。そなたは、私の子どもだ。これから、どちらかに行かれるのか? それなら、止めることは出来ないが、そなたが良ければ、ここに留まってくれないかね?」
「前の国の王に言われました。親を探して、来いと」
「兄と会った時点で、俺の目的は果たせました」
「それは、良かった」
そう言って、王は笑い、
「それなら、良かった。ぜひ、我が国に滞在してくれ」
「滞在させてもらえるなら、喜んで」
「そなたは、我が息子。許可などいらない」
それに、シュナーゼはそれにもやはり不満なようだ。
カミューは笑い出す。
「カミュー様」
それに、王と王子は驚く。
「何でもありませんよ。それでは、我々は失礼しますよ。疲れているもので」
そう言うと、王は慌てたように言う。
「気付かず申し訳ない。セズン、彼らに部屋を」
そう言われ動いたのは、後ろに控えてた男だった。
彼はまるで、その存在を感じさせなかった。
カミューもシュナーゼも驚いた。
それに、彼は笑う。
シュナーゼは、しまったと思った。
自分の思っていたことは筒抜けに違いない。
だけど、セズンはそんなことおくびにも出さずに言った。
「畏まりました」
そして、セズンの案内で出ていく。
カミューはもう笑いをこらえられないとばかりに笑い出す。
それに、シュナーゼは怒る。
「カミュー様。笑いすぎです」
「悪い悪い」
それをセズンは何か言いたそうに見ていた。
それに、気付いたシュナーゼが、聞く。
「何か言いたそうですね。何でしょう?」
「我が国は、あなたにしてみれば不満なんでしょう。ですが、あなた方のように支従関係のないものの方が我々には信じられません。我々は主の影となり、支えていくものだと思っていましたが、国が変われば従者の役割も変わるものなのですかね?」
それに、シュナーゼは何も言えなくなる。
どうやら、怒らせてしまったらしい。
それに、カミューは笑い、許しをこう。
「申し訳ない。俺と彼は小さい頃から、友達のように、仲間のように付き合ってきたから支従関係はないんだ。けして、あなた方の国がどうってことはないんだ。バカにしたわけじゃない。でも、気分を害させてしまって、すまない」
「いいえ。私もお二人の関係を知らないのに、勝手なことを申しまして失礼しました」
と、頭を下げるセズン。
それに、カミューは笑いながら、シュナーゼの頭を押さえる。
「ほら、お前も頭を下げろ」
「止めてください。押されなくっても、頭ぐらい下げられます」
怒ったようにシュナーゼは言う。
「そっか~、悪かったな」
そう言って、カミューは笑う。