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帰省

作者: 江角 稚

帰省すべきかしないべきか、毎年この時期になると悩む。

都会での暮らしは華やかで、自由すぎて。

いつしか故郷を振り返る時間が減っていった。




しかし唐突に、帰りたくなった。

今の暮らしに不満がある訳でも、壁にぶち当たった訳でもないのに。


郷愁の念に駆られた訳じゃない。

ただ何となく、「地元の友人に会いたい」と思っただけ。


昔の友人が今、何をしているか気になった。

もしかしたら、新しい自分に繋いでくれるかもしれない。


温故知新ってやつさ。

……何か違うかな?




そんな訳で、帰省の準備。

荷造りしている途中で手が止まった。


ふと、思い出したから。

君の、手の温もりを。




そうか、実家に帰るということは……

君にも出くわさなくちゃいけないんだね。


大好きな人。

大好きだった、人。




帰省を試みる時は、いつもそう。

君を想い、帰るのを諦める。




今回も、また揺らいできてる。

今年こそは「帰ろう」って思ったのに。


君のせいじゃないって思いたいのに、心の何処かで君のことばかり責めている。

「私が帰れないのは君のせいだ」って、思い込んでる。


会いたいけど、会いたくないよ。

……ただの我が儘なんだけど。


もう、いっそ離れ離れでも良いのかな。

依存する位なら、もう干渉し合わない方が良いんだろ。




大っ嫌いで大好きな君へ。

会いたいけれど、もう二度と顔も見たくない。




部屋の片隅に放置された旅行鞄

私と、愛しかった君との写真

思い出の海で拾った貝殻


昔の思い出だけを残して、私は今も暑く気だるい部屋の中で寝転がっています。

聞こえるのは、扇風機の羽の音だけ。


そしていつでも、「帰省しない」を選んでしまう。

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― 新着の感想 ―
[一言]  拝読しました。  思い出の場所など見たくもない。でも、あの頃が恋しい。そんな心の矛盾がのしかかる主人公に共感し、恋というもののすばらしさ、恐ろしさを両方感じました。  恋に対してはチャ…
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